まどろむ
三題噺もどき―よんひゃくごじゅういち。
温かな日差しがリビングを満たしている。
ようやく晴れの日が続く様になった今日今頃。
直接光を浴びない限り、温かさだけをくれるそれは、春らしい陽気そのもののようだ。
「……」
あぁ、でも。暑いまで行ってしまうと……。
風がまだ冷たいから、酷暑のようとまではいかないが、ジワリと汗をかいてしまう。
部屋の中にいてこれなのだから、外はもっと暑いのかもしれない。
「……ふぁ」
その温かさのせいなのかは分からないが。
思わずあくびが漏れた。
いや、集中が切れたせいかもしれない。気づけばぼうっとしてしまっていたし。手も止まっている。
「……」
リビングの窓際。
お気に入りのソファのいつもの場所。
そこで、今は読書ではなく、日記を書いていた。
実のところ、日記を書くこと自体はかなり前からやっていたのだけど。ここ数週間というか数かヶ月というか……書けない日が続き、溜まっていたのだ。
「……」
その分をまとめて、書こうなんてことはしないが。
ここ数日の記憶は、なんとなく残しておきたいと思い至った。
その日のうちに書き残せるのが一番いいのだが、あいにくそこまで気が回るほど体力も気力も残っていなかった。
「……」
今朝になって、少し回復して、そういえばと。
……疲れが抜けるのに時間がかかるのは歳を重ねた証拠か。
そんなに言えるほどの年齢でもないはずなんだけど。もともと体力はないからな。
「……」
それでまぁ。
日記を書いてはいたのだけど。
思いだしながら、あれこれと書いていたら、限界が来たらしい。
記憶力はいい方だが、集中力はさしてないみたいだ。
……というよりはまぁ、久方ぶりに。のんびりと、ゆったりと。こうして過ごしている時間が。思いのほか心地よくて、気が抜けてきたのだろう。
「……ふぁぁ…」
もういちど、あくびが漏れる。
これ以上は、どうやってもかけそうにないなぁ。
思いだそうとした矢先に眠気が襲う。
このまま、カクリ、と落ちてしまいかねない。それでもいいんだけど。
「……」
睡魔のせいで、ぼんやりとした視界の隅に、時計を入れる。
……ふむ。
時間もいい具合だし、いっそこのまま軽く昼寝でもしてしまおうか。
今日は……最悪夜にでも買い物に行けたらいいし。特に予定もない。
「……」
既に横になりかけていたボールペンの先を引っ込め、ページの半分ほどがうまったノートを閉じる。二つを、机の上に置き。
ソファに引っ掛けていた肩掛けを引っ張る。ひっかかって、取りにくかったが、気にせずに。
暑いかと思ったが……まぁ、薄手のものなのでたいしたものでもないだろう。
寒さで目覚めてしまうよりはマシだ。
「……」
床に落としていた足を持ち上げ、ソファの上に乗せる、
膝を抱く様に体を縮め、肩掛けを乗せる。
それなりに余裕のある大きさのソファの上に、小さくなって眠る。
「……」
寝づらくないのかと、過去に妹に言われたことがあるが。
……まぁ、そんな訳もなく。
見ての通り、若干の苦しさというか窮屈さはあるのだけど。
「……」
この姿勢の方が、私は安心するのだ。
窮屈さよりは、そちらの安寧の方が、私を心地よく支配してくれるから。
何かに包まれているような感覚の方が、心地よいから。
「……」
部屋の暖かさも相まって。
与えられた安寧は、私をゆっくりと微睡に落としていく。
睡魔に体を預けて、意識を預けて。
流されるまま、私は眠りにつく。
「……」
なんだか……。
最近の夜の眠りとは比べ物にならないくらいに……。
安心して眠りについている気がする……。
まだ少し冷える夜は、眠るのに時間がかかって……。
ぐるぐると考え込んでしまうから……。
「……」
ただ温かいだけのこの昼間に。
ゆっくりと。ゆったりと。
こういうのも。
たまには。
いいのかも。
しれない。
お題:昼寝・肩掛け・ボールペン