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18

 メルの足元に、突然、魔術陣が浮き出た。


「……っ!」


 覚えのある魔力に、とっさに反応できなかったメルは、そのまま魔術陣の中に囚われる。ハッとして無効化の魔術陣を組もうとした時にはもう、恐ろしい程の存在感をもって、その人は目の前に立っていた。


「ハリー、様……」


 メルの組み上げた魔術陣を、一瞥で蹴散らしたハリーは、同時にメルの周りに先ほどの何倍もの強力な無効化の魔術陣を敷き詰めた。これでは、どんな魔術であっても書くことはできない。逃げ場を失って、メルはウロウロと視線を彷徨わせた。とても目の前のハリーを直視することは出来なかった。


 数か月振りに会うハリーは、瘦せたようだった。肺を患ったと装うために魔術で病み衰えた様に見せかけた時とは違い、本当に線が細くなっていた。それぐらいは分かる。ずっと、側にいて見てきたのだから。

 

 一歩一歩、近づいてくるハリーから逃れる様に後ずさっていたメルは、やがて壁際に追い詰められた。息が掛かるほど近くにいるハリーから、メルは俯いて、顔を隠す事しかできなかった。


「……メル。無効化の魔術が上達したな」


 その、いつもと変わらないハリーの声に、メルは驚いて思わず顔をあげた。

 侯爵家の子息であるハリーの婚約者でありながら、手紙一つ残すのみで失踪したのだ。どんな理由があっても、許される事ではない。罵られても仕方がないと思っていた。


 それとも、もしかしたら、ハリーにとっては婚約者の不在など、大した事ではなかったのかもしれない。幼い頃に決められた婚約者だから、こんな自分でもハリーは大事にはしてくれるが、所詮は政略結婚だ。メルにとってはハリーは何よりも大事な人だが、ハリーにとってはただの手のかかる面倒な婚約者(厄介者)なのだ。さぞかしウンザリして、呆れられた事だろう。

 

 そんな事を一瞬で考えていたメルは、ハリーの顔を見た瞬間、それが全てが過ちだという事に気づいた。

 久しぶりに見るハリーの瞳に浮かんでいたのは、怒りでも呆れでもなかった。傷つき苦しんで、怯えが滲んでいた。

 そんなハリーから目を離す事ができなかったメルの頬に、ハリーの手がそっと触れる。


「メル……。どうして逃げ出したんだ?」


 掠れるような小さな声が、メルの耳に届いた。


「俺の事が嫌いか? 逃げ出したくなるぐらい、結婚が嫌だったのか?」


 頷かなくては、と思った。そうすればメルが望んだとおり、ハリーを解放できるのだから。

 メルと婚約を解消したら、ハリーは侯爵家を継げるかもしれない。ハリーは優しいから、長年婚約者であったというだけで何もかも足りないメルに義理立てて、後継を諦めるなんてしないでいい。そうしたら、メルとは別の結婚相手を見つけて、その人と幸せな家庭を築けるのだから。


 でも。ハリーの顔を見ていたたら、頷くことができなかった。今ここでメルが嘘をついて頷いたら、ハリーがバラバラに崩れてしまいそうな、そんな危うさがあったからだ。


 それにメルは嫌いだなんて、嘘でもハリーに言いたくなかった。出会ってから一度だって、嫌いだなんて思った事がなかった。人見知りであがり症で、社交一つまともにこなせない出来損ないのメルに、ずっと側に居て、優しくしてくれた人なのだ。メルはハリーが好きだった。何一つハリーの優しさに報いることが出来ないけれど、ハリーを好きな気持ちは誰にも負けない。


