後ろを振り向いてはいけない
「ん!?」俺は思わず目を止めた。日曜日の夜、俺は自宅近くのマンションの屋上から空を眺めていた。「ああっ、星が綺麗だな」ゆったり流れる夜の時間が好きだった。俺は手すりに手を置き、景色を眺めた。
そこからは高低差のある建物が並んでいる。離れた場所にある高層マンションの上に赤く光る2つのライト。そびえ立つっている向こう側のマンションの部屋の灯りがいくつも見えた。その中で窓際に立っている2つの人影を見た。「夫婦だろう」と思っていると、その人影は互いに争っているような動きをしていた。「ん!?」俺は思わず目を止め集中してそのベランダを見ていた。
いつしか人影は手にナイフのような物を持っているように見えた。それはもう一つの影と重なり、そして人影はベランダに倒れ動かくなった。時間にしてほんの数秒のように思えた。俺の体はワナワナと震えていた。そして「大変だ」と思い、「警察に通報しなくては!」と考えた。もう一度よく見て数えるとそこはマンションの6階辺りだった。
持っていたスマホでただちに警察に連絡し一部始終伝えた。「とりえずは、これで大丈夫だ」と俺は思った。しばらくするとあのマンションにパトカーが到着するだろう。「現場に行く必要はない。ここで見てればいいんだ。」
俺は屋上から現場を眺めていると、後ろに気配を感じて振り返った。「うわあああああああ」俺は思わず悲鳴を上げていた。そこにはさっき見た人影が手にナイフを持って立っていた。俺は恐怖で凍りついた。その人物は全身が真っ黒で顔は見えず、ただ手に持つナイフだけが白く浮かび上がっていた。それは俺が見る人生最後の光景だった。