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とにかく一旦、ボクの話を聞いて欲しい。  作者: ファムル
己之扉編
2/2

零一之扉

今もボクは独り。

 ようこそ。ボク達の世界へ。

 あの長ったらしい前置きを見てまで、あなた達はここに来てくれた。それだけでもボクは嬉しい。ただ、それならやはり、こちらも誠意を見せるべきだと思う。なので、簡単にボクのことを知ってもらおう。

 現在、ボクは高校1年生で、今はコロナ関連によりリモートでの生活を送っている。まぁ、そのリモートも、学校側の回線が悪かったりと、中々しっかりとした授業を受けることはできていないのだが。

 友人は入学後直ぐにできた。また、中学や、それ以前の友人とも、交友は続いている。小学校では事務局を、中学校では学年委員長や生徒会本部役員を、そして高校では学級委員をと、人前で話すことに苦手意識を持たないボクからすれば、友人を作ること等造作も無いことだった。

 そして周りの人間関係、出来事、思想等、まだまだ紹介しきれていないことは山脈や大海のようにあるが、出したらきりがないので、それはおいおい小出しにしていくとしよう。

 今回ははじめということもあり、今の「ボク」ができるオリジンから話していこう。何故生粋の高校生がこの世王な所業をするに至ったのか。そして何故共感を求めているのか。ゆっくりじっくり確かめてほしい。


 今の「ボク」の自我が芽生えたのは、幼稚園の年長に入る辺りの頃だった。

 というのも、そもそもボクの通っていた幼稚園は、年少・年長の2つしかなく、年中が存在しなかった。

 こんな情報を開示したらかなり絞り込めるかもしれないが、今は別にその幼稚園の近くには住んでいないし、あなた方のことを勝手に信じさせてもらった。

 話を戻すが、そんな年長になってからのある日のこと、ボクは人形と化した。それは何の前触れもなく、周囲の大人、友人。それら総ての期待、視線、考え、理想から創られた。

 どんな行動を起こせば、相手がどんな反応をするのか、それが唐突に分かるようになってしまった。そして事は思うように進み、想像と同じことが面白いように怒る毎日。

 なんだかつまらなかった。自分が死んでしまったようで。何より怖い。

 思えば、強烈に死をイメージするようになったのもこの頃からだったように思う。

 それから今に至るまで、ボクは人生を演じ続けている。自分の本心を人に明かしたことは一切ない。だが、話術で様々な人の本心には触れてきた。例えそれが、本人の気づいてないものだったとしても。

 周りの評価、希望、思想。それら総てが視える。とうに自分は死んでいた。なんせ今やりたいことなんてわからなくなってしまったのだから。

 どれが本心かわからない。そういった心情の中、ボクは今日も一日を演じる。

 たまに自分を呼び戻したくて、わざと馬鹿をやったりする。それでも結果は同じ。それで怒られる内容。相手の反応。すべてわかる。

 この人生演者の日々は終わらないのかもしれない。出来ることならば終わらせたい。だが、それはきっと叶わない。


 もしかしたらボクはこの話を皆と共有することによって意味を見出したいのかもしれない。


 だから答えが出るその時まで、気長に待つことにした。


 人生ずっと、辛抱ばかりだな。


 せめて今だけは本当の自分でありたい。


 本当の自分であってほしい。







 それでも結局、真相は分からないまま。

 今日という日が幕を閉じる。

 終わらない人生演者の影を、薄くはっきりと引き伸ばしながら。

誰か教えて。

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