エピローグ
時は過ぎ、ここは聖都のある一角に構える灰色の教団施設。
「七袖、準備はいいかい?君の改名の儀式と共に、眷属契約が同時に行われる。」
七袖は灰色の司教の前に跪いている。その隣にバルキエルの姿も見える。
「はい、司教様。」と七袖の決意は堅い。
灰色の教団に入団してからと言うもの、七袖は自身の力の限界を感じていた。
ついに聖学院時代に叶えられなかった天使との眷属契約を改名と共に行うことを決めたのだ。
これは七袖がマギアにいた頃から常に考えていたことでもあった。
よりカナン王のお役に立つために。
七袖の国王への忠誠は自身に与えられた名前の価値を凌いでいた。
そしてその名を捨てる事は、七袖にとって過去と故郷を捨て去る上で重要な事であった。
あの遠い東洋の小国ではなく、正式にこの王国の子となる。
この儀式は七袖にとって生まれ変わるに等しいものだ。
「大天使ラミエルは眷属契約に君の記憶を代償に要求するだろう。おそらくその能力に関係するためだろうね。大変興味深い、できる事ならぜひ研究して見たいなあ。でも大天使様を試験体なんかにすればどんなお仕置きが待っているのやら…」と灰色の司教は話を大きく脱線し始める。
すると、七袖とバルキエルは気まずそうに立ち上がり、司教の独り言が終わるのを待った。
「まーた、司教様の悪い癖だ…。記憶ねえ…、まあ、どうって事ないぜ、相棒!そのために俺がいるんだからよっ。」とバルキエルがニカっと笑い七袖の背中をバンバンと叩く。
「触るな、グズが移る。」と七袖は冷たくあしらう。
七袖は灰色の教団へ入団後、不本意にもバルキエルと巡回修道士のパートナーを組まされている。
断固としてバルキエルとのパートナー成立に反対した七袖に、教団内で未だ発言力がある訳もなく…。
当時のオングの嬉しそうな顔がチラつく。
そして古来より、大天使ラミエルの眷属契約の条件は眷属候補生からの記憶の一部の譲渡である。
大きな代償を伴うため、ラミエルの眷属の能力は契約前より飛躍的に向上すると言われている。
「コホン、では儀式の続きを。」と灰色の司教は漸く本題に戻った。
「司教様、この七袖。この王国、そしてあなたに仕えるため、この名を捨てる準備はできております!」
「堅いなあ、七袖は。」と司教は溜息をついた。
「僕は君の名前が好きだよ、七袖。改名してラミエルの眷属になっても、君は七袖のままである事を忘れてはいけない。」と司教は優しく七袖に言った。
そして七袖はバルキエルと共に、灰色の司教の前に再び跪いた。
皆様、第4部「焦燥と月下のマギア 奴隷王朝の乙女」を読んでくださりありがとうございました。これからも続けてコツコツと不定期で書き進めていこうと思います。応援どうぞよろしくお願いいたします。




