でも→だって→そうかしら
ちょっといつもより長いです。
タイトルを間違えるというミスをしてしまいました。。
前の前の前の…くらいの職場で年度末に大掃除をしたときのこと。
自分のブースはあっさりと終わったので、暇になって、しかたないから誰かのところでも手伝うかな〜と見まわしていたら、主任のデスク周りが散らかりすぎていたらしく、ぜんぜん終わりそうにないのが目についた。
ああやっぱり、と思ってニヤニヤしながら、
「よければお手伝いしますよー」
とふきんを持って声をかけてみると、主任は、あー、とか、うー、とか唸ってしばらく迷っていたが、自分が終わらないと後の打ち上げが遅れることに気がついたらしく、こんな小娘に頼る踏ん切りがついたようだった。
「それじゃお願いしようかな?気がきくねえ。助かるよ」
それじゃ拭いてきますね、と断わって、どこからしようかな、と棚の方を見ると、開きっ放しの扉の奥に、一対のペアのくまのぬいぐるみがちょこんと寄り添って座っているのを見つけてしまった。
主任はいい歳した男性だ。しかも、どちらかといえばむさい系だ。どうみてもぬいぐるみを可愛がるようには見えない。
しかも、くまちゃんだ。ご存じない方のために説明すると、くまは愛情のシンボルとされることがあって、結婚式などに行くと、くまのペアのぬいぐるみは、ミッキー&ミニーと並んでよく見かけるアイテムの一つだ。嘘だと思うなら、○ィズニーのブラザーベアというアニメを観るといい。……いや、ウエディングベアの由来は○ィズニーのとは関係ないのかもしれないけれど。
これはもしかして、奥さまとの思い出の品かなー?ラブラブな話が聞けるかも!と思って
「何ですか、そのぬいぐるみはー(笑)」
と聞いてしまった。若さゆえの過ち。若さゆえの残酷さ。
主任は寂しそうに笑った。
「結婚前に付き合っていた人の思い出なんだよ」
聞いたことをちょっぴり後悔した。
ウチには置いておけないとのことだ。
そりゃそうだ。私が奥さまだったら、そんなものをうっかり見つけちゃったら、ぜんぜん気にしないよ、といいつつ、めちゃめちゃ気にしてしまうだろう。
今の奥さまは確か音大出のお嬢様だったが、ぬいぐるみを一緒に持ち合うまでの仲だった彼女とはどうして別れてしまったのだろう。
そう疑問に思っていたら、主任がぽつり、と言った。
「相手が自分と同じように考えると思っちゃうとダメなんだよ」
主任は最初、彼女が喜ぶ(であろう)ことを、楽しい(であろう)ことをいろいろ計画したり、プレゼントしたりしていたそうだ。でも、よくよく考えてみると、それは全部自分自身が喜ぶものでありことだったのであって、彼女がどう思うか、なんてことはちっとも考えていなかったのだ。
案の定、彼女は思ったほど喜んではくれなかった。
にこにこしてはいても、作り笑いばかり。
そして主任は、せっかくいろいろとしてやったのに思った通りに喜んでくれない彼女に対して、なんて薄情な女なんだ、と腹を立てるようになってしまったのだ。
最初はそれでもなんとか我慢していたが、いつまでも尽くしてやっても報われないことにだんだんイライラが抑えられなくなって、何でもないことですぐに不機嫌になるようになった。
「そうしてこじらせちゃって、別れるまでになったんだよ」
そんなふうなことを言って、主任は私に、○さんも気をつけた方がいいよ、と苦笑いした。
わたしはそんな事ないけどなあ、と思いつつも、
「ハイ!気をつけます」
と殊勝ぽく言ってみた。
それ以来、その言葉はずっと頭の片隅においてある。
あれからもう干支がひとまわり以上経って、職場も変わって、主任とは年賀状くらいしかやりとりしていない。
年に一度のそのお手紙には、奥さまのほかに主任にそっくりなお嬢ちゃんたちの写真がハートの枠に飾られて、家族写真は皆にこにことされているから、1回目の教訓はきっと生かされているのだろう。
◇◇◇
先日、わたしのところにも、とうとう☆1さんが現れた。
軒並み皆様の作品に☆1をつけていき、ランキング最下位付近に昔の作品たちをさらさせ、作者のやる気をがっつり下げていく愉快犯だ。
あ、でも、ハイファンタジーやエッセイみたいな100位でも評価がそこそこ高いジャンルでは、ランキングには出ないと思う。
彼、あるいは彼女の心境は分からないが、たぶん、
お友だち同士で評価しあってランキングに載るなんて良くない!てか、ずるぅい!
ボク/わたしだって☆5が欲しいのに(?)
よし、正当な評価を下してやろう。
誰にも知られないで評価するなんて
ボク/わたしって、ひょっとして神?
何だかチョー楽しい!
ボク/わたし、TUEEE !!!!!!!!
