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シールド&マジック  作者: バルバロ
オープニング
1/51

闖入者

新作やあ! 読んでくれやぁ!


はい(^○^)

AG.3433年 7月




 野原に幾つかの音が響き渡る。快晴の下、野太い歓声とともに打ち鳴らされる打楽器に笛。これは今日が収穫祭だというわけでも、新たに王子が生まれたわけでもない。

 クルマーリュからすぐのこの場所には多くの武装した人間が集っている。それ以外には飲食物や珍妙なお守りまで雑多な出店を開くもの、それぞれに群がる物乞いなど。これらの中心地にいて、大声で語りかけ続ける男がいる。嫌味が顔に張り付いたような、ハゲタカのような男は次のように話す。


「――続けるか、やめるか! その勇気をここで示せよ!」


 発破を掛けるような言葉の先には二人の人間、それを輪になり囲む群衆。簡易な柵で覆われたリング、そこで代わる代わる戦士たちがしのぎを削っている。


「はあーっ、はあーっ!」


 片方はガタイのいい、幅広の両刃剣を握る男。シャツの上にスチールプレートを装備し低く構えている。戦闘が開始した直後はヘルムもあったが今は後方に転がっている。息を整える為に油断なく距離を取り、それを向かいに立つ男は悠然と眺めていた。


「むうん、往生際の悪い!」


 標準以上の体格を持つ戦士を前に、見下ろすように、まさに見下ろしているこの男は壊し屋ガーク。身長は常人より遥かに高く横幅も人の倍はある、そこから生み出される膂力は桁違いでそれを存分に活かすように大槌を手にしている。

 まるで破城槌を武器にしているかのような威圧感に、相対するものは縮こまり圧倒される。この男もまさにそうであり、出てきたときの威勢はすでにない。

 膠着状態になるのを群衆は嫌い罵声を浴びせる。


「とっととやれ!」

「できねえなら逃げ出せ!」


 男はこれを受け、意を決しガークに立ち向かう。自らを鼓舞するために大声を上げ、剣を振り上げ接近する。

 ガークはそれを眉一つ動かさず、唸る。


「甘いぃ!」

「――げっ!」


 怯んで男の足が止まる、目の前には横薙ぎされた大槌。左に持つ盾で防ごうとするがそれごと弾き飛ばされた。人形のように吹き飛び、地面をはねて動かなくなる。群衆の一人が近寄り確認すると、男は白目をむいていた。

 それを高いところから眺めていたハゲタカ男に伝えると、やれやれと言ったふうに手を振り次の参加を促すよう指示した。

 その後に少し下がり天だけ覆う簡易な天幕へと入る。そこに置かれた椅子に座る恰幅のいい壮年の男へと話しかける。


「これで何人目だ、ピール」

「全部で二十三名、ガークが出てきてからは九名ですゴップ様」

「……つまり全てガーク以下ということか」


 顎に手を当てふうむと声を出すゴップ。彼はここクルマーリュの領主である。


「それでもいい勝負をするものは幾つかいましたよ」

「それで我慢するしかないのか……、のう。 王都の方はどうなっておるのか」

「似たようなものだと聞いておりますが、少し平和が長すぎましたかな」

「まあよい、まだ人は残っておるのだろう? それに期待するとしよう、続けてくれ」

「はっ」


 ゴップは眉をしかめる、彼の父の代では強兵で知られたクルマーリュだがロレリア王朝に併合されてからは戦争が遠ざかり兵の弱体化が著しい。それも狙いかと思ったところで頭を振った、今は政争をしている場合ではないのだ。

 そこで先ほどまであった喧騒が収まっていることに気がついた。見たときにはピールがもう一度大声を上げているところだった。


「誰か! 名乗り出るものはおらんのか!」


 ガークの強さを前に、威勢のあった戦士たちはすっかり意気消沈していた。城に仕えるガークももう古参兵の域である。

 自分の後に続く者がいないことに不満を覚えるガークは鼻を鳴らして声を出す。


「この腰抜け共が! それでもクルマーリュの男か!」


 ここまで言われてなお男たちの足は鈍い。

 そんな様子をやや離れた場所から、冷やかすように見る男がいた。


「けっ、勝手に言ってるぜ」

「なんだセニーリ、お前は混ざらないのか?」


 同じ群衆の一番外側にいた男がセニーリと呼ぶものに話しかける。


「――はっ、誰が」


 そう言い張るセニーリを見て男が笑う。セニーリの頬の布に気がついたからだ。眼の前の男の変化にセニーリも口をへの字に。


「なーるほどな」

「な、なんだよ」

「とっくに追い払われたってことか」


 図星を突かれ一度目をそらしたセニーリ、そしてせせら笑う男をにらみつけるがニヤケ顔は変わらない。


「どうした、やるか? お前なら俺でも勝てるぜ」

「……今日は勘弁してやるよ」

「はは、そりゃどーも」


 嫌味に返す気力もない、セニーリは今落ち込んでいるのだ。


「まあそうしょげるなよ、お前以外も大して変わらないさ。ガークに敵うやつなんているわけないさ」

「ふん」


 男に背を向け立ち去るセニーリ、だがその時後ろから歓声が上がった。そこから聞こえてくる話し声。


「挑戦者だ!」

「おいおい、グリア人か? まさかルーヴィングの襲撃じゃ……」

「どこから来たんだ? 噂じゃ奴らの国は今――」

はい(^○^)

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