40 作戦会議
俺達は地上へ続く道を進むことにはしたのだが、どんどんと道幅も天井も狭くなる。一列に並び、ほふく前進のように這って進むことを余儀なくされた。
「ねえ、この道ホントにあってるの?」
ミレイが不安半分、文句半分でガブに言う。
「ほんとだって。俺何回も通ったことあるもん。庭みたいなもんだよ」
「君さ、たまにソロでなんかやってると思ったらこんなところで何してんの? まさか覗きとか……!?」
「アホか! あんたじゃあるまいし。隠し通路とか結構あって面白いんだよ。カリアの街中に出入り口があるからさ」
「暗くて狭いところが落ち着く、ってことなのか……獣どころか虫みたいな奴だな……」
「おい、おっさん、後で覚えてろよ」
「それはいいですけどレドさん、そろそろ作戦の方を……」
俺はレドさんに促した。このままでは一向に本題に入る気がしない。いつ敵に追い付かれるかわからないのだ。まるでスパイのように暗闇の中を行軍しながら作戦会議をするしかない。
「あーはいはい、作戦ね。まあさっきも言った通りドラゴンを倒す。頑張るぞお。以上」
「まじで蹴りますよ」
「いや、うそうそ、冗談だって」
「ふざけてる場合じゃねえんだぞ!」
みんなに怒られ、レドさんは渋々話はじめた。
「さ、さて、では本題にはいりますか。えーと、実はまだちゃんと考えがまとまってなくて……。とりあえず僕らはまず手持ちのカードを整理しなければならない。主にはニアについてだけど。僕らはニアの武器をパムルゴニアの光だと考えていた。そして逆に異常なヘイトが弱点だってね」
その通りだ。パムルゴニアの光は一見すると超強力なスキルではあるが、あれほどに魔物に狙われるとひとたまりも無い。現にガーディアン……あのオオカミたちはニアを守り切ることが出来ず大破した。
「だけどさっきの戦いでわかった。注目すべきはパムルゴニアの光じゃない。ニアのもつ謎のヘイトは、他には並ぶ者の無い、特殊な才能なのだよ」
何が言いたいのかわからず、一同に沈黙が流れる。それを続く言葉への期待と受け取ったのか、レドさんは得意気に言った。
「つまり……今夜のパーティーの主役はニアだってことさ」
「ダサっ……」
ミレイの一言にレドさんが恥ずかしそうに取り繕う。
「こ、こういうの一度言ってみたかったんだよね! ほ、ほら映画とかでよくあるじゃん! い、いや、まあいい。とにかくこれほど強烈なヘイトはニアを危険にさらす反面、逆に最大の武器にもなり得る、ということさ。いつもヘイトが欲しくて欲しくてたまらない変態のフジくんならわかるよね?」
そうだ。別に俺は変態ではないが。世のタンクならレドさんの言わんとしていることはわかるはずだ。何もしなくても敵が寄ってきてくれるなら、タンクとしてこれほどやり易いことは無い。つまり……
「敵のターゲットが決まってるなら……」
「そうそうフジくん! 察しがいいね!」
「例えば、ドラゴンの攻撃をさっきみたいに俺が全部防ぐとか……」
「ぶぶー! やっぱり変態なの君!? 死ぬでしょ普通。一撃もらっただけで即死よ。そこらの雑魚と違うんだからさー。もっとちゃんと考えてよ。はい、次の回答どうぞ」
「えーと……じゃあ……」
「時間無いって言ってんだろ! クイズ形式にするなよ! フジもちゃんと答えろよ! つまりヘイトを利用して魔物をどうにかこうにかするってことだろ!」
「いいねーガブちゃん。冴えてるよ。花マルをあげたいところだがまだ足りないね。普段の戦闘には無くて今日はあるもの。それをうまく使えば……」
普段は無くて今日はあるもの……。次は有る無しクイズか……。何だろう。イベントならではの何か、ということだろうか。
「わかった〜、今は夜だから、『月があります』。『ツキがあります』。ツキ、つまり運でなんとかする!」
「ぶぶー! ベルちゃんハズレ! 運でなんとかなったら苦労しないよ。もっとこう、ほら、頭脳を使った天才的な感じの」
「え〜、ヒントほしいなヒント」
「ヒントどうしよっかなー」
「おい! 遊んでないでさっさと説明しろアホ!」
「あ、フジ、今前見ないでね。顔上げたら殺すから」
ぐ、難しい問題だ。俺は目の前を這って進むミレイのスカートの中を眺めながら頭を悩ませた。




