1話 プロローグ
受験生が思い付きで書いたラブコメです。
処女作ですので、言葉が間違っていたり、足りていなかったりすることがありますが、それでも見てやるぞ、という器の大きい方大歓迎です。
受験生ですので、亀より遅い更新になると思いますが、すいません。
では、どうぞ。
あと、少し長いかもです。
花は踊り、桜は咲き乱れ、お天道様が、僅かに浮いている雲の間から顔を覗かせている4月の頭。
俺こと末永道幸は、高校卒業を経て、夢にまでみた東京の大学に進学することができたのだ!
と、いうのも、都内の大学に進むとなれば、家は自分で探さなければいけないし、いくら仕送りを送ってもらったって、流石にそれだけで家賃、生活費、学費を賄えるわけではない。
半ば夢を諦めていた俺だったが、奇跡的に親戚のおじさんが「海外に住むことになったから、よかったら私の家を使いなさい」と言うので、2秒で即答し、夢を諦めずに済んだわけだ。
そういうことで、現在俺は右も左も分からない東京都の足立区の中を、スマホのグーグルマップと住所をメモった紙を頼りに、多分北に進んでる。多分というのは、俺が方向音痴だと自覚しているからだ。
「…っと、この辺りだと思うんだけどな~…」
事前に聞いた話によると、おじさんはお金持ちらしい。だから、周りの家と比べて少し大きい、とのことだ。
(高校生の間に方向音痴直しとくべきだった…ん?)
自分の治ることはないであろう短所に内心愚痴をこぼしつつ、意識を正面に戻すと、周りの家に比べ、一際大きな家が目に入った。
いや、家というより館というべきか。
館には当たり前?にあるであろう、およそ3,4メートルはある門と、そのそばに黒の乗用車が止めてある。
車にはあまり詳しくない俺だが、あの黒色の車は、トヨタ・センチュリーだろう。
しかも最新のモデルで、確かUWG60型だったと思う。要するに高級車だ。あれは去年の10月27日に初公開されたもので、まだ発売はされていないはずだが…。
まあ、これだけの館に住んでいる人だ。高級車の1台や2台、持っていても不思議じゃない。流石にまだ発売されていないセンチュリ-を持っていたことには驚いたけど。
「やあ、こんにちは。君が末永道幸くんだね?」
「うわぉ!」
門をまじまじと見つめていると、後ろから声をかけられた。危うく情けない声が出るところだった。
「ごめんごめん。驚かせるつもりはなかったんだよ」
後ろから声をかけてきたのは、年齢に反して若そうな顔をした40代くらいの男性。謝罪しつつも、その顔は悪戯に成功した子供のような無邪気な笑顔を浮かべているものだから、俺も怒る気持ちがどこかに飛んで行ってしまった。
「いえ、大丈夫ですけど…どうして俺の名前を?」
「今日から、私の代わりに館に住む客人のことを知っているのは、当たり前だと思うよ」
「…え?」
俺が借りることになった家は、周りに比べて大きいから見つかりやすいとは言っていたが…。
「ってことは、あなたが矢代さんですか…?」
「ええ」
一応、手元のメモとグーグルマップを確認してみると、どうやら本当らしい。
「…どこが『少し大きい』ですか…。アリと人間くらいの差ですよ」
「はははっ、絶妙な例えだね。」
矢代さんは楽しそうに笑っているが、俺はそれどころではない。
「それにしても、この家を見ても、あまり驚かないんだね」
「驚いてますよ。少なくとも目玉と心臓が同時に飛び出そうなくらいには」
「それはいささか大げさじゃないかい?」
「マジでそれくらい驚いてます」
まあ、俺が一番驚いたのは、今日から住む家がこの立派な館に住むことと、その館の持ち主がうちの親戚だったことだ。
しかし、でかいな。掃除とかめちゃくちゃ大変そう。
「あ、そうそう。大事なことを言い忘れてたよ。掃除のことにも関わるからね」
「あれ、もしかして顔に出てました?」
「少しだけね」
「そうですか…。それで、大事な話とは?」
恥ずかしくなったので、俺はすぐさま話を戻す。
「これだけの広さを掃除したり毎日食事を作るのは大変だろうから、メイドさんを一人、雇ってあるよ。大学に必要な学費や食費は、私のものを使ってくれて構わない」
家(館)を貸してくれるだけでなく、学費や食費までも出してくれるのはこの上ない待遇だろう。だが俺は、それ以上に聞きのがせないことがあった。
「すいません、今なんて言いました?」
「大学に必要な学費や食費は、私のものを使ってくれて構わない」
「その前です!」
「道幸くんと同年齢のメイドさんを一人、雇ってあるよ」
「そこです!しかもさっきと言葉増えてません!?」
「気のせいだよ。気のせい」
矢代さんはずっと楽しそうに笑っているが、俺は今軽くパニくっている。
「それとも、年上の女性のほうが好みだったかい?」
「いえ、年が近いほうがタイプですけど…ってそうじゃなくて!!」
やばい、矢代さんのペースに飲まれてる。とにかく打開しなければ。
「も、問題でしょう!?男と女が、しかも同い年の男女が、1つ屋根の下で暮らすのは!?」
「少し落ち着こう、道幸くん。私が君と同年齢のメイドさんを雇ったのは、気を使わせなくてもいいようにするためだよ。それに、私がみたところ、君は真面目な子だ。例え年下であろうと、君は女性を襲わない。絶対に」
「うっ…」
今までと違い、幾分か真剣な面持ちで俺を見据える矢代さん。
確かに、俺には年下の女性でも、小学生の女子も襲える勇気がない。
しかし、ここで変に意地を張って「そんなことありません」などと言ったら、それこそ問題になるだろう、と思い、矢代さんの言葉に素直に首を振っておく。もちろん縦に。
「ありがとう。もうすぐ飛行機の時間だから、私は行くよ。何か困ったことがあれば、いつでも言ってね」
「はい、何から何までありがとうございます」
「それと、彼女のことなんだけど…」
頭の中で、無理やり理解して受け入れた俺は、『彼女』が『メイドさん』であることはすぐに分かった。
「あの子は、メイド養成学校を首席で卒業して、メイドとしては完璧なんだけど、ちょっと無愛想なところがあるから…よろしくね。それじゃあ。バイバイ!」
「あっ!ちょ…」
矢代さんは、それだけ言うと、すぐに車に乗って行ってしまった。
「『よろしく』って…何がよろしくなんだ?」
軽く頭痛のする頭を押さえ。俺はこれから自分の家となる館に向かって足を進める。
ああは言ったが、正直、メイドは助かる。実際これだけ広い家を一人で掃除して、毎日三食(大学のある日は二食)を作るのは大変だからな。
家を貸してもらい、(不本意ではあるが)メイドさんも雇ってもらい、しかも、学費や食費まで出してくれている。できればもうこれ以上矢代さんの世話にならないようにと、俺は門に手をかけた。
「…あ、門のパスワード聞くの忘れてた」
…決意から三秒で、再び矢代さんに世話になった。
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
次回も、どうぞご期待ください。




