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桜花姫伝  作者: 澪烙
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紅姫

とある時代、とある世界のお話。

宮殿の奥深くには真っ赤な長い髪、真っ赤な二つの瞳を持つ娘がいました。

その珍しい髪と目のためか、一般の人にその姿を目にするものはいませんでした。

そのため、ある人にはそれをうわさとするものも少なくはありませんでした。

その娘はその容貌から『紅姫』と畏怖の念をこめられて呼ばれていました。


噂はうわさ。

しかし、噂で片付けれるようなものでは到底なかったのです・・・。




         オープニング



宮殿の奥深く。侍女達からは”姫”と呼ばれる娘がいた。侍女たちでもほんの数人しかその御顔を拝見できない。給仕の者達もお部屋まで運んでもすだれによって御顔は見えない。すだれの下からは長い真っ赤の髪の毛しか分からない。しかし、その部屋の空気はきわめて高貴なもので、その不思議な空気は誰をも魅了した。

部屋には基本的に何も置いておらず、部屋の四隅には清めのお札がはってあるだけである。


今日の夕食を運びに給仕が”姫”の部屋に入った。給仕は姫に近いものしか着ることのできない紅色の衣服を身に着けている。髪は括らなければならないので青色の髪をポニーテールにしている。


「失礼します。ご夕食をお運びしました。」

「・・・・・・・・・・・・」

給仕は中に入って、すだれのところまで言ってそれを運んで一礼し、下がった。

「どうぞ、お召し上がりください。」

「・・・・・・・・・・・・」

給仕の言葉に特に答えることなく、”姫”は何もせずにいた。

給仕もそのために何も言うことがない。

「・・・・・・・・それでは失礼します。」

「・・・・・・・・・・・・」




給仕&傍仕えの侍女たちの控え室


この控え室に本日最後の仕事を終えた女性が帰ってきた。両手には全く手のつけた跡のない食膳が運ばれてきた。給仕の女性はそれを片付けてリラックスできるように他の侍女や給仕がいる場所に重い足取りで向かった。なにかと疲れたので、髪はポニーテールにしたままだった。


「せんぱーい、聞いてくださいよー・・・・・・姫様は今日も何も召し上がらず、何もお言いにならないし・・・・これで三日目・・・・・私”姫”様の給仕なんてしちゃいけないんじゃないの・・・・。先輩、助けてくださいよー!?どうすればいいんですかー!!!!!!!!!!!!」

「悩め悩めー、新米!!新米のくせに姫様の給仕なんてどういうことよー!自分で解決しなさい!」

新米給仕である紫苑しおんは、なんだか知らないうちに姫の給仕に当たっている。先輩の胡桃は髪の毛を解いて、背中までの茶色の髪をふわっと広げている。


さて、新米給仕の紫苑の悩みはこれだけではない。


まず、噂に聞く紅姫くれないひめが本当にいたということ。その時点でびっくり仰天。(さすがに心臓は止まりませんでしたけど!!あるていどなら信じれるという自信もありますから!!)

さらに、いきなり給仕・・・。確かに宮殿で働くために修行していた身なので、光栄なのだが・・・多少強引にこの役職についたというかなんと言うか・・・いわゆる詐欺??的なものにはまったとでも言おうか。・・・。


まさか、アンケートに答えただけで急に働くとは思わないでしょ??


そのまさかなんですよ。アンケートに答えたら、いきなり五級くらいぶっ飛んでこの役職に・・・シンデレラストーリー並ですよ、ほんと。


まあ、そこまではいいとして。(いいんかよ!)


働くのは別にいい。仕事だし。七級昇進したのは、ラッキーで片付けよう。給料がアップしたのも事実だから認めよう!!


