結局仕事は金だ!!
「いやー、ごめんごめん。そんなに驚かせる気持ちはこちらには毛頭もなかった。いや、ちょっと下心ではあったんだけど。」
「あったんですか!?」
紫苑は紅蓮のおとぼけた会話に突っ込む。紫苑にとって、身分うんぬんの話は頭からすっぽり抜けていた。
「それにしても、やっぱり私が見込んでいた以上だわ!紫苑。」
紅蓮の一人称が我→私に変わる。どうやら、じぶんのことを持ち上げるときに一人称を‘我‘にするようだった。
「一体何がですか?紅蓮様。」
「私のことは友達のように紅蓮ってよぶのよ!」
いきなり、むちゃくちゃな命令だった。
紫苑は頭を抱えた。もちろん痛いわけではなく、この先が思いやられて仕方がないからだ。
「私が従者に求めるもの、それははっきりいって力があるかどうか。霊力を少し持っているわけじゃなくて、普通の人よりかなり持っている人材を私は欲しているの。でもあんまりにも条件が厳しすぎて、常に人手不足状態でね。そんなときにあなたが、アンケートに参加してくれていた!あのアンケート紙には小細工がされていて、その紙を使ったときにその人が力を持っているかどうか調べられる。その中であなたが一番大きな力を持ってるって分かったのよ。
あとは、霊山で妖魔に襲われるかどうかを調べて-
最終的に私が相性を調べるのよね。
あのキスは、まあ私にとっては霊力補給みたいな感じで、いつも他の従者がいたときに稀にするんだけど吸い上げすぎて、みんな気絶しちゃうんだよねー。
そんなところから判断すると、紫苑の潜在的霊力の大きさはなかなかのものだよ!
髪も青くて、私好みだし、年も近くて、友達ができたような気分だし!!
胡桃とかがいつも話し相手になってくれるんだけど、やっぱり年が一回り上なぶん大人びてるから、同じ位の年の友達がほしかったんだー。
というわけで、よろしくねー」
はい、ちょっと待ったーー。色々と知らないことが一気に出てきたぞ?
紫苑は紅蓮の言葉を頭の中で反芻する。
「胡桃先輩!!この前聞いたとき、紅蓮と話したことなんて一度も無いみたいなこといってませんでしたかー??」
口調がとげとげしいのは、勘弁して欲しい。
心の中で紫苑は言い訳した。
さっきのこと(キスのこと)から今で、冷静に話せるかーーーーーーーーーーーーーー!!!
「あー、あれ嘘嘘。いやいや、気づくの遅すぎだってー」
胡桃は何にも悪びれていなさそうに笑いながらいった。
「嘘っ、とかですまないですよ!!私の貞操どうしてくれるんですか?!」
「女の子同士でそんな大したことじゃないわよー。」
大したこと→キス(しかも長め)
「わたしにとっては大したことなんですって!!!もういいです!!この仕事・・・・辞め・・・・ませんけど!!こんなことがいっぱい起こるんなら私辞めます!!」
「・・・うん。二度としないから、辞めないで。」
「・・・」(さっきとキャラが違うんですけど・・・・・・)
しょげた紅蓮は、庇護欲を誘うような雰囲気で紫苑はむしろ自分が悪いんじゃないかと思い始めてきた。
あー、もう分かりましたよ!!!
「とりあえず、お給料分は頑張ります。けど、お給料以上の事になったら私、姫でも攻撃するんで、そこんところよろしくお願いしますね。」
「わかったわよ。まあ、確かに紫苑はなんかひ弱だし。」
実際、紅蓮の拘束を解けなかった紫苑は紅蓮の言葉はずばりその通りだった。紫苑の顔が、かあっ、と紅くなる。
「じゃ、胡桃後は頼むわよ。今日はもう二人とも上がんなさい。明日から、また色々忙しく使う予定だから、しっかり休んでて。」
そういうと、私達は放り出されるように紅蓮の部屋から出て行った。
宮廷・会議室
施錠付きの部屋で胡桃は紅蓮の世話役としての必要な仕事について、紫苑に話していた。
「基本、姫様は人の目の少なく、妖魔が活発になりやすい夜間に仕事をしているの。だから、私達は昼間、適当に仕事をするふりするのよ。
そうして、一般に普通の姫だと思わせることが私達の仕事。
噂は多々あるけど、本当のことは何もないでしょう?
実際、宮廷内の変な権力争いに巻き込まれないように姫様の下には、妖魔祓いの専門集団を置いていて、それで実際の正体を周りに知られないようにしているの。
姫様は指揮をしているだけ、という形で、実際姫様の行った数々の業績はその集団の功績ってことになっているの。」
「なんでそんなまわりくどいことしてるんですか?」
「妖魔避けだわね。妖魔が姫様を狙わないように、人の噂ではその集団がやっているようにすれば、姫さまへの害が少なくなる。妖魔祓い達は襲われることになるけどね。
姫様の持つ力は妖魔を祓えるけれど、もしその力が妖魔に与えられてしまったら・・・ってなるから、背に腹は変えられないわよね。まあ、妖魔祓いの集団も好きでやってる仕事だから異論はないし。
あと、これは姫様付き全員にいえることで、姫様付きのほとんどは霊力を持っているの。私もね。因みに、必要なら戦えるのよ。祓う力はないけど、護身用にね。
まあ、それはいいとして、つまり私達は妖魔に狙われる可能性が大きい。だから、姫様たちに守ってもらうことになるの。
そのかわり、妖魔をおびき出す仕事もあったりするんだけど・・」
「それって危ないじゃないですか!!」
「まあ、大丈夫よ。姫様は歴代でも飛びぬけて強いらしいから。
あなたからすれば、そのお給料の大きさが十二分にわかるでしょ。
むやみにそんな大きな大金には理由があるのよ。文句があれば、辞めることもできるけど?
その分、ご飯の量が少なくなるかもしれないけど。そうなったら、あなたの祖父母たちはあなたのことをおもって少ないご飯をさらに少なくして・・・」
「いえ!!一生懸命、やらせていただきます!!」
「そう、じゃあ、そういう風に姫様にご報告しておくわね。」
胡桃は満面の笑みを浮かべて、そのまま去っていった。
「あ・・・」
紫苑は、我ながらお給料¥に対して、がつがつしすぎなのを自覚しながら、とぼとぼと部屋を出て行った。因みに、お給料の半分は養ってもらって祖父母達に仕送りしている。
「まあ、給料はいいし、服の紅色も好きだし、待遇のよさも他とは比べられないくらい良いからなあ・・・」
そう思えば、割り切れなくもないわよね。
と思う紫苑だった。