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おまけ 今までの分取り返す

 命を救ってもらったら当然その人には恩を感じるはずだ。


「なあに? ユツィ、王女殿下な私をステラモリスの公爵様に重ねているわけ?」

「重ねているなど」

「してるでしょーが!」


 ステラモリス公国は私の力及ばず、前皇帝の勅命を受けた第一皇太子の手によって武力併合され、国として存続することはなくなった。また同時に、第一皇太子妃の手によって当時の公爵と奥方が亡き者にされ、たった一人の公爵家の血の者である少女はウニバーシタス帝国に連れてこられた。第一皇太子妃に虐げられる生活から救い出し、賓客とはいかないまでもなんとか部屋を割り当て、私やヴォックスから調度品等を渡すことが出来ている。


「ユツィと団長さんを救った功績ねえ……理由がないと動けないなんて本当帝国っておかしいわよ」

「ファーブラの仰る通りです」


 私が瀕死の重傷からクラスに救われた後、その報を受けたファーブラが海を渡って見舞いに来てくれた。

 ステラモリス公国の治癒魔法を受けたから重傷もなにもないのだけど。

 ちなみにクラスが何某かの功績なくして待遇改善できなかったことにファーブラはお怒りの様子だ。


「まあいいわ。王女殿下な私を重ねていたから、ステラモリス公爵も生き長らえてるものだもの」

「そうでしょうか」

「貴方、あの子に言ったんでしょ? 生きてって」

「はい」


 ファーブラから受けた言葉。

 ヴォックスと和解に至るまでこの言葉は私の気持ちを縛ったが、同時に生き続ける事で丸く収まるところへ着地した。殿下は分かっていたのだろうか。


「私、結構後悔してたのよ」

「後悔?」

「貴方と団長さんの関係が気まずくなったでしょ」

「そんなことはありません」


 結果的に私とヴォックスは結ばれることになったのだから良い。終わりさえよければ、あの頃の悩んでいた姿は必要なものだったと言える。


「ユツィがそう言ってくれるならいいわ。じゃあ私は行くわね」

「もう少しゆっくりされても」

「あんまりユツィを独占するとどこかの騎士団長な旦那様に睨まれるのよ」

「ヴォックスにはきつく言っておきます」

「やめなさい」


 毎日いちゃついてればいいのよと指さされる。モンスも未だなにかと同じことを言っているが、毎日いちゃつく必要がない。


「今までの分取り返しなさい!」

「はあ」


 殿下を見送り淋しさを感じていると、どこからともなくするりとヴォックスが現れた。


「ユツィ」

「ヴォックス。ファーブラは帰ったよ」


 知っていると短く返答された。

 二人別棟に戻る道中、聞いてみることにする。


「ヴォックスはファーブラに怒ってる?」

「いや」


 何故そんなことを? と言われ、ファーブラとの会話を包み隠さず伝えた。


「それは当時彼女とやり取りし、覚悟の上でああなった」

「そう」

「まあ今は妬けるが」

「え?」


 クラスもだが、と添えられる。この二人の少女の何がそんなに妬けるのか。


「君は二人の事を崇めている節がある」

「まあそうだね」

「優先順位が私より上に感じる」

「そうでもないけど」

「私にはあんな素直に好きな気配がない」

「どういうこと?」


 つまり態度がよくないということかな?

 ヴォックスが立ち止まる。周囲を見回して、次に前振りなく抱きしめてきた。


「ちょ、人が」

「いないことを確認した」


 そういう問題じゃない。これから誰かが来る可能性があるのに。


「ユツィを独占できるのは俺だけがいい」

「成程」


 確かに妬いている。


「確かに、あの二人は命の恩人ではあるが」

「二人?」


 クラスが恩人なら分かる。彼女は私もヴォックスも重傷を負った時に癒してくれた。

 けどファーブラが?


「彼女はユツィに生きろと言ってくれたから、だから今こうして抱きしめられる」

「……」


 それは私にとっての恩人になるのに、ヴォックスにとっては彼自身の恩人となってしまうらしい。にしても恩人に妬くとはどういう感じだろう。感情がごちゃごちゃしてそうだけど?

 そんなことを考えていると抱きしめる腕に力が入った。


「別のことを考えてるな?」

「ヴォックスの事だけど」

「ならいい」


 抱きしめる腕の中で見上げると満足そうに目を細めるヴォックスが見えた。


「どう足掻いても私はヴォックスだけだよ」

「それでも……余裕もないし狭量にもなる」

「そう?」

「……そうだ」


 これからは毎日俺を安心させてくれと、どこかいい事を閃いたみたいな顔をして言う。

 あまり良い予感がしない。


「これから毎日抱きしめて」

「ちょっと待って」

「口付けも欲しい」

「待ってって」

「そうすれば俺は安心して君の側にいられる」

「待ってって!」


 力をいれても解放される気配はなかった。


「ということで、早速口付けを」

「待ってって言ってるのに!」


 そしてこれが城の中、人通りがある場所な手前、存分に騎士達に広まってしまう。

 誰も通らなかったのは優しさとのことだ。

 その前にこの男を止めて欲しい。

中身がかなりのシリアスだったので、おまけはいちゃつくしかないよね!おまけにシリアスは不要!ということでモンス的には大勝利ないちゃつき話でした(笑)。

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