でも、よりによって仕えるのが紅姫って・・・しかも噂によれば姫様がアンケートで抽選をしたって言うし・・・それならそうと少しぐらい口利いてくれたっていいじゃないのよ!!!!!!!(泣)


「まあまあ、そんなにあせらなくてもじきに口ぐらい利いてくれるんじゃないの??あ、・・・でもそれは少ないか・・・。」

「な、なんでなんですか」

若干、自暴自棄になって涙を流していた紫苑はそのまま先輩である胡桃の話に聞き入った。

「声聞いたことのある人ってほんの一握りだけっていうもの。実際、姫様の声を聞いたことのある人なんて私の身近にはいないもの。」

「・・・・・・・・・・誰かー、人との交流ができないこの役職とにぎやかなどっかの役職と変えてくれー、うちにはこの役職は合っていない・・・」

「はいはーい。うちじゃなくて私!!一人称にも気をつけなさい。」

「はーい。胡桃先輩は聞いたことあるんですか??私の三級上の侍女ですよね?」

「・・・・・はっきり言って・・」


ゴクリ・・・・・


「お世話してないから、声とかいう以前に顔もちゃんと見たことないわよ。」


ドコォォォォォォォォォォォッ!


唐突な答えに思いがけず、紫苑は盛大にこけてしまった。頭の上には大きなたんこぶができた。

「あらあら、大丈夫??」

「大丈夫なのかどうかは胡桃先輩のほうですよ。それでクビになったらどうするんですか!?」

「そうなったらそのときよっ!!」

(この先輩・・・・・どうしようもなくつよいー)


「そういえば、あんた今日姫からなんか指令があったんじゃないの?」

「???なんにも聞いてないんですけど・・・」

「うーん。あらそう。・・・・へー・・・」

「え、なんかまずいんですか??」


胡桃はなにか見定めるように紫苑を見てから、顎に手をあてて何か考えていた。


「ちゃんと自分の部屋の机の一番目の引き出し空けておいてある??」

「??はい。ちゃんと空けておいて、開かないようにしていますけど・・・・それがどうかしたんですか??」

「あーなるほどなるほど、ちゃんと空けてあるのねー、ってなんで開かないようにしているのよ!!」

「え?だって、同室の先輩に『そこ開いたらだめだからね!』って言われたんですけど・・」

「はあー??何言ってんのよ。一番上は指令文書や連絡などが入るところなのよ!!!!!!」

「エーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!それってやばいじゃないですか!!!!!!」

「て言ってる前に早く確認しに行く!!」

「は、はいーー!!すいませーーん!!」


タッタッタッタッタ・・・・


紫苑はあわてふためき、よろめきながらダッシュで走っていった。もちろん、自分の部屋にあるであろうその書類を確かめるためだ。

「ドジッコ、いじめられっこ、あほっこ??最後のはちょっと違うかな。・・・うーん・・・」




紫苑の同居部屋


急いで自分の部屋に戻った紫苑は机の一番上の引き出しを見た。中には書類が溜まりまくってる。紫苑はそれを見た瞬間に体中の血の気がサーッと引いていくのが感じた。

(やばいやばい。・・・これは明日の夜までの書類・・・良かったほとんどが今週末までだー・・・いやいや、問題は紅姫の・・・ってやっぱりあったー!!!!!)

紅姫の書類は紙自体が紅く、すぐにそれだと分かった。

(はははーーーー、期限今日だー・・・・・・、トホホ・・・)

とりあえず、ぱっと目に入った数字が今日だった。

(クビだーー・・・)

そう、思いながらもとりあえず書類に目を通した。

「えー、何々、『華の月の二十七日、仕事が終わった後、霊峰山に花を取りに行ってください。


追伸:もちろん、これからの仕事に影響するから頑張ってね            紅姫』


・・・・これからの仕事以前に現在の仕事すらきちんとできてませんよーっだ・・・ってく、紅姫ーーーー!?」


「ちょっと、黙ってくれない?もう寝るんだから。     ほんとにこれだから新米は・・・」

「あ、すいません。セツナ先輩・・」

(まだ間に合う!!・・・よね?!」

紙を持ったまま紫苑は急いで部屋を抜けて、霊峰山に向かった。

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