インタールード2
皆様、2020年あけましておめでとうございます。Syです。今年もぜひ宜しく御願い致します。
その薄暗い洞穴は、『寵軍の門』よりさらに東へ行ったところにある小高い丘の下にあった。
『白銀の騎士』と呼ばれたその少女は、銀髪の豊かな髪を後ろで纏めると、ため息をつきながら囁いた。
「ハーニエル様、私は…私はどうしたらいいのでしょう…」
それは心の中で呟いた言葉なのか、それとも声に出てしまっていたのか。
すると彼女の背後で男の声がした。
「かの堕天使に、あなた様の祈りなど届きませぬ。」
セレステは悲しげな表情で後ろを振り返らずに答えた。
「デセウス、こんな処までついてきたのね。」
「はい、あなたの為なら何処へでも。ユア・ハイネス。」
その男はセレステと良く似た銀色に輝く姿をしながら、瞳は緋く輝いている。
「もう少し…これで最後なの、デセウス。だからもう少しだけ、私を私のままでいさせて。」
そう言うとセレステはデセウスの方へ振り返った。
その瞳には涙が浮かんでいる。
デセウスは、セレステの涙を見ると寂しそうな表情を浮かべて言った。
「なぜ、悠久の時を私達とお過ごし頂けないのでしょうか。ユア・ハイネス。私は…」
するとデセウスを遮ってセレステは言った。
「デセウス、時が限られているからこそ、人間は美しいのです。」
「しかし、あなたに流れる仮初の血は、やがて枯れ果て散りゆく定め。それから漸く完全なヴァンパ…」
「止めて!」セレステは叫んだ。その悲痛な叫びはデセウスの胸を貫いた。
「あなたは、それ程までに人間を愛してしまわれたのですか?」
デセウスはセレステに恋い焦がれる者の様に尋ねた。
「私のたった一つの我儘よ。お願い、デセウス。」
セレステの言葉に肩を落としたデセウスは諦めた様に跪いた。
「仰せのままに。ユア・ハイネス。」
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デセウスが洞穴の外へ出ると、月夜に照らされた人影がもう1人洞穴の入り口に立っていた。
主を待っていたその少女はフリルのついた白いドレスのせいか、闇世の中でも良く目立つ。
「ペトラか…」
気の沈んだデセウスを見たペトラがハッとして主人に尋ねた。
「セレステ様は…セレステ様はご存じないのですか!デセウス様がこんなにも…」ペトラは口を噤むと主人に寄り添った。
「いいのだ、ペトラ。お前が私に仕える様に、私もセレステ様の下僕なのだから。」
「それでも!それでも…勝手が過ぎます、あの女王は…」とペテロは口を尖らせて言った。
それはペトラにとって、彼女の主人はデセウスだけである事を示していた。
「時は近い。我らはセレステ様の為に、準備を整えよう。この束の間の旅が終える頃、我が女王はついに、我が祖国へご帰還なさるであろう。」
「ペトラは…、ペトラはデセウス様がいらっしゃればそれだけで良いのです!そもそも吸血鬼の国なんて…」
ペトラが続けようとすると、デセウスはペトラの唇の上に指を置いて言った。
「ありがとう、ペトラ。だがその続きはまた今度聞くとしよう。」
そう言うとペトラは頬を赤くして素直に主に従った。
2020年、Syの目標は『槍の王』シリーズ完結!と大きく出てみました(笑)。書くのが遅いSyですが、今年も頑張ります。応援どうぞ宜しく御願い致します。