母の日
5月12日、日曜日。
今日は、母の日。
小学2年生の少年、タカシは、母の日のプレゼントを買うことにした。
タカシの所持金は、ちょうど300円。
タカシは、300円を握り締め、歩いて、スーパーへ向かった。
スーパーへ着いて、店内を見ていると、カーネーションが、たくさん並んでいる。
カーネーションは、母の日のプレゼントの定番だ。
色んなカラーのカーネーションが、ずらり。
白、ピンク、赤、黄など。
「どれにしようかな?」
何色のカーネーションを買おうか、迷うタカシ。
そして、結局、ピンク色に決めた。
値札を見てみると、300円と書いてある。
「やったー!ちょうど300円だ。これなら、僕でも買えるぞ!」
そう思い、喜ぶタカシ。
そして、そのピンクのカーネーションを手に持ち、タカシはルンルン気分で、
レジへと向かった。
レジで会計の時、女性店員が、こう発言。
「330円になります」
「えっ?」
タカシは驚き、戸惑う。
つまりは、値札の300円は、税抜き価格だったのだ。
それで、税込価格が330円である。
「えっ、僕、300円しか持ってないんです」
そう言って、タカシがどぎまぎしていると、意外なことが起きた。
「坊や、カーネーションのお金が足りないの?」
タカシの後ろに並んでいた、50代の女性客が、そうタカシに、尋ねる。
「うん、僕、300円しか持ってないんです」
「お母さんにプレゼントするの?」
「うん」
「お母さん思いのいい子だねえ。じゃあ、オバサンが、残りのお金を払ってあげよう」
そう言って、その50代の女性客が、残りの30円を払ってくれたのだ。
「オバサン、ありがとう!」
タカシは、そう言って、その女性客に、お辞儀をした。
タカシは、購入したピンクのカーネーションを、手に持ち、スーパーを後にする。
スーパーから、家までの道中、歩きながら、タカシは、声を出し、泣いた。
「ただいま」
「おかえり」
帰宅したタカシを、お母さんが、迎えてくれた。
「はい、これ。プレゼント」
そう言って、タカシは、泣き顔で、ピンクのカーネーションを、お母さんに差し出した。
「ああ、タカシ、ありがとうね。だけど、タカシ、どうして泣いてるの?」
「オバサンが助けてくれた」
「ん?どういうこと?何があったか、話してみて」
タカシは、お金が足りなかったけど、オバサンが、お金を出してくれて、助けてくれたことを、
拙い言葉で、説明した。
それを聞いて、優しく微笑む、お母さん。
「すごく親切なオバサンだね。ちゃんと、ありがとうって言った?」
「うん、言った」
「えらいね。タカシ。これからも、何か、してもらったら、ありがとうを忘れないんだよ」
「うん」
その会話のすぐ後に、タカシの弟で、5才のユウヤが、タカシに対して、ふざけて
「お兄ちゃん、カンチョー!」
と言って、カンチョーをした。
それに対して、タカシは、
「カンチョーしてくれて、ありがとう!」
と返した。
それを見て、お母さんが、こう言う。
「タカシ、それは、余りにも、心が広すぎるよ!」
おしまい