第8章 禁楼の囚人
禁楼の北奥深くに建てられたその収容施設は以前に、戦争で敗戦国となった国々の女達が奴隷として最初に来る場所であった。
そこで適応能力をテストされ、それから奴隷として配属される場所が決まるのだ。
多くの女達はそのまま禁楼に残され、皇帝シヴァの多くの側女達に仕える。
しかし、その建物は古くなるとやがて罪人や問題のある女奴隷達を収容する監獄となった。
陽王朝の一番北に位置するためとても寒く、冬になると鉄格子の内側にさえ雪が舞い落ちる。
そしてそれは、そんな雪の華が降る夜だった。
ミツキは施設の実験室と思われる部屋の中央に置かれた簡素なベットの横に座り込み、囚人の様に鎖で両足を繋がれていた。
実験室の外ではいつもの様に誰とも知れない女達の声がする。
「本当にこんな実験に意味があるのかしら。まだ幼いのに、可哀想に…」
「シヴァ皇帝はいつになったら恩赦を出してくれるのかしら…」
ここに来て、一体どれくらいの月日が流れたのだろう。
無責任な慈悲の言葉を嘘ぶく陽王朝の魔法学者、科学者達。
彼女達はそう言いながら、ありとあらゆる人体実験をミツキに施した。
それはミツキの中に眠るとされる力を呼び起こすためであった様だ。
「絶対に、絶対にこの力を隠し通す…」
ミツキは必死にその力を他人に示さない事に、文字通り心血を注いだ。
もしただの子供だと解ればいつか外に放り出されるかもしれない。そうミツキはどこかで願っていたのかもしれない。
またあの頃の様に、ハヅキや七袖と暮らせるかもしれない。
しかしミツキはその願いを諦めねばならない。
もし自分が逃げれば、今度はハヅキが狙われるだろう。
ハヅキがここに万が一にでも辿り着き捕らえられてしまえば、自分と同じ目に合うに違いない。
そう気づいた時、ミツキは夢の中で妹や七袖の名前を呼ぶ事を止めた。
「私は救われなくてもいい。」そう思うのは、これが初めてではないのだから。
あの日、自分をおいて逃げるハヅキと七袖の背中を見つめながら、ハヅキは安堵したのだ。
これで2人は幸せに暮らせるのだと。
彼女達はもう苦しみや悲しみのない世界に逃れたのだ。
そう思うと、取り残されてしまった自分も少しだけ幸せな気分を味わえた。
実際にその思いが、今まで彼女を生かして来たのだから。
散々今までアドバイスを頂きまして、いつもパソコンで「小説家になろう」をよく見てるSyには中々理解するのに時間がかかったのですが、行の始めに「 」一字開けるのをやっとやりました(汗)。本当日本語頑張ります。今回はちゃんと書けてますでしょうか。。書式など疎いSyですが少しづつ改善して行きたいと思います。以前のもの少しづつ直していきます!これからもどうぞ応援よろしくお願い致します。そしてアドバイスを頂いた皆様本当にありがとうございました。