休日のひとつの過ごし方
ある日帰りで行ける山に、頂上に簡素な木のテーブルとベンチがあって、小さな茶屋が立っているところがある。
暑いなかを汗をかきながら登りきると、見晴らしのいい広場に出る。
いつもそれほど混んでいない低山なので、人でごった返すようなこともなく、じっとしていると蝉がじわじわ鳴いているのが聞こえてきて、それに混ざって何か分からない虫たちの音が聞こえる。
ときおり風が高木の枝葉を揺らしながら、さあっと通り過ぎていく。
こうした音を聴きながら目を閉じたり、緑の葉っぱに陽射しが透けているのを静かに眺めたりしていると、自然のなかに一体となっていくような心地がして、限りなく解放されていく。
身体のなかを風が涼しく通り過ぎていく。
テーブルが空いていたら座ってみることにしている。ここのテーブルは誰でも使えて、茶屋の客でなくても座っていいことになっている。ふうと息を吐きながら、持ってきた水筒の水をひとくち飲む。こういう時の水は甘くておいしい。
そうしてしばらく休んでから、茶屋に行く。焼きおにぎりに山菜汁、きのこの汁などがある。焼きおにぎりと、きのこ汁が残っていたらそれをお願いすることにしている。混んでいなければ、だいたいいつも少し待つだけで出てくる。
お盆を持ってさっきのテーブルに戻り、持ってきたおにぎりやハムサンドとともにそれらを楽しむ。三つ葉の爽やかな香りに、赤だしの汁がよく合う。これだけのために、この山に登りにくるというファンもいるという。それも頷けるくらいにおいしい。こればかりは、皆でワイワイとしながら食べるよりは、一人でしみじみ味わいながら食したいと思う。
休憩が済んだら、あとは下山するだけだ。下りは膝にくるので、小さく慎重に降りていく。
途中に蝶が飛んでいたり、視界がいい尾根があって、日焼けを気にしながらも景色を楽しんで降りていく。
そうしていけば、下界のいろいろな現実のこともいったんリセットして、新しい気分になって頑張れるような気がする。
それがちょっとした、コロナになる前にはあった休日の楽しみ。
早くまた再開できるといいなと思う。