2.Have seen your every curve.
「やめろ!どうしてお前はそんなにイカれてやがるんだ!」ベットが叫ぶ
その時、俺は敵さんの千切れたばかりの血の気の引いた白い指を拾い上げ、口に運んでいた所だった
夕暮れの峡谷では、既に俺たちを追ってきた警官隊と車を停めた俺らの銃撃戦が始まっていた
唯一の遮蔽物であり、数少ない所持品でもある車『トルエン号』の影に隠れながら、なんとなく俺は銃撃戦のさなかに敵さんの体から生まれた、新鮮な肉片を口に入れようとしていた
好奇心からの行動だった
この車両の名前については、見た目の様子を見れば少しは理解出来るかも知れない
一見するとただのバンなのだが、車内には所狭しと弾丸、そしてそれを分解して取り出した弾薬が積載オーバーで積まれていた
そのせいで速度は出ないが、引火を恐れて、こういった近距離での撃ち合いでこの車両に恐れず銃を撃ってくる奴は少ない
俺たち2人のクレイジーさは、既に荒野に響き渡っていた
「戦いには景気付けが必要だろ。バイキングの戦士は生肉で気合いを入れたらしいぜ」
以前飢えて死ぬかと思った時くらいしか、俺は人間なんて食った事が無かった
あの時はほとんど意識を喪失していたに等しい、記憶なんて残ってなかった
「このstank bitc……イカれ野郎!」
銃撃戦の手を止めて、片手でベットは俺の持っていた指をはたき落とした
「そういうのはやめろ。もう、お前はそういう事はしなくて良いんだ」
再び敵に向き直ると、ベットはありったけ銃弾を撃ちまくる作業に戻る
それは精肉の作業でもあった
程なくして、警官隊はすべて挽肉になった
俺も伊達に銃弾を分解してた訳じゃない、奴らには爆弾をいくつかご馳走してやった
「爆弾は口に合わなかったかも知れないが、地獄の飯が奴らの口に合うと良いな」と、ひとり俺は考えていた
「ベット!腹減ったよ、またガソリンスタンドか民家でも燃やして暮らしの糧を得ようぜ」
ベットは何も言わずトルエン号に乗り込むと、キーを回しエンジンを付けた
既に日は暮れ始めていた