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エッセイ

心が寛容になるドクダミ茶

作者: 金銅才狸


 すこし前の話。

 風邪をひいたのか鼻詰まりが酷い。

 幸いにも、それ以外に特に異常は無いので、普通に動ける。

 が、嗅覚が麻痺して、鼻が息苦しい。

 

 薬も効かず、ふと庭を見ると大量のドクダミの花が目に入る。


「そういえばドクダミ茶は、この手の諸症状に効くって何処かで聞いたなぁ」


 試してみるか?

 そう思いたち、適当にドクダミの葉を摘む。

 よく洗い、念の為レンジでチンして殺菌。

 ドクダミ茶1杯分の葉だけ残して、残りは乾燥させた。

 

 試しに煮て、自家製のドクダミ茶に挑戦。

 ドクダミ茶自体、飲んだ事はあるかも知れないが記憶には残ってない。


 味は………

 うん。

 少し不味いお茶。

 そんな感想だった。

 ただし飲み終わって少しすると、体に何かしら、効き目があるのを実感する。

 効果の強い野草、よもぎとかと同じく、体に妙な感覚がうっすらある。

 少しすると鼻の調子も良くなってきた。

 麻痺していた嗅覚も戻った。

 ドクダミ茶の効果とは限らないが、たぶん効果があったのだろう。


 なので………

 鼻詰まりが解消されたのもあって

 気を良くして、自作ドクダミ茶の大量生産を開始した。

 

 大量のドクダミを同じ手順で収穫加工。

 数日後には保存可能なドクダミ茶が大量に出来上がるだろう。

 

 作業を終えて、満足したので、乾燥前のドクダミの葉を使って、再びドクダミ茶を入れる。

 そして一口飲む。


「なんじゃこりゃ〜! あ、あれ?」


 そこには沼のような味が待っていた。

 雑草の様に青臭く、泥団子の様に泥臭い。

 そこらの雑草を泥で煮れば、きっと同じ味になるだろう。


 ………一度目に飲んだ時は、嗅覚が麻痺していたから気が付かなかった。

 自家製ドクダミ茶、匂いがヤバイ。

 口に入れると、ドクダミ茶の匂いのせいで、口の中が泥沼のような味になる。

 青臭く土臭い。

 まさに大地の匂い。

 コレがワイン通とかが言う所のテロワールか?


 嗅覚が麻痺してた時、味は少し不味いお茶だったが………

 たかが匂いで、ここ迄味に変化を感じるなんて………


 そして、そこで戦慄が走る。

 ………

 ………………

 既に大量に作ってしまったドクダミ茶を、俺は一体どうすれば良いのだろうか?

 捨てる? 

 いや、あかんわ

 不味くても食べ物粗末にするのはあかん。


 誰かにあげる?

 作ってしまった自分で飲んでも不味いんだ。

 他人に勧めるのは、嫌がらせ以外の何物でもない。


 諦めて自分で消化するしかないな。


 試行錯誤。

 ………

 ………………

 味の濃いラーメンに、匂いの強いヨモギやネギとかと混ぜて野菜として使う。

 他のお茶と混ぜて匂いを薄める。

 ある程度使えない事は無いと気がついた。

 不味いけれども。

 体には良い。

 それは実感する。

 不味いけれども

 が………

 ………

 ………………

 最近ちと不安になる。

 ちょっと頭の回転の鈍い、風邪気味の時に大量生産した物なので………

 今でも乾燥させたドクダミとして使ってる植物ドクダミ。

 もしかしたら、ただの雑草では無かったのか?

 その疑問は晴れない。


 混じりっけ無しの、不味い自作自称ドクダミ茶を、健康の為と無理に飲む度にそう思う。


 乾燥させちまえば、緑と茶色い葉っぱだし。

 そもそも庭に生えてるのが、ドクダミに、よく似ている他の植物の可能性も普通にある。

 種を植えた訳でもないし。

 勝手に生えてる植物を、俺が勘違いしてるだけかもわからんと。

 そんな疑念が生まれるのは、不味いからだ。


 美味しければ、雑草でも気にしなかったと思う。

 美味しければ、偽物だと疑われず


 不味ければ、コイツ、もしかしなくても偽物なんじゃね?

 て疑念が湧く。


 世の中そんなもんだ。

 お茶だけで無く、全ての物事に応用できそうな、考え方ではあるな〜。


 まぁ鼻詰まりには効くし、俺がドクダミと思っている植物Xには、このまま騙されてやろうと思う。


 お前はドクダミだ!

 ドクダミなんだ!

 間違いない。


 少なくとも強い毒性は無いみたいだし。

 世の中には寛容さが必要だ。

 寛容な心で騙されてやろうと思っている。

 

 誰が誰を騙して、誰が誰に寛容なのかを考えると………

 自分の間抜けさが嫌になるが

 そんな自分のマヌケさにも、あえて寛容な心でいたいと思う。


 クソ不味い自称ドクダミ茶を、寛容な心で許せるんだ。

 自分のマヌケさも許せるさ。


 あえて本物か偽物かの追求しない事は、ドクダミっぽい何かを許す事でもあり、マヌケな自分を追求しない事、許す事でもある。


 寛容な心で俺はドクダミっぽい何かと、それを収穫加工したマヌケな自分を許す事にする。

 寛容な心は戦争を回避するのだ。


 その為に毎日、自作の自称ドクダミ茶を飲むのである。

 寛容な心で

 お前はドクダミ茶や!

 と言い聞かせ。

 たぶん本物のドクダミ茶なんだろうけども。

 もう、どうでも良い。

 あえて追求しない。

 何故なら俺は怪しげな自称ドクダミ茶を飲むことで、寛容な心を鍛えてるからだ。


 完全に目的と手段は間違えてしまったが、きっと、悪い間違いではないだろう。


 自作のドクダミ茶のストックが無くなるとき、きっと今よりも寛容な自分に、なってる事だろう。


 既にいま、不味い料理や飲み物に、かな〜り寛容になってるからね。


 脳と味覚を不味い植物に、破壊されただけかも知れないが

 仮にそうでも

 寛容な心で許そうと思う。






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