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追放しちゃう系お嬢様奮闘記(序)

いつもの勢いで描いた短編。

最近、小説家になろうの異世界恋愛に妙にハマってて、そこから今回の短編を思いつきました。

ほとんど会話らしいものもなく、ほぼ主観語りです。


「やばいでございますわっっっ!!」


 ……おっと失礼、淑女にあるまじき言葉を発してしまいました。お見苦しいところをお見せして大変申し訳ありません。


 私の名前はとある男爵家に生まれた娘でございます。


 自分で言うのも妙な話ですが、私は本当に両親の血を引いているのか疑わしいくらいに見た目がよろしい。いえ、自分で言うと明らかに単なる自惚れのロクデナシに聞こえますでしょうが、今は我慢して頂きたい。後ほどコレについても説明します。


 さて、こんな私も今年で十六歳。


 この王国には、国が経営する学校が存在する。単なる教育の場ではなく、将来は国を背負って立つ貴族の少年少女たちの社交場としての意味合いもある。つまりは、この学校での立ち振る舞いによって、今後の領地の栄達も左右する程の重要なイベントなのである。


 そうイベントである。


 実は私、前世の記憶があります。


 私の前世は『チキュウ』と呼ばれる世界に住む一人の女性だった。今世の社会と比べるのも妙な話だが、特別に地位があったりお金があったりはしなかったが、それでもそれなりに自由を謳歌できる身分の家庭に産まれた。


 前世の家族はどうでも良い。いや、どうでも良いと言い切るには大切な人達だった。暖かな両親がいて仲の良い友達がいて、辛いこともあったが楽しい日々を送っていた。……残念ながら、私は事故で不運にも命を落としてしまったが、今はそれどころではない。


 前世の私は、世間一般で言うゲーム大好き人間――いわゆる『ヲタク』という奴であった。次元の違う世界にはまり込んでいた。別に、だからといってリアルの交友関係は普通にあったので勘違いしないで頂きたい。


 問題なのは、私が事故で死ぬ直前までプレイしていたとあるゲームである。丁度、私が死ぬ前日に全てのエンディングを迎え、晴れやかな気持ちでいたところでリアルにバッドエンドを迎えたのである。


 ちょっと愉快? やかましいでございますわ! 


 ごほん、ちょっと前世の言葉遣いが混ざりました。


 話を戻しましょう。


 何を隠そう、私の今世は、前世でクリアしたあのゲームの世界であったのです。ゲームの世界に転生するというのは中々に希有な体験でしょう。


 とはいっても、この事実を認識したのは、つい先日。学校に入学する一ヶ月前ほど。


 あの日は普通に晴れた日に、入学前の緊張を解そうと散歩をしていたときのことです。


 道を歩いていたらこけけたのです。それはもう、何もないところでツルッと。その拍子に、地面に頭を些か強く打ち付けたのです。


 するとどうでしょう。コレまでせき止められていた水が一気に流れ込むように、私の頭の中に前世の記憶が入り込んできたのです。短かった人生とは言え、それでも人間一人の記憶が流れ込めばただでは済みません。


 結果、私は頭を打ち付けた衝撃というよりも記憶の奔流に飲み込まれて意識を失いました。


 目が覚めたのは翌日。瞼を開くと涙を目に溜めた今世の両親であった。残念ながら、私はこの時、前世と今世の記憶が混濁しまともに反応をすることができなかった。手や足を動かすことさえままならなかった。


 けれども、半月ほど経てば頭の整理も付きどうにか元の状態に戻ることが出来た。


 だがしかし、私はある重要な事実に気が付いてしまった。


 己がゲームの世界――あるいは物語ものがたりに酷似した世界に転生したことは理解できた。

 それは――我が身の破滅を予見したにも等しかった。

 

 ここで、私がプレイしたゲームの内容を説明しましょう。


 主人公は侯爵家の一人娘。


 幼少の頃よりこの国の後継者である王子の婚約者に命じられる。そして彼女は将来は国の頂点に立つ者の伴侶となるため、幼いながらも多くの厳しい教育を課せられていく。


 その結果、主人公はどこに出しても恥じない立派な王子の婚約者として成長していく。けれども、そのあまりにも優秀な能力は、王子に嫉妬心を抱かせることになる。


 やがて主人公と王子は、国が運営する貴族の学校に入学することになる。


 そこで王子は、一人の女性に出会う。


 彼女は冴えない男爵の娘でありながら、可憐で美しい美貌を持っていだ。その男爵の娘と触れ合っていくうち、王子は心惹かれついには婚約者がいる身でありながらも女性に思いを告げて恋仲になる。


 そのまま月日が経ち、学校の卒業式。


 あろうことか、王子は卒業式の場で主人公に対して一方的な婚約破棄を宣言。真実の愛を見つけたとのたまい、恋仲であった男爵家の娘とのあらたな婚約を結ぶと発表したのだ。


 ――実は、ここまでの展開でも、ゲームの中ではまだまだ中盤。


 婚約破棄された後、学校生活で接してきたとある男子生徒に誘われて、他国に赴くことになる。何を隠そう、男子生徒は彼女が赴いた国の重鎮の家系。王族の末席であったり、あるいは将軍の家系であったりと。彼女はそこで、自分を誘ってくれた男子生徒――いわゆる『攻略対象』と結ばれ、幸せな人生を送ることになる。

 

 彼女が誰についていくかは、学校生活での選択肢で変化する。ありていにいえば、好感度が一番高い相手に誘われる形だ。


 それはいい。彼女が――主人公になる分には文句はない。王子の婚約者として相応しいようにと、血の滲むような努力をしてきたのだ。優雅な外見とは裏腹に、彼女に施された教育は相当という言葉では言い表せないだろう。何事もできて当たり前というスタンス。できなければ罵詈雑言に体罰など、それこそ幼いころであれば日常的に与えられてきた。


 おそらく、並の者では半ばで心を壊していても不思議ではない。彼女だからこそ、乗り越えることが出来たのだ。


 だから絶対に報われなければならない。彼女が幸せになれなければ嘘だ。


 問題は、そんな彼女に婚約破棄を叩き付け、男爵令嬢にうつつを抜かした王子の方である。


 主人公の有能さを認めていた一部貴族達は、婚約破棄の一件で王子への不満を大きく募らせていく。


 その後、王子は国の政策に大きく関わっていくのだが、失態を大きく繰り返すことになる。実のところ、王子の浅はかさは以前からも貴族の間では囁かれていたのだが、そこは有能すぎる婚約者の存在もあり、彼女がいれば問題ないだろうと高を括っていたのだ。


 相手が王子であるため、失態を犯しても誰も強く進言することが出来ず。唯一口がきけそうな新たな婚約者は、コレまで王族の一員になるための教育などまるで受けてこなかった男爵令嬢だ。


 だが、残念ながら王子以外には跡継ぎが存在せず、王子の起こす問題からくる心労で、ついに王が倒れる。


 そこからはもう語るまでもない。


 王子が後を継いだ王国からは、王子に見切りをつけた民や貴族達が流出し、どんどん国力が減っていくことになる。最終的には内乱が起こり、王子と男爵令嬢はその戦火によって命を落とすことになるのである。 


 ちなみに、この当たりのシナリオはダイジェスト的にゲームの中で流れていく。主人公からしてみれば、もはや単なる他国で他人の出来事であるから仕方が無いだろう。


 けれども、私にとっては死活問題である。



 なぜなら、その王子の新たな婚約者となり、最終的に戦火で死ぬことになる男爵令嬢こそが私なのだ。



「だからやべぇんですって!」


 改めて思い出した命の危機に、いつの間にか淑女の言葉をかなぐり捨てていたが、それどころではない。 


 最終的にちらっと死んでしまった事実がダイジェストで知らされてしまう程度の脇役であろうとも、当人にとってはまさに死活問題。まさにデェッド・オア・ラァイブ。


 そりゃぁ、ゲームをプレイしていた身としては主人公に感情移入していましたよ。あの脳みそお花畑絶対に泣かすって思ってましたよ。むしろ、馬鹿王子と一緒に死んだって分かった瞬間は「へっ、ざまぁ」とか吐き捨てましたよ。


 だれがそのざまぁされる側のお嬢様に転生するなんて思いますか! あの頃の自分を殴り飛ばしたい! 


 だが、自分が出しゃばらず主人公と王子の婚約を継続させた場合を考える。


 そうなると、主人公に待ち受けるのは問題ある王子との結婚。コレは私が許せない。あんな馬鹿と一生を添い遂げる事になるのは、天が許しても私が許さない。国は安泰だろうが、それよりも主人公の安泰の方が大事だ。

 

 かといって、このまま何もせずにいれば、この国と私がデッドエンド。二度も若い身空で命を失うなどゴメンである。


 さらに始末の悪いことに、前世の記憶を取り戻した時期があまりにも遅すぎた。学校に入学する直前。予めの準備も何もなく、いきなりのスタートである。


 あえて言おう。私の頭の出来は決して良いとは言えない。多少なりとも記憶力には自信はあるが、人並みである。加えて、設定通り生家の男爵家はパッとせずさほど教育を受けてこなかった。むしろ、私の容姿を利用して有力貴族に売り込もうと目論んでいる程度には普通にクズな貴族だ。ちなみに、実家も内乱時に崩壊して一族が全滅する予定。


 八方塞がりこの上ない。


 それでも、だ。


 私の頭の中には、前世でやり込んだゲームの記憶がある。主要な登場人物に関する、当人すら知り得ない情報がある。そして、学校内で起こりうる大きな出来事を知っているのだ。


 繰り返しになるが、私は若い身で死ぬのはもうごめんだ。今世の人生では、腰が曲がってヨボヨボのおばあちゃんになるまで生き、家族や孫たちに囲まれて大往生をすることが目標だ。


 そのためには、主人公を王子と婚約破棄させた上でこの国にとどまっていただき、攻略対象の誰かと結ばれて幸せを掴んでもらうしかない。そのついでに、私は王子との婚約をせずに私は私なりの幸せを掴むしかない。


 はっきり言ってシナリオも何もない。おそらく、途中から私の前世での記憶など役に立たなくなる場面が出てくるに違いない。


 でも、躊躇っている余裕はない。


 全ては私の第二の人生を幸せに送るために。


「やってやろうじゃないのっ──ですわ!」


 

残念ながら続きません。



ざっくり人物紹介


──男爵令嬢──


とある乙女ゲームの脇役。

婚約者のいる王子様に見染められのが運の尽き。

可憐な美貌と細い体躯に不釣り合いな豊かな胸を持っているが、頭はお花畑。

貴族としての教育はほとんど受けておらず、礼儀作法も必要最低限しか学んでいない。

多分、王子様と婚約できた瞬間が人生の絶頂。あとは転落一途。



──男爵令嬢の中の人──


どこにでもいるような少女。

若い美空で命を散らした不幸な前世を持ち、二度目の人生ではバッドエンドまっしぐらと追い討ちをかけられている。

知能身体能力ともに平凡だが、頭の回転は早くツッコミの切れ味は誰にも負けない。

転生して唯一良かったことは、前世では平凡だった容姿が、今世でトランジスタグラマーになったこと。

おっぱいが大きくなったことを誰よりも喜んでいる。



──ゲームの主人公


ハイスペック女子。

元々才能が満ち溢れている上に、幼少の頃より王子の婚約者として超スパルタ教育を受けていたため、ゲーム内で文武共に最高クラスの能力を誇っている。

ただ、それまでの教育の影響で感情を表に出すことが極端に苦手になり、それ故に敬遠されがち。

学校に通い始めたことで、己に負けない能力を持つ男子生徒(攻略対象)に触れ合うことにより、感情を出すことを思い出し始める。

常に無表情でクールなのだが、ふとした瞬間に浮かべる笑みで攻略対象はノックアウトされる。

あと、おっぱいは男爵令嬢に負けず劣らずの豊かさ。



──王子──


勉強はできるが頭は悪い典型タイプ。

能力はあるが自尊心が高く、それ故に婚約者である主人公を認められずに性格が歪んでいる。

外面はいいが、自分に酔いしれて他者を過小評価しがちなアホ。

これで性格が良かったら普通に良い王様に慣れた、作中で屈指の残念男。




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― 新着の感想 ―
[一言] 流石のおっぱい。これはゲーム主人公と今作主人公を持っていく真主人公がいるな?(名推理)
[一言] >残念ながら王子以外には跡継ぎが存在せず 予備である公爵家用意してなかったのか それでバカを王位に就けるしかなくなったなら滅亡も止む無し
[一言] 他の作品完結させてあら書けばいいのに。 カンナはもう続き更新しないのかな? 一番面白くて続きが気になるのはエタってるのは「なろう」ではあるあるですね。
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