「……好きです、ハリー様。誰よりも好き」


 そう口にしたら、もう止める事なんて出来なかった。


「好きです。ずっと、ずっと。出会った時から、ずっと好き。私じゃダメなのに。好きなんです。ごめんなさい。ごめんなさい……」


 涙と言葉がぽろぽろ零れて、止められなくて。メルは泣きながらずっと好きと繰り返していた。


 ハリーの茶色い瞳が驚いた様に丸くなって、それから珍しい事に、顔が真っ赤になった。いつだって泰然としているハリーのこんな様子は、長い付き合いだが初めてで、メルは泣いていたのも忘れて、ぽけっとハリーを見つめてしまった。


 ハリーは赤い顔を背け、溜息をついた。


「じゃあ、何故逃げ出したんだ。俺の事が、す、好きなのに。メルの思考は全く分らん」


 眉をしかめてハリーはぶつぶつ呟いていたが、ハッとしたようにメルを覗き込む。


「もしかして。メルは侯爵夫人になりたかったのか? メルは社交が苦手だから、ラース侯爵家はエリスに押し付けたのだが。もし侯爵夫人になりたいのなら、返してもらうか?」


 その言葉に、メルはプルプルと首を振った。


「……私には社交は無理です。こんなんじゃ、侯爵夫人なんてとても務まりません。だから、ハリー様を解放するために、お別れしようと思ったんです。ハリー様からラース侯爵としての未来を奪う事なんて出来ません」


 メルだって、なんども夜会や茶会で淑女らしく振舞おうと努力したのだ。だが、知らない人たちに取り囲まれると、呼吸が苦しくなり、視野が狭まり、頭が割れるように痛む。取り囲まれて馬鹿にされ、罵倒された過去が蘇ってくるのだ。どうしても無理だと分かって、だからせめて将来は誰にも迷惑を掛けない様に魔法薬師としての腕を磨き、自分の食い扶持ぐらいは稼げるようなったのだ。


「……分からん。なぜそれで別れようという発想になる。俺が侯爵家を継がなくてもいいように画策したことには気づいていたのだろう? 目論見どおり侯爵家の後継ぎからは外れたのだ。結婚するのに、何の問題もないじゃないか」


 メルの顔を覗き込んだままじっと考え込むハリーに、メルはもうずっとドキドキしっぱなしだった。ハリーはいつだって紳士的で、エスコートやダンス以外で触れ合った事はない。それが今は、壁際に追い詰められ、頬に触れられ、息が触れ合うぐらいの近い距離なのだ。恥ずかしくて心臓は破裂しそうだし、倒れない様にガクガクする足を必死に保たせるので精いっぱいだった。


「ああこれが、レイア嬢の言っていた、認識の違いというやつか。解決策は、すべてをさらけ出す事だったか?」


 ハリーの口から溢れた、知らない女性の名前にメルは胸が引き裂かれるような痛みが走った。先程から止まらない涙が、またボロボロと流れた。

 ハリーはメルの更なる号泣にギョッとして、慌てて言葉を続ける。


「メル。こんなことを言って、何が変わるのか分からんが。俺は侯爵家よりも何よりも、メルが大事だ。メルが残した手紙に、政略により結ばれた婚約とあったが、メルと俺の婚約は、俺が望んで結ばれたものだ」


 ハリーが望んで結ばれた? メルはポカンとハリーを見つめた。だって、メルの父は、『政略とはいえ、大人しく変人のお前には、勿体なさ過ぎる良い縁談だ』と、常々言っていたのだ。


「メルは会うたびに、魔法薬学の話をしていただろう?」


社交力が著しく低いメルが話せるのは、天気の話と魔法薬学の話だけだ。段々とハリーに慣れてきたら、それ以外の事もぼちぼちと話せるようになったけれど、やはり話題で多いのは魔法薬学のことだ。


「メルは魔法薬学の話をすると、目をキラキラさせて人が変わったみたいに饒舌で、それがとても可愛かった。面白くて可愛くて、ずっと話していたかった。誰にもこんな可愛い顔を見せたくないと思った」


 その甘い言葉に、メルは目の前の人が本当にハリーなのかと思った。どちらかというとハリーはいつも聞き役で口数が少なく、節度を持って紳士的に振る舞っていた。こんなに話すところだって初めてみたのだ。それに可愛いって。何度も何度も、可愛いって言ってる。


