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桜花姫伝  作者: 澪烙
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それじゃあ、いっちょ妖魔退治しますか??


とりあえず、ひょんなこと(アンケートに答えただけ)で紅姫に仕えることになった紫苑は、まあ初日から紅姫に会うなり事件(という名の試験、というかキスされたこと)にあい、晴れて、紅姫に認められて、正式な見習い給仕になった。 


依然として、”見習い”の立場は変わっていない・・・。


「姫様、失礼します。」


決まりきった言葉で、紫苑は紅姫である紅蓮のもとに食事を運びに入った。

御簾の奥にいる案山子の傍を早々に通り過ぎ、さらにおくにある部屋に入る。


「し~お~ん~~!!」


妖気(紫苑にとっては。もちろん本当は能天気な、陽気)な声で紫苑の名を呼ぶ紅蓮。


「紅蓮!!今食事を運んでいて危ないので、まだ動かないでください!!」


少し、きつめな声音で話しかける紫苑。


と、いうのも・・・


つい、先日。


「お食事用意しました。」


と、御膳を運んでいた紫苑を見つけるなり紅蓮は、紫苑の腰に抱きつきにいったのである。


もちろんセクハラというほどのものではないであろう愛情表現の一種なのだろうが、そんなことはどうでもよく、よくなかったのはその紅蓮のタックルに近い衝撃を受け止めきれることができなかった紫苑が、御膳を派手にひっくり返してしまい、辺りにある高価な品々を汚してしまい、その清掃代(もちろん清掃にかけてはプロ!の方々に頼むのであり、下手に給仕程度が手を出していい領域ではないのである。)をいきなり給料から差っ引かれることになった。


もちろん、紅蓮付き侍女をまとめる侍女長の胡桃さんによって・・・。


紫苑は笑顔のうらにある胡桃の目つきの恐ろしさを思い出していた。


「あのときの胡桃先輩は目つきで『大変なのは分かるけど、そんなことしていたら給料無くなっちゃうからね~』っていってたのよね・・・。あくまでも予想だけど。」


給料をくれる人、そして減らしていく人・・・紫苑の中で胡桃のポジションがどんどんお金関連へと変わっていく。



そんな紫苑にとっては重大なことが既に起こってしまっているので、二度とそのような失敗は犯さないように気を配っているのだった。


とは言っても、紫苑の言うことなんて紅蓮は大して聞いていないだろうとは予想するに難くないので、紫苑は膳を床にとっとと置いて、御膳を無傷の状態で維持させ、変わりに紅蓮のタックルを受けた。


もちろん、すぐにどいてもらう。

基本的に一回抱きつけば気が治まるらしく、紅蓮は返事をして椅子に座ってくれるのである。


最終的には、紫苑はこの紅蓮のタックルも回避する予定にしているがまだそこまでには至っていない。


紫苑は運び終えたので、退出しようとした。


「ねえ、紫苑行かないで。さびしいわ。」


紫苑は振り返って、紅蓮を見た。視線が合ってしまい、当然紫苑は紅蓮の要望に応えてあげてしまうのである。


まあ、御膳を引き上げなきゃいけないし、これくらいだいじょうぶよね??っと紫苑は紅蓮の前の椅子に座るのであった。



紅蓮が食事を終えて、紫苑が御膳を引き上げようかな、と考えていた丁度そのときに胡桃が部屋に入ってきた。


「姫様、お食事が済みましたか。丁度いいところですね。紫苑あなたにも、用があったんですよ。」


紫苑は片付ける手を胡桃にとめさせられ、目を丸くしつつ、胡桃に座らせられた。

どこか、紅蓮も楽しそうであった。


「ほんの少し前に被害があげられていた村なのですが、最近になって妖魔が活発になってきたとの報告を受け、朝廷が討伐と地域の結界の点検を依頼されました。既に妖魔祓いの人には動いてもらって結界の点検はさせているので、姫様には討伐をなさってもらいます。紫苑、あなたにはなれてもらうために囮役をしてもらいます。」


「ええ、いきなりですか!?」


「いやいや、紫苑。いきなりではないよ??二回目だ。私がはじめて、紫苑に霊峰にいってくるように頼んだときがあっただろう??あれも立派な囮役だった。」


「それは、紅蓮が私のこと騙しただけじゃない!!これはいきなり、って言うんです!!」


「まあ、それもそうなんだよねー。」


自らそういって、あはははは、と声に出して笑う紅蓮。


「ったく、とぼけてるんだか、狙ってるんだか」


そんな調子で、紫苑は呆れていた。というか、もうそういう役割にされていることを自覚していた。

まあ、つまり、紅蓮を楽しませる、という役割なのだが、如何せん馬鹿にされすぎな部分もある。


「そんなに、しょげないでよ。紫苑。この仕事は、また定期的な仕事じゃないから別にお手当てがでるの。もちろん、危険手当だから、それなりにいい給料だわよ?」


「仕方がないから、張り切ってやらせていただきます!」


結局、都合よく使われる紫苑だった。

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