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豊玉宗匠の憂鬱

~ 登場人物 ~ ※年齢は1860年当時



❦ 土方(ひじかた) 歳三(としぞう) (25)



天然()(しん)流、()(えい)(かん)道場の門下生。


(のち)の新選組 副長。


俳句を()むのが(しゅ)()(史実)。


41句を(まと)めた「豊玉(ほっ)()集」は、


「土方歳三資料館」にて、現在も展示中。


恋の句をプリントしたブックカバーも絶賛発売中♡




❦ 沖田 (そう)()(ろう) (18)



試衛館の若き塾頭(じゅくとう)


後の新選組一番組長、沖田(そう)()




❦ 近藤 (いさみ) (26)



試衛館の四代目。後の新選組 局長。


以前の名前は、島崎(かつ)太。歳三とは幼馴染(おさななじみ)で、


(とし)」「()っちゃん」と呼び合う仲。




❦ 井上 源三郎(げんざぶろう) (41)



試衛館の古株(ふるかぶ)。通称、(げん)さん。


後の新選組六番組長。惣次郎とは親戚(しんせき)




❦ 原田 ()()(すけ) (20)



試衛館の食客(しょっかく)。後の新選組十番組長。


腹に切腹(せっぷく)(あと)がある。




❦ 沖田 みつ (27)



惣次郎の姉。




❦ 佐藤 彦五郎 (33)



歳三の姉の夫。歳三からは()(けい)に当たる。



ー 江戸 天然()(しん)流 ()(えい)(かん) ー



~ 1860年 11月 30日 ~



「う~む……(うめ)、梅」



昼休み。


()(げい)()に出た()っちゃんの文机(ふづくえ)を借り、(おれ)()(さく)(ふけ)っていた。


土方(ひじかた)さん、何してるの?」


「うおっ!」


(そう)()(ろう)が、後ろから(のぞ)き込んで来た。


肩口から手が伸び、机の(すみ)(はん)()(つか)む。


何々(なになに)、『下野紘(しもつけひろ)()(すけ)、お悠衣(ゆい)の、俳人(はいじん)になろ()の会』?」


見付かった……!


「こ、今月、句を募集しててだな……」


「へぇ、意外な趣味が、あったんだね。


 とし君には」


「とし君言うな!」


「え~」


惣次郎は、ケラケラ笑っている。


あーもう、だからコイツには、知られたくなかったんだよ!


「冗談だってば。機嫌、直して下さいよ。


 で、何で俳句を?」


「……俺の(じい)様が、()んでたんだ。


 義兄(あに)上も詠むぞ」


「彦五郎さんも。(うま)いの?」


「なぁに、そりゃあ、俺の方が……」


惣次郎が、机に広げた習作の中から、ぴらりと一枚を(つま)み上げる。



『梅の花 一(りん)咲いても 梅は梅  - 豊玉(ほうぎょく) - 』



「…………」


(つま)み上げた(まま)、絶句している。


何だ、その反応は。


「……何これ。しかも豊玉って」


「俺の俳号(はいごう)だ」


「うわ……」


(ガキ)にゃ、この深みは(わか)んねぇよ」


「又、子供扱いする!」


ぷぅ、と(ほお)(ふく)らます。そう言う所だよ。



「お茶が入りましたよ」


(げん)さんが、お茶を運んで来てくれた。


玉露の良い香りがする。


「ねぇねぇ源さん、これ土方さn「だ――っ!」


(かく)そうとしたが、一足遅かった。


「…………」


源さんも、湯呑(ゆの)みを置く直前で固まっている。


だから何なんだよ、その反応は。


「……や、味わいがあって良いですな。


 ほぉ~、梅の花。いやはや……」


物凄(ものすご)く気を(つか)われた気がする。



「姉上や、()()(すけ)さん達にも見せよう!」


「なっ!?」


おみつさんが見た日にゃ、腹抱(はらかか)えて笑いやがる。


原田なんざ「笑い過ぎて腹の古傷が開く」とか抜かすだろう。


「姉上~!


 左之助さぁ~ん!」


「待て、こら!」


短冊(たんざく)を手に、道場中(どうじょうじゅう)をドタドタと()け回る惣次郎を、俺は必死に追い()けた。




「只今、帰りました」


「あぁ、若先生、お帰りなさいませ」


「? 随分、騒がしい様ですが……


 源さん、一体これは、何の騒ぎですか?」


「いや、惣次郎の奴が……申し訳有りません」





~ 1861年 3月 ~



「土方さん、()れの句どうだった?」


「今日、この会報で発表だ」


惣次郎と二人、恐る恐る巻紙(まきがみ)を開く。


ゴクリ……



『大賞





 春日(かすが)庵盛車(もりあんせい)



義兄(あに)上かよ!」


(かた)()しだね、豊玉先生……」


俺は、がっくりと肩を落とした。



『あっはっは、悪いね歳三、アタシが貰っちゃったよぉ~♪』


能天気な義兄上の声が、頭の中に鳴り響いた。





~ 1863年 1月 ~



俺達は(ろう)()(ぐみ)として来月、(きょう)()つ。


(せん)には()れたが、形にしたぞ、(そう)()


「何です?土方さん」



つ『豊玉(ほっ)()集』(全41句 完全版)



「…………」


総司は、(さっ)()をそっと閉じた。


せめて中身を見ろ。


「いいんですか?」


「何が?」


「私達が京で活躍(かつやく)して、


 後々迄(あとあとまで)、伝わって、


 土方さんを(たた)える(やかた)なんか出来て、


 並べられるかもよ?


 本の(おお)いになったりして」


「何だそりゃ。表紙とか、(さら)(モン)じゃねぇか」



(こう)()に残るかどうかは、我々(われわれ)()(だい)


()っちゃんが、したり顔で(かいな)を組む。



「いざ、京へ!」


(おう)!」



「「「俺達の戦いは、これからだ!!!」」」



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― 新着の感想 ―
[一言] え!コレいい!凄く好き! 本当に一言で申し訳ないのですが。 面白かったー!
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