「だから婚約を申し込んだんだ。そもそも、ラース侯爵家(うち)が政略で縁を結ぶなんて有り得ない。政略と勘違いしているのは、レノール伯爵だけだぞ。いや、メルも勘違いしていたんだよな……」


『なぜそうなるんだ、メルが気に入ったから婚約したいとはっきり告げたはずだろう……』と、ハリーは俯いてぶつぶつと呟いていたが、気を取り直したように顔を上げた。


「だがメルは、社交は苦手だろう? 侯爵夫人なんて荷が重いだろうと思ったから、メルと婚約した時、妹に爵位を継がせるように父に言ったんだ。だがあの狸、女当主だと目立ちすぎると渋りやがってな。法律上は女当主でも問題ないし、俺が病を装って後継を降りれば世間も納得すると説得したが、首を縦に降らなかった。仕方がないから、女性でも爵位が継ぐことが珍しくないように、()()()()()()()()()()()と思ったんだ」


 ハリーの言葉に、メルの思考がぴたりと止まる。ちょっと、意味が分からなかった。ハリーが爵位を継がない為に、魔術で仮病を装っていたのは気づいたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とは、どういうことだろう。確かに最近は、女性が爵位を継ぐのも珍しくはなくなっている。それは、社交界でも有名な、リングレイ侯爵家とボレー伯爵家の世紀の大恋愛のせいで……。


 世紀の大恋愛。リングレイ侯爵家の嫡男と、ボレー伯爵家の一人娘が共に後継であるが故、周囲に引き裂かれそうになったのを、2人で手に手を取り合って困難を乗り越え、ボレー伯爵家の娘が当主となり、リングレイ侯爵家の嫡男がその婿となることで結ばれた。今や劇や小説にもなっているこの有名過ぎる両家の婚姻を機に、女性が当主として家を継ぐ事がロメオ王国では当たり前となっている。


「とは言っても、それほど大したことはしていない。ラース侯爵家の諜報部門に、色々な貴族家を探らせて、今回のモデルとなる家を探させた。幾つかの候補を絞った結果、リングレイ家の嫡男と、ボレー家の長女を選んだ。リングレイの長男は、元々、爵位を継ぐことに重圧を感じていて、できれば弟に爵位を譲って裏方に徹したいと考えていた。ボレー家の一人娘は、婿取りよりも自分で領地経営をしたがっていた。この2人の趣味嗜好を調査した結果、相性が良さそうだと判断できたので、2人が恋に落ちるように画策して、どうにか結びつけることだできた。数年単位の仕込みだが、上手く恋に落ちてくれて良かったよ」


 一体、ハリーは何の話をしているのだろう。メルの理解を遥かに超えている。


「そこからは早かった。リングレイ侯爵家の長男がボレー伯爵家に婿入りするが、婿養子ではなく女伯爵として長女が跡を継ぐ。国王の言祝ぎもあったお陰で、女当主が流行り、ラース侯爵家をエリスが継いでも問題ない()()ができた」


 そこで病を装って、まんまと爵位を妹に押し付けたのだと、ハリーは淡々と語る。


「元はと言えば、革新的な政策や事業を打ち出しすぎた故に、王宮が極度の人手不足になっていたのを、なんとか出来ないかと国王に相談されていた親父()が、優秀な女性たちを働き手にすべく画策したのが元だというのに。あの狸め。国王からの面倒な依頼を、全部俺に丸投げしやがったんだ」


 制度的に女性の登用が整っていても、人々の意識が変わらなければ活かされない。女当主の増加で、女性が仕事に就くことへの忌避感が薄まった。その結果、女性の社会進出が進み、人手不足だった王宮官吏への登用が増加したのだ。


