第20章 決戦・VSアンドラス
『未来は視えたか、女よ。』
ハヅキが現世で意識を取り戻すと、そこはさっきまで一同が立っていた雪殺の集会場内だった。
周囲にはオング、バルキエルが意識を失い倒れている。セレステの姿は見えない。
未だ誰の血も流れていない事にハヅキはホッとすると空中に漂う悪魔に言った。
「ふんっ、こんな浅薄な幻想が未来だっていうの!?」
『女よ、それはお前の未来そのものだ。』
するとアンドラスの跨ぐ黒い狼の様な魔物唸り声を上げた。
(ヤバイ…まともに戦ったら殺られる。どうしよう…)とハヅキは思った。
「目を醒ましてっ、みんな!!」と堪らず声を荒げる。
しかしアンドラスの長剣の刃が物理攻撃としてハヅキに襲い掛かった。
その斬撃をギリギリで躱し、真横に飛ぶ。
ハヅキは続けて両手の掌から氷の柱をアンドラスに向けて放った。
ありったけの力を込めた。
『抗うか、愚かな女よ。』
そうアンドラスが発すると、氷の柱を避けると同時に闇の中に姿を消した。しかし、その巨大な気配とプレッシャーは未だホールに残っている。ハヅキが消えたアンドラスの気配を探る様に辺りを見渡す。
「闇の属性…意外と相性ピッタリじゃない、私達!」とハヅキは叫びながらホールの一点を向かって氷魔法で包まれた暗剣を思いっきり撃ち込んだ。
『ぐっ…』とアンドラスの苦悶がホールに漏れる。
(当たった!もしかしていける!?)とハヅキが思った瞬間、八方からの斬撃がハヅキに襲い掛かった。
逃げ場は無く、防御魔法は追いつかない。
その瞬間、ハヅキは走馬燈を見るかの様に七袖とシャーロットの顔を思い出した。
(ナナちゃん、シャーちゃんっ…)
そして、ミツキの顔が浮かんだその瞬間。
「待たせたな!ズッキーっ!」
そう叫びながらバルキエルがアンドラスの八方の斬撃を蹴散らした。いや、防ぎきれなかった幾つかの背後への斬撃をオングが相殺する。
「ご無事で、ハヅキ様!」オングが優しくハヅキに笑いかけた。
「行くぜ、オング。オレ達もフルパワーだ。出し惜しみすんじゃねえぞ!」とバルキエルが言うと続けて大剣の力を解放させる。
『我が眷属、咆哮の剣よ。我が名は『神の雷光』、打ち抜くぜ!ソロモン王の鍵!』
バルキエルが詠唱と同時に、雷光が大剣に降り注がれる。そのまま電撃を帯びた斬撃がアンドラスを襲う。
『貴様…、その力…。』とアンドラスが怪訝な声をあげる。
その間にオングが両手を胸の位置で合掌させて詠唱を始めた。
『天よ震え。偽りの勇士、勝ち誇る亡霊達よ。我が名は『神の智恵』、其の栄華と琴の音を再び黄泉へと堕とせ。』
オングが詠唱を終える瞬間、バルキエルはオングの攻撃を避けるかの様に後方に飛ぶ。するとオングの背中に4つの翼の様なオーラが発生し、合掌した両手を組み直し、アンドラスへ向かって両腕を伸ばした。錯覚か、本来の両腕以外にもう1組の腕が視える。
「全力で行きます!」
オングがそう叫ぶと4つの腕から次々と閃光が放たれ、確実にアンドラスを捕らえた。アンドラスの跨ぐ黒い大狼が猛々しく吠える。
たまらずアンドラスが鋭い長剣をバルキエル、オング、ハヅキの方向へ向かって薙ぎつけた。
バルキエルとオングの攻撃はアンドラスに届いた。それぞれの攻撃は確実にアンドラスを消耗させていた。その証拠にアンドラスは空中から地に降り、地面に横たわる黒狼は絶命に近い。
しかしアンドラスは未だ立っている。そして一挙にそのプレッシャーを解放させた。ホールの中央から発生した巨大な重力でハヅキ、バルキエル、オングの3人は地面に叩きつけられた。
『平伏とは、その様な姿だ。人間よ。』
一同は、アンドラスのその言葉と共に未だ隔たりのある力の差を悟った。




