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焦燥と月下のマギア(下) 奴隷王朝の乙女  作者: Sy
槍の王 第4部
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第21章 再会

 そこは深々(しんしん)と静かに雪の降り積もる雪殺せっさの中庭。


 デセウスは七袖ナナソデを横たえるとそのまま姿を消した。あるじの戦いに舞い戻るためである。


 そして気を失っている間、七袖は短い夢を見た。


 それは遠いあの日、七袖が両親と双子と幸せに暮らしていたあの頃。


 故郷の国。


 七袖は縁側で寝そべりながら母の膝に頬をつけ外を眺めていた。


「あらあら、今日は甘えん坊さんね。」


 そう言って母は七袖の伸び始めた美しい黒髪を撫でた。


 この愛しい時間がいつまでも無くならないように願った私がいけなかったのだろうか。


 七袖は夢と現実の狭間で、頬を伝う涙を拭う。


 このような安らぎが現実ではありえない事を、七袖はすぐに気づいてしまったのだ。


「あーあ。いい夢なら、幾らでも見させてあげるのに。」


 縁側の向こうに見知らぬ人影が見えた。


「誰だ、お前は。」


「自己紹介には早いさ、七袖。」


 七袖はその見知らぬ存在が男か女かを判別するのさえ難しいことに気づいた。


 その存在はどこか懐かしいようで、そして神々(こうごう)しくもあった。


「力が欲しいかい?」


「ああ、欲しい。母を、皆を護る力が欲しい。」


 するとその存在は悲しげに微笑んだ。


「ごめんよ、君の母上はもう遅い。しかしその願い、半分は叶えてあげよう。」


 七袖は夢の終わりが近いことに気づいた。


 よく分からない存在よりも、もう少しだけ母の姿を見ようと振り返った。


「忘れないで。僕は君がいい夢を見るために、どんなことでもしよう。」


「幻では足りない。」七袖は母の微笑む顔を眺めながら言った。


「ふふ、君は賢いね。七袖。」



ーーーーーー



 七袖は自分の頬にそっと触れた手の温もりで目を醒した。


「うっ…こ、ここは…?」


 七袖は麻布を纏った小さな少女の膝の上に頭を乗せ、雪の上に横たわっていることに気づいた。


「ナナちゃん、逢いたかった。」


 少女は涙を流して言った。


「ミツキ!?」


 七袖はガバッと起き上がると、か細い少女の身体を抱きしめた。


「ミツキ…良かった無事で。」


 七袖はそっとミツキの身体を離すと彼女に向かって頭を下げた。


「ミツキ、すまぬ。私が弱かったばかりに、お前をこんなところに置いて行ってしまった。どんな償いでもお前に…」


 ミツキはそっと七袖の口元に手を置くと静かに微笑んだ。


「いいの、ナナちゃん。全部もういいの。これは私が望んだことだもの。」


 七袖がよく見ると、少女の肌には無数の傷跡と痣があった。


 その傷は七袖の感情をさらにたかぶらせた。


「そんな顔しないで、ナナちゃん。」とミツキはまた笑う。


 そして七袖はある男が2人の側にいることに気づいた。


「あ、あなたは…」


「間に合ったようですね。」男は頼もしい声で言った。


 そこには、白い衣を纏った褐色の肌をした長身の男が立っている。


「私を助けてくれたの。」とミツキが言った。


「パウロ様…来てくださったのですね。」と七袖は驚きの声をあげた。


「この緊急事態、私が馳せ参じない訳には参りません。私もあなた方を探す途中で彼女と遭遇したのです。」とパウロは微笑んだ。


 一同のミツキ奪取の計画に気付いたシヴァの動向を受け、パウロは自身も参戦しなければならない事を悟った。


 だが、禁楼への潜入と雪殺までの移動に時間を取られてしまったのだ。


「それにあなた方に何かあれば、カナン王から叱られてしまいます。」とパウロは真顔を作った。


「ナナちゃん、立てる?そろそろ行かなくちゃ。」とミツキが言った。


 そしてパウロが七袖の手を取る。


「さあ、参りましょう。」

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