 メルはクラクラする頭を押さえた。前半のハリーの告白は、ハリーの本音を初めて知って、政略ではなくメル自身が望まれたと知って、身体が震えるぐらい嬉しかった。

 だが後半の話は、正直、聞きたくなかった。メルも憧れたリングレイ侯爵家とボレー伯爵家の世紀の大恋愛の裏話は、メルが知るには荷が重すぎる。覚えていても碌なことはなさそうなので、今すぐに忘れたい。

 記憶を消すための魔法薬はどうやって作るんだっけと思考を彷徨わせ始めたメルは、ハリーの咳払いで我に返る。


「メル……。これが今回、俺が爵位を放棄するためにした事の全てだ。メルは知らなくても支障がないと思って特に話さなかったのだが、そのためにメルに誤解させ不安にさせたことは申し訳なく思っている。俺は、爵位よりメルの方が大事だというのは、理解してくれただろうか?」


 ハリーの言葉に、メルはコクコクと頷いた。聞いて後悔するぐらい、理解ができた。政略だからとか義理だからとかで、いくらハリーが優しいからといって、国の在り方を変えることはないだろう。そんな労力を割くぐらいならば、さっさとメルと婚約を解消した方がマシだ。


 だがハリーは、婚約の解消よりもそんな労力の方を選んだのだ。それは即ち、メルを想うが故で。

 そう思ったら、頬がすごく熱くなった。突然、発熱したみたいに顔が熱い。考えがまとまらなくて、頭がふわふわとする。


 今度は恥ずかしさでハリーの顔が見れなくなった。こんな話を聞かされて、どうしてまともに顔なんて見られるのか。無理だ。無理、無理。


 冷静に考えたら、自分でもおかしいと思う。ハリーの告白は、はっきり言ってメルの想定を超えている。普通ならあまりの重さに怖気付くのだろうが。それでも嬉しいという気持ちの方が遥かに勝るのだ。やっぱり、どうかしている。


 顔を覆って俯いてしまったメルの耳に、フッと笑う声が聞こえた。


 そっと指の隙間から伺うと、珍しくもハリーの微笑む顔が見えた。途端に、メルの鼓動は早くなる。

 勝手に勘違いして、失踪して、迷惑を掛け倒した筈なのに。一言も怒りもせずに、どうしてそんなに優しく笑うのだろう。

 ああもう。どうしたって、好きなのだ。ハリーがどんな凄い人で、それ以上に怖い人だって知っても、メルが彼を嫌う事など天地がひっくり返ったってない。


「メル。……帰るぞ」


 ぽんと、メルの頭に優しく手が置かれる。

 メルは小さく頷いて、いつもの様にうつむいたまま、ハリーの側に寄り添った。


◇◇◇


「帰るぞ、じゃありませんわ。お兄様」


 そのまま万事解決とばかりにメルを領地に連れ帰ろうとしたハリーは、無効化の魔術陣を破壊され、いつもの仏頂面に戻る。


「ああ、そうだった。エリスもいたんだったな」


 忽然と目の前に現れた妹に驚きもせず、ハリーが舌打ちをしてそう言うと、エリスはジロリと兄を睨んだ。


「なにが『ああ、そうだった』ですか、白々しい。覚えていたくせに面倒だから領地に帰ろうとしたのでしょう? 全く。お兄様との取引は、反故にされてばかりで困りますわ」


「人聞きの悪い事を言うな」


 ハリーは愛想の欠片もなく、ぼそりと呟く。一方で、エリスの突然の登場にメルは目を丸くしている。


「エ、エ、エ、エリス様……っ! い、いつから、ここに?」


「ご無沙汰しております、メル様。そうですわね、ほぼ兄と同時にですわね」


 これほど真摯にメルを探す手伝いをしたというのに、大人げなくエリスの転移を妨害したハリーのせいで、一瞬ほど遅れをとったものの、二人の会話を余すことなく聞けるぐらいには到着していたのだ。気配は消していたが。


「ハ、ハリー様と同時っ……」


 ぼぼぼぼぼっと顔を赤らめるメル。ハリーに対して好きだ好きだと告白したのを思い出したのだ。


 しかし、エリスは先ほどの二人の告白シーンには全く心を動かされていなかった。すれ違ってばかりいた二人がようやく想いを伝えあい結ばれるという、恋愛小説好きにはたまらないシチュエーションではあったのだが。


 いや。メルの告白は良かった。ぽろぽろと隠し切れない想いが口から零れている様子は、ようやく本心を言えたのね、という感動があった。可愛らしいメルの様子にも、胸がキュン締め付けられるようだった。


 だが兄の告白は。恋の告白ではなくて、ほぼ、犯罪の告白ではないか。しかも背景には国の思惑が見え隠れしていた。いつだったか、父が女性の官吏登用に周囲の理解が進まないと嘆いていたが、その解消のために兄は一役買っていたようだ。願わくば、その後のリングレイ家の長男とボレー家の長女が円満なままでいて欲しいものだ。そうでなければ、ハリーの邪悪さで後味が悪すぎる。


 それにしても、よくもメルはあんな告白をされてハリーを好きだと思えるものだ。ちらちらと仏頂面のハリーを見ては、頬を染めているのも理解できない。引っ込み思案で大人し気にみえる彼女も、やはりどこか常人とは違うのだろうと、エリスは思っている。


「お兄様。メル様を探し出したら、お話しをさせていただけるというお約束でしたよね?」


「ようやくメルを探し出せたんだぞ? 久しぶりの愛しい恋人との逢瀬なんだ。気を利かせろ」


 ハリーがメルを抱き寄せ、不満を口にする。唐突に抱き締められたメルは、ハリーの腕の中でひえぇと悲鳴を上げた。久しぶりに会うハリーの距離感がおかしくなっている。何かを吹っ切ったのか、いままでの適切な距離感を忘れてしまったかのように、接触が激しい。


「こちらも危急の用件なんです。わたくしだってハルが囚われて、いつまでも会えないのは嫌よ」


 唇を尖らせるエリスに、ハリーはフンと息を吐いた。


「あの駄犬なら、お前のティータイムのたびに牢を抜け出して帰ってきているじゃないか。その内、無罪の証拠を作り出して帰って来るだろうよ。大人しく待っていろ」


 国王の暗殺未遂犯なんぞ、捕まらなくても何も困らんと、ハリーは言い捨ててメルの髪に顔を埋める。アワアワと顔を赤くするメルに、愉し気に口の端を上げていた。


 エリスは聞く耳を持たない()()()()兄に柳眉を吊り上げていたが、一転、悲し気な表情を浮かべ、メルに訴えかけた。


「……メル様。わたくしのハルが、国王陛下の暗殺未遂容疑で囚われてしまったのです。その無実を証明するために、記憶を失った公爵閣下の魔法薬がどうしても必要なの……」


「え? 魔法薬が必要な方がいらっしゃるのですか?」


 メルがエリスの言葉に途端に真剣な面持ちとなる。彼女は大変真面目で熱心な魔法薬師なのだ。患者がいると聞けば、その治療を優先するのは分かり切っていた。


「エリス……! 卑怯だぞ。メル、相手は王家の血筋に連なる者だ。お前が出張らなくても、他に医者は山ほどいる」


「まぁ。記憶の回復何て繊細な治療は、魔法薬師の作る魔法薬が最適なのは子どもだって知っていますわ。そしてメル様は、我が国が誇る最高の魔法薬師。メル様以上に公爵閣下の治療に適した方ははいらっしゃらないわ」


「ハリー様。私の薬が必要な方がいらっしゃるなら、ぜひお手伝いさせてください!」


 可愛い婚約者が拳を握ってやる気になっているのに、ハリーが逆らえる筈も無く。

 再会したら今度こそ誤解などされないように、目一杯、メルを愛でようと目論んでいたハリーの予定は、大幅に狂う事になった。

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