第三話 ぜっきょう!
周囲の様子がおかしい!
繁華街に、剝き出しの刃が解き放たれた!
異変に気付き、恐怖におののく市民の声!
しかししゅんきち、気付かない!
鼻歌鳴らしてステップ踏んで、浮かれていたから気付かない!
取り残された影ひとつ!
謎の通り魔が、浮かれているしゅんきちを横切る!
千鳥足のおかげで、通り魔の初撃を躱したしゅんきち!
「酔拳」観ていて良かったね!
そんなしゅんきちの、酒気と狼狽と事態を把握する時間を!
か弱き女性の悲鳴が、かき消した!
取り残された影ふたつ!
刃が向かっていく!!
「あぁそうさ。
俺がへし折ってやりてぇのは!
いつだって!
こうして弱者を踏みにじる、くそったれの鼻っ柱よ!」
走馬灯を見るように、意識が研ぎ澄まされてゆくしゅんきち。
そう、次第に……、次第に!
通行人の悲鳴が、今のしゅんきちには虐げられてきた民衆の絶叫に聞こえる!
こういう時は逃げるべきだが!
この時ばかりはしゅんきちも、酔ってて気持ちがデカかった!
――あと、逃げ遅れた子がすごい可愛かったから、へへっ。
「おいUNKOメーン!
カモン、こっちだ!
ヘイメーン!カモッ!
クミヤベイベ!」
四つん這いになりながらお尻を振るしゅんきち!
クイックイッと指を振るしゅんきち!
あまりに上手な挑発に!
踵を返す通り魔!
どうしてこうなった!?
「てめーがナイフを向けたいのは、本当に俺たちなのか!?
説得は、届かねぇのか……?」
叫ぶしゅんきち!
しかし!
謎の通り魔との距離は縮まるばかり!
その時!
追い詰められたしゅんきちの視界の片隅に!
ストリートの相棒、スケートボードが!!!
――電光石火の駆け込みだった!
スケートボードに乗り込み、距離を稼ぎ、向き直る。
刹那、通り魔に!
|特攻《~GEKI★TOTSU~》を、かますしゅんきち!
「びゃあああああああああ!
くらえ!
――|ロンドンコーリンガタック《The Clash》!」
衝撃の向こうに、伝説になる者の真域を垣間見たしゅんきち。
走って逃げ去る通り魔。
罪を憎んで人を憎まず。
追い込むことはしないのだ。
きっとヤツにも何か事情があるのさ、こんな腐った世の中だもの……。
てか、追いかけるとか、こえーし。
皆がしゅんきちを称える!
人をどついて褒められるとはなぁ……。
「へへへ。最高!」
後日、警察から表彰され、SNSやネット記事でも持て囃されたしゅんきち。
だがしかし!
一向に給与(=サラリー)が上がらないだと!?!
何故だ?!?!
――ふざけているのか?!くそが!
SHIT!
夜景に涙を浮かべていると、謎の老人が語りかけてきた……。
「探したぞい、伝説正社員しゅんきち。
圧倒的な『ザーガ』の持ち主をな……!」
しゅんきちの人生が、加速する・・・!!!