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シールド&マジック  作者: バルバロ
ジュラー編
10/51

葬儀

 街の鐘楼が音を鳴らし、人々にくまなく知らせを届ける。それを聞きながらあるものは空を見上げ、またある人は地面に座り込み顔を手で覆う。

 中心街では戦士が武装して、神輿を担いでいる。木を組み合わせて出来た、不格好なものだが、思いが込められているのは節々から伝わってくる。それには突き立てられた多くの武器群と、それに囲まれたあるものの姿。

 この街を率いて一時代を築いた強き王、ローその人の遺体である。


「おーおー! おーあーあー!」

「うーららー!」

「あー! あー!」


 神輿を運びながら戦士は各々に叫び声を上げ武器を掲げる、これがグリア人流の葬式だ。

 初め、ある戦士があまりに帰りの遅いローを呼び戻すため向かわせられた。戻ってきたとき、三人いた戦士のうち一人だけ戻ってきたことにどうしてと戦士長が訪ねた。

 だが当の戦士が、要領を得ない口ぶりで説明をした。本人も理解が及んでいないようで、混乱しているようだった。

 それを聞いた戦士長もかいつまんでみたが、それも首を傾げた。

 ローが地面に倒れており話しかけても返事がない。何度呼びかけても返事がないため業を煮やした一人が、意を決し殴りつけたがそれでも起きない。体に青あざや火傷の痕があったが、生傷を負って帰ってくるなどローにしては日常茶飯事である。

 説明を続ける戦士は、冗談めかして死んだのではと口にした。流石に不謹慎だと戦士長が殴りつけたのだが二人で考えるうちに、だんだんそうなのではないかと思いだした。それでも生半には信じがたい、殺しても死なないような驚異的な生命力と武力を備えたローが、急に死ぬなど。それも百の戦士に襲われたならともかく、そこに多くがいた形跡はなかったという。

 然る後、もう二人がローを運んで帰ってきてようやく、城の者たちが事実を認めることにした。

 そこからは蜂の巣をつついたような騒ぎぶりだった。なにごとか、なぜローは死んだのか。急遽軍団を結成し遠征させたがなにもわからず。だが一つだけわかったことがある、ローが死んだ場所は荒野だったがここは元々“草原”であった。原因も手段も不明だが、ローは何者かに“殺された”のだと結論付けられた。

 調査と並行して進められたのは葬式だ。王が死んだ場合、葬儀の日は国民全てが仕事を止め喪に服す。他の都市にも伝えながら、他国の襲撃に備え防備を固める。


 葬式は大々的に行われ、戦死したものを扱う場合グリア人は特に敬意を払う。彼ら流の方法で、剣で遺体を囲み最後は崖から深い谷底へと投げ捨てる。そうすることで魂は他の戦死が待つ世界へと旅立てるのだ。


「偉大なる我らが王ロー、比類なき指導者、我らの祖先が御わす世界、その列に連なることをグリアは誇りに思う」

「「グリアが誇り!」」


 司祭が鎮魂の弔事を読み上げ、参列したものが唱和する。戦士たちの眼には涙が溢れるが、それを拭おうともせずに声を張り上げる。


「その魂は高潔に満ち、ジュラーに流れる血脈すら敬意を示すであろう」

「「この地に栄誉あれ!」」


 司祭が促せば、戦士は神輿、棺を崖の方へと傾ける。ローの体は徐々に滑り出し、落ちていく直前に最後の言葉が読み上げられた。


「永遠に戦士であれ!」

「永遠の戦士!」


 そこにいる全てが涙とともに、谷底に消えていく王を見送った。






 その遠く、ローが好んだ物見やぐらの屋根上から、ダンは葬儀を見守りながら干し肉をかじっていた。


「……くだらない、死んだやつになんの価値があるかよ」


 拳を握る力は強く、食いしばる口からは血が漏れた。


「本当に、くそったれめ」


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