第12章 ステップシスター
茶会から時は飛ぶ様に過ぎ、それから1週間が経とうとしていたある日。
七袖はオングとバルキエルと合流する為、一旦禁楼の外へ。
セレステは禁楼を散策すると言ってシャーロットのお付きの者に連れられ楊美宮を後にし、ハヅキはシャーロットと2人きりで取り残された。
シャーロットは七袖とセレステがいない分、いつもよりも勢い良く被っている猫を脱ぎ去る。
「ちょっとそこの使用人、午後のお茶はまだ?」とシャーロットが冷たくハヅキに命令する。
「えー、シャーちゃん。本当に私の煎れたお茶でいいの?」と自信なさげにハヅキは答えた。
すると明からさまにチッと舌打ちをすると「それもそうですわね。不味いお茶は結構ですわ。」と言いながら楊美宮の調理場へ向かった。
特にやる事のないハヅキも後に続く。
「それでお友達は出来ましたの?もうマギアの中等部なのでしょう?」と、突然シャーロットが珍しく普通の会話を始めた。
(シャーちゃんとのガールズトーク……違和感が半端ない……)だがハヅキは気を取り直して答える。
「うふふ、そうよ。初めてのお友達だって出来たんだから!ソフィアって言うのよ。」とハヅキは自信満々だ。
予想通り大袈裟に驚いた様子を一頻り見せた後、シャーロットが続ける。
「背も胸も成長は見られませんのに、人間としては少しはマシになった様ね。」
その恐ろしく遠回りな褒め言葉にハヅキは少しだけホッコリとした。
「もー、胸は無いのはシャーちゃんだって一緒…」とまで口にした所でシャーロットの平手打ちが飛んだ。
だがハヅキはそれを軽やかに躱す。
「あーら、すばしっこい所も変わっていませんのね。」とシャーロットが畳み掛ける。
「あーら、そのインチキ巻き毛も変わっていませんのね。」とハヅキも引かない。それどころかシャーロットの口真似をして立ち向かってみる。
少女達の戯れ合う姿は、調理場の給仕達から見えれば姉妹の様であったに違いない。
事実ハヅキも、シャーロットとの時間を楽しく感じていた。
グロシャークにいた時はただのいじめっ子だったシャーロットは、禁楼に来て立派な淑女へと成長していた。
ハヅキが気丈に振る舞うシャーロットを見ると、皇帝シヴァの妃の1人としての誇りと、故郷を恋しく想う少女の姿が重なって映った。
そうか私にはもう1人姉がいたのか……と、ハヅキは思った。
恥ずかしいので絶対口にはしないが、このツンデレ巻き毛の分かりにくい優しさをハヅキが感じないではいられなかったのだ。
午後のお茶を飲み干すと、妃達の集会に赴くシャーロットをハヅキは楊美宮の門から見送った。
すると馬車に乗り込もうとしたシャーロットがふと後ろを振り返って、ハヅキに小声で呟いた。
「全く心外ですわ。あなたの最初のお友達はアタクシのハズでしょう。」
そう言うとプイっとそっぽを向き、馬車のドアをパタンと閉め行ってしまった。
「なんか今日はデレモード全開。」とハヅキは走り去って行く馬車を見つめながら言った。
(お友達じゃなくて、お義理姉さんだもん。)
僕も義理の姉妹が2人います。シスコンです。と非常にいらない情報を入れて見たり。