といったところだろうか。
注)作者による怒りの偏見が入っています。
何も零細な、本気で作家を狙ってるわけでもない人たちをそうやって落ち込ませなくたっていいじゃない、と思うのだが、そういうことをする人たちには、ひょっとして、自分の好きな感じの作品ばかりでランキングが埋め尽くされて欲しい……という願望でもあるのかもしれない。それ以外は、リア充もヘボ作家もみんな出ていけ、というか。
なんだかな〜と思う。
君の優しさはどこへ行ったのか。
どこかで、誰かが、小説家になろうの評価システムにAIを取り入れて、タイトルとあらすじだけで内容を評価するものを作った、という記事を読んだ気がする。
結構当たっているんだそうだ。
わたしに☆1をつけたのもそうかな?と思って、(AIなら間違うことだってあるだろうし、それならわたしの書いたものがたった2ptでも、駄作と決まったわけじゃないもんねー、という涙ぐましい意地をかけて)、わざとタイトルとあらすじだけで、文章をほぼ------だけにしたものを公開してみた。
それにはさすがに評価がつかなかったので、AIもちゃんと中身があるかどうかくらいは判定しているのか、やっぱり人が一つずつ☆を押して評価しているのかのどちらかのようだ。
誰かが手作業で☆を付けて回っているんだとしたら、それはそれで暇なことだと思う。
(追記)
どうやら☆1をつける皆様のなかには、本当に、黒い意図はなく、つけていらっしゃる方もいるようでした。☆1は無しよりいい、という考えらしいです。
これにはつけて構いませんが、特に詩によくみられるような、作品というよりは作者の心情そのもののようなものにはつけない方が無難と思います。なんだか人生の通知表に1をつけられたようで、気分が沈んでしまいますから。
◇◇◇
人間関係はときに、とても疲れる。
相手が身内ならなおさらだ。
まあ見ず知らずなら適当でいいかというとそうでもなくて、そういう人相手の場合は、相手が実はおかしな人で、何かのきっかけで事件でも起こしちゃったらどうしよ、という不安があるわけで、どちらにしてもかなり面倒なことに変わりはない。
ふだん、何もしなければ他の人とぶつかるようなことは起こらない。けれど、特に何か、意見が衝突することがあると、互いに自分の考えが正しいと思って行動するから大変だ。
あるいは片方がちゃんと譲ってるのに、そういうのを察する感度が低いのか、主張をやめないとか。
大変だなあ、と思う。
◇◇◇
前の前の……何個か前の会社のチーフは、大人だった。いや、大人なのはチーフじゃなくて、その奥さまだ。
チーフ本人は、以前に、取引先の麗しい美人担当者が若手の清潔感溢れる女子社員を引きつれて、ちょっとした小言というか注文をつけにいらしたときに、終わった頃合いを見て、どうなりました?と様子を見にいくと、チーフは上機嫌になっていて、
「そのイスのところに、3人も並んじゃってね」
にこにこっとしながら怒られちゃったよ、と嬉しそうに言っていた。結局要求を全部のんじゃったみたいだ。仕事は大変になった。
そのチーフが、なんのタイミングかは忘れたが、
「最近、うちの奥さんが、『そうかしら?』と言うようになったんだよ」
と言った。
結婚したてのころは、チーフが何か言って、奥さんが違うことを考えた場合、
『でも』
から始まったのだそうだ。
用例としては、
「ねえ、ルンバの掃除機、買ってみようよ」
「でも、うちには掃除機はもうあるんだし、うちみたいな狭いアパートにはこれ以上はモノは置けないわ」
とか、
「高校の同期が寿司屋を開いて儲かってるらしいよ。僕も脱サラして、寿司屋か女子がいっぱい来そうなカフェでも開こうかなあ」
「えっ!でも、あなた、今だって家事は何にもできないじゃないの?」
(ちょっとちょっと、突然何を言い出すの)
とかである。
この例だとたいして波風は立たなそうだが、新生活に備えて家具を選ぶシーンなんかで、
「この黒いシックなテーブルにしようよ」
「でもあなたは昼間いないんだから、こっちの明るい木のテーブルがいいな」
なんかだと、なかなか互いに新生活への夢があるのですり合わせが難しい。そうそう買い直すものでもないし。
あるいは、
「僕はこの時間はアニメがみたい」
「でも、わたしはバラエティ旅番組がみたいのよ」
なんかもトラブルになりがちだ。そんなことがあったのかまでは聞いてないから分からないけれど。
でも、から始まると、ちょっと否定されたような気分になるので、積み重なるとストレスになるかもしれない。当時は喧嘩もよくしていたそうだ。
何年か経つと、それが、
『だって』
に変わったらしい。
少しだけマイルドになり、否定感は少ない気がする。
「今度の休みは離島に行こうか」
「んー、無理じゃない?だって、まだ飛行機に乗るのは、こどもがぐずったりするから大変よ」
「クルマを新しくしたいんだけど、いいかな」
「まだいいんじゃない?だってまだ3年しか乗ってないわよ?」
そして、
『そうかしら?』
に至る。
「最近の若い人は、何考えてるのか。定時になると仕事が残っていてもさっさと帰っちゃうんだ。あれじゃ、だめだよね」
「そうかしら?今はイクメンとかっていうじゃない?それじゃないのかしら」
「娘の相手ってどんな奴なんだ!どうせロクでもない奴に違いない!」
「まあまあ。そうかしら。今度の日曜に来ますから、ちゃんとお迎えしてあげてくださいね」
まず、やんわりと受け止める。否定はしない。そしてその次に意見なり、これだけは主張しないといけない大事なことを言うのである。これだと、ぷんかぷんか怒ってる感情を逆撫でしないで済むのでいいと思う。
『そう?』
『そうかなあ?』
でもありかもしれない。
ちなみに、奥さまとも話す機会があったが、チーフは年甲斐もなく、その日はわざわざ遠くまで買い出しに行ったりして逃げ回っていたので、別の日にあらためて顔合わせしたのだそうだ。
大事な処世術を教わったと思うので、ぜひ実践してみようと思う。
例えば、こんな感じで。
「アンタのエッセイはあんまり面白くないよ!」
「そうかなあ?」