表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

第九回 いまさら『天空の城ラピュタ』をテーマに扱うとかどうなの

 映画感想込。むしろ全編感想と批評。ネタばれあるけど、ごめんラピュタとかトトロとか見たことない人ってどれくらいいます?


 気が付くと1か月以上も間が空いてる不思議! 世界には魔法が満ち溢れています。


 知っていましたか? それとも皆さんは、魔法なんてあるわけない!と諦めてしまっていましたか? 世界には魔法が満ち溢れているんですよ。仕事中の3時間は永遠に感じられるのに、マンガ読んでごろごろしてる1時間は体感15分の内に過ぎ去ってしまう魔法。無くしてしまったボールペンが、新しいものを買った途端に発見される魔法。昔やったゲームを久し振りにやり直してみたくなるも、ラストダンジョン手前で急激にやる気が出てしまい結局エンディングが見られない魔法。ええ、この世界には様々な魔法が満ち溢れています。


 そんなファンタジックなまくらから入りました。1か月以上ぶりのおはなしのおはなし。何書こうかなって考えたときに、そう言えば最初の頃に、「いつかこれ書こう」って思っていたお話がありました。


 映画の感想に紛れさせたいなと思いつつ、あんまり映画の感想ばっかりだとむしろエッセイの方向性がどっち行っちゃうんだよなぁ、だと思ったので、しばらく温めておりました。いや、忘れてないよ。温めてたんだよ。幽遊白書のぷーみたいにちゃんと生まれるよ。



 

 てなわけで、今回のお話のテーマは、『天空の城ラピュタ』。というかこれ一つを切り取りつつ、全体的にはトトロ、魔女の宅急便、紅の豚、もののけ姫辺りまでの宮崎駿作品を少し取り上げてみたいなと思います。千と千尋以降も人気も完成度も高いのはわかっているのですが、個人的にはもののけ姫までで宮崎さんは一区切りついちゃったんだろうなと。知り合いの意見では、「もののけ姫まで作った監督なら、あとは何やっても許されちゃうでしょ」と。すごく納得しました。


 いや、ファンがいるのも重々承知の上なんですけどね。逆にもののけ姫がなければ、「何やってんだよ宮崎さん、あんたもっとできんだろ!」くらいの感想なんですよ。千尋、ハウル、ポニョ辺りに対しては。



 

 否定的な意見を言いたいわけじゃないので、テーマにしない作品の話はここまでにして。


 とりあえずラピュタ。私自身ジブリ作品の中で一番好きなのはもののけ姫なんです。いやだって、完成度と世界観がものすごいじゃないですか。しょっぱなの映像の綺麗さとか、タタリガミ(ナゴの守)の存在感とか、アシタカの初戦のスピーディーさ。一気に作品に引き込まれての、タタラ場の雰囲気とシシ神の森の神聖さ。初めて劇場に見に行ったときは鳥肌立ちっぱなしでしたねとりあえようよラピュタ! 


 いや、一番好きなのはもののけ姫なんですが、物語としての完成度が一番高いのはラピュタだと思うんです。とてもわかりやすくて、はっきりとした悪役がいて、主人公の男の子は平凡な生活から突如現れた不思議な力(飛行石)を持つ少女と出会い、守りながら自分の夢だった伝説の地への到達まで叶えてしまう。そして古の秘密を解き、悪を倒し、最後は少女とハッピーエンド。かんっぺきなまでのRPG脳ですよ。昔やった「LUNAR」ってゲームの製作者さん(だったかな?開発者チームのどなたかさん)が、「本物のヒーローってのは、好きな女の子を守るついでに世界の一つや二つ守っちゃうもんなんです」みたいなこと言ってましたけど、パズーはまんまそのタイプのヒーローですね。


 さて。というわけでラピュタは非常にわかりやすい、日本人的な「物語」として相当完成度が高いと思うのですが、対して他の作品はどうか。トトロ、魔女の宅急便は、私は物語として見ていません。あくまでエピソードの連続であって、作品全体としては雰囲気や空気を楽しむものでしかないんじゃないかと。いわば『ビブリア古書堂~』や『給食のおにいさん』のような、物語を動かす決定的なイベントはほとんどなくて、日常のこことここを切り取って一作品にまとめました、みたいな。


 でね。まずそう言った作品が悪いというわけでも、作品として劣ると言いたいわけでもない、というのは前提です。ただ、トトロや魔女の宅急便は、あるいは紅の豚は、ストーリーに主眼を置いた作品ではない、っていうのが私の感想です。


 トトロというユーモラスでかわいらしい生き物を描いて、「こんな生き物が日本のどこかに今もいるんですよ」っていうそう言うメッセージを伝えたかった。


 キキという少女の、青春のスタートから、苦難が続いて、悩むことも多くて、それらは全て解決することはないけけれどとりあえず元気に過ごしています、という等身大の女の子の成長シーンを描いた。


 空賊たちの普段の生活と、その中に紛れ込んだ女の子を中心にしたちょっとしたイベントがあって、いずれまた普段の生活に戻っていく。でもそんなばか騒ぎができるのは人生の一時期だけなんだよ、という寂寥感も描いた。


 2時間という枠で映像を使って楽しませる、何でもいい、感情を動かすという意味での感動を見る人に与える。そういう意味でのアニメ映画作品であって、宮崎さんは物語を描くのはもうずいぶん前にやめてた。彼はアニメーターであってストーリーテラーじゃない。いや、ストーリーテリングには、ナウシカ本編書いてラピュタ作った、結構早い段階で満足しちゃった。これが私の、ジブリに対する率直な感想です。



 

 私自身が目指すのは、純粋なストーリーテラーです。それじゃ今の時代売れないのかもしれないですけどねー。『君の名は』みたいに話が秀逸!って言われるよりも絵が綺麗!って言われる作品の方が受けるのかもしれないですけどねー。いえ個人的には君の名はは物語的にも面白かったですよ。世間の評価的にね。


 今アニメ映画、アニメ作品で「物語」を武器にして売ろうと思ったら、小説よりもずっと大変なのかもしれないなって、ちょっと思います。そもそも2時間で面白い物語を語ろうって時点で相当な制限だと思いますし。だから、『サマーウォーズ』とか、『東京ゴッドファーザーズ』とか、純粋に物語が面白いアニメ映画作品って印象に残ってるのかなぁ個人的に。見てない人は見てください? ジブリ見る暇あるならこの二作品先に見ろってくらい面白いと思います。それぞれ夏と冬にどうぞ。


 で、アニメ界的に物語を売るのが大変な世相。だったら小説の方はまだマシなのかって言ったら、多分同じようにキツいんですよね。みんなが綺麗な絵とか、雰囲気とか、プロローグからエピローグまでで完結しない、その前とその後までそのキャラの人生が想像できてしまうような、エピソードの切り取り。そういうものを求めるような風潮は、アニメ、マンガ、小説とジャンルを問わずあらゆるフィクション界に寄せてきていると思いますし、そうなると「絵の綺麗さ」をそもそも武器にできない小説はジャンルの段階で手に取ってもらえなくなってしまいます。挿絵が増えