「名実ともに悪である」③(始まり)
現在(夢)
「ぉきなさい」
「ぉきなさい」
「おきなさい」
小さな声が大きくなっていく
夢の中で母が私に話しかけてきている。
ずっと昔の子供のころの記憶。
「お母さん、おはよう」
「どうしたの」
「これを」
あるペンダント(リンゴ型)を少女に渡す
「それはあなたが持っていなさい」
「いつか世界を変えるカギになる」
夢はいつもそこで終わり。
倉庫の中で少女が横たわっている。
息はあるようだ
(時間はない)
「おい、おきろ、」
スーツ姿の男が少女を無理やり叩き起こす。
「ん、、、お兄さんだれ?」
「いう必要はない」
強引に少女の手を引っ張る。
「こっちだ」
「追手が来る」
「急ぐぞ」
二人で夜の闇の中を駆け抜けていく
「まってよ」
起きたばかりの少女の意識がはっきりしてきた。
黒いワンピースを着た少女が叫ぶ
「やめて!!」
男の手を振りほどく
少女と男の距離が開く
「あなたは誰なの?」
男はその問いに答えない。
ただ黙っているだけであった。
その時無線から声が聞こえた。
「こちらバッカスそっちの状況はどうなってる?」
「こちらヘクター」
少し間を開けて、男は少女を見た。
「少し手間取ってる」
「おい、ヘクターたのむぜ」
「ああ、わかってる」
少女は自分がどういう状況に居るのか理解できなかった。
つい先ほどまで私は家にいたはずだ。
父がいて、母がいて、私がいる。
どこにでもある普通の家庭。
いつものように支度をし、そして…
記憶がなかった
いや、まるでフィルムを切ったかのように
記憶が断片的で欠けている。
「私は」
私は一体?
「!!」
「伏せろ!!!」
突然、男が頭をつかみ地面に押しつけた
直後、男が目にもとまらぬ速さでピストルを抜き
暗闇にめがけて発砲した。
何も起きない。
少女が伏せたまま顔をあげた
「突然、何なの!?」
男に対して不満を言おうとした時
暗闇からすさまじい数の弾丸が放たれた。
スーツ姿の男が強引に少女を引っ張り
物陰に隠す。
あちらこちらを擦りむいてしまったようだ。
男はそれに構わず暗闇に向け銃を連射する。
すると男が一人倒れてきた
そして突然、路地の角からバン(大きな車)が現れ射線に入ってきた。
「おい、ヘクター!!!」
「初めてのデートは順調か!!!」
バッカスが茶化しながら車のドアを開けた。
サングラスを指で上げながらニタニタ笑う。
「そうだな!!!」
「マドンナはなかなか自分の物に出来ないらしい!!!」
それを聞いてバッカスは豪快に笑いながらアサルトライフルを取り出した。
「ライバルが多いみたいだな!!!!」
ヘクターにライフルを投げ渡す。
「巻けるか!?」
当然と言わんばかりの爽快な笑みでバッカスが答えてきた。
男は再び少女の方を見て
しゃがみこんでいる少女に手を差し出すのっだた。
現代(車の中)
バッカスが車のハンドルを切ったと同時に少女が車の中を転がっていった。
「おい、邪魔だ何かにつかまってろ!!!」
そう言いながらバンの上の窓から身を乗り出してヘクターが銃火器を乱射している。
薬きょうがバラバラと車の中かに広がる。
ヘクターが放った弾幕が後を追っていた車に命中。
バランスを失い横転、
後ろの車に激突し、爆発した。
黒い煙がもくもくと上がる。
「ヒュー」
が口笛を鳴らす。
「さすがだな!!!」
「世事は、生き残ってから聞こうか!!!」
重火器に弾薬ベルトを取り付ける。
「次が来るぞ!!」
黒い黒煙から2台の車が表れてきた。
再びヘクターが銃を構え、
そして、引き金を引く。
弾は吸い込まれるように流れていき車に命中した、
しかし、ヘクターは苦虫を噛み潰したような顔をする。
バッカス「どうしたヘクター?」
するとひどく深刻な声で
「防弾使用だ」というヘクターの声が聞こえてきた。
追手の車の方を見ると弾丸が当たったところから火花は出ているが
全くビクともしていなっかった。
「タイヤを狙え!」
バッカスの言葉道理に照準をタイヤに合わせて引き金を引いた、
しかしタイヤも防弾性の物だったらしい。
「まったく」
「ちょっとした装甲車だな」
「打つ手なし、なの?」
さっきまで車の中を転がっていた少女がひょっこり顔を出してきた。
ヘクター「いいや…」
バッカス「お前、アニメ好きか?」
少女「え?」
バッカス「普通の弾が効かないなら、徹甲弾にするなり、
もっと強力なやつをぶち込んでやればいい」
車の後ろから50口径重機関銃をゆっくりと引き出してきた。
ヘクター「ってわけで、こいつの出番だ」
銃弾が飛び交う中、それをゆっくりと構える。
「ふー」と息をゆっくり吐き、
意識だけの世界に入っていき
弾丸が飛び交う中意識だけの世界に入っていく
そして引き金を引いた
ニ発がボンネットに、そして最後の一発がフロントガラスに当たった。
車がバランスを失う。
あっという間に転がり、そして動かなくなった。
「よしゃーざまぁみろ!!」
バッカスが運転しながら叫ぶ
数十メートル離れたところで車を止める。
そして、追手の車にヘクターがちかづいて行く。
ひっくり返った車から誰かが千鳥足で出てきた。
問答無用でヘクターがそいつを撃ち殺す。
そして、そのままの勢いで車に近づく、車の中でうずくまっている男を無理やり引きずりだす。
道路の真ん中にまで連れてきたところで、車が爆発した。
ヘクター「誰に言われて来た…」
男に銃口を突き付けきた
男「うぅ…」
男は二言三言喋ったが少女には距離が離れていることもあり、その会話は聞こえなかった。
バッカス「ヘクター急げ、時間がない!」
ヘクター「ああ、わかってる!!」
ヘクター「さあ!言え!!」
男「…くたばれ、クソ野郎!」
ヘクター「そうか…」
ヘクターは一歩下がり引き金を引いた
男はこと切れて動かなくなった。
ほんの一瞬の出来事、しかし男の心臓は動かなくなっていた。
少女は驚いた、引き金を引くまでの動作に、ためらいが感じられなかったからだ。
それは、素人でもわかることだった。
少女「…な、何も殺すことは」
ヘクターが車の陰から出てきて少女のところにやってきた
ヘクター「…」
ヘクターは少女を見つめる。
ヘクター「殺さなければ、殺されるだけだ…」
少女はこの時感じた、ヘクターの目に暗い光が宿っていることに
バッカス「ヘクター!!」
ヘクターが振り返ると、遠くから追ってくる敵の姿が見えたのだった
重機関銃を撃ちながら、状況を確認していると
ヘクター「弾が、無くなりそうだ…」
(敵の数もそうだが、こちらの車に命中する弾の数が増えてきている)
(さっきの奴らは一般市民に銃を持たせただけの様な奴らだったが…)
ヘクター「敵の精鋭部隊だ、いよいよ敵も本腰を入れてきたみたいだな」
バッカス「ヘクターこれからどうする!!」
ヘクター「大丈夫だ!まだ策はある!」
ヘクター「次の角を右に曲がれ!!」
ヘクター「速度を落とせ!」
バッカス「なにー!?」
ヘクター「速度を落とせ!!」
敵との距離があっという間に無くなっていく。
右に曲がって川沿いに出たはいいが逃げ道がなくなってしまった。
バッカス「おい、追いつかれるぞ!!」
ヘクター「大丈夫だ、このまま川沿いの道を走り続けろ!」
少女(ダメ、追いつかれる!!!)
ヘクター「スピードを落として、一定にしろ!」
じりじりと敵が迫ってくる
バッカス「おい…ヘクター!!」
へクター「ああ、」
ヘクター「相手も同じだ…!」
(ボン!!)
敵「なんだ!」
ヘクター「よし、時間通りだ!」
するとしばらくしてから対岸から大砲の様な音が一発、聞こえてきた。
敵「逃げ道が!!」
ミカ「…こちら、ミカ援護はまかせろ」
無線越しに女性の声が聞こえてくる
ヘクター「このまま、橋まで行くぞ!」
ボン、という音の数だけ敵の車が爆発していく
走っている車を狙って撃つというのはとても難しい技術だ
しかし、敵が走っているのは一本道、しかも車道の道がそれほど広くない
そんな中で先頭の車がスピードを落としたら、後ろの車もスピードを落とさなくてはならない、
難しくない、とは言いはしないが、神業を連発する事に期待するよりかはましである。
ミカ「ヘクターそのまま進めば目標の橋があるから…」
ミカ「注意して」
ヘクター「了解!」
バッカス「よし!もうすぐ橋に…ん!?」
ヘクター「検問か!」
バッカス「どうする!!」
ヘクター「そのまま、突っ込め!!」
バッカス「マジかよ!?」
敵(検問)「ん?」
ヘクター「行くぞ、突っ込め!」
バッカス「ヒャハー!!」
敵(検問)「!!て、敵だ!」
敵2(検問)「撃て!撃て!撃て!!」
バーンという音とともに検問所のバリケードが木片をまき散らして壊れる
橋を通り過ぎて10メートルほど来たところでヘクターが何かの装置を取り出した。
ヘクター「準備はいいか?」
バッカス「いつでも!」
スイッチを押すと橋に設置した爆弾が起爆し、上にいた敵もろとも崩れていった
ヘクター「よし行くぞ!」
その場から離れようとするヘクター達、それをビルの屋上から見ているひとりの男がいた。
?「ああ、問題なく進んでいる…」
?「ああ、心配するな」
?「全て予定通りだ…」
そういってその男(男②)は不敵に笑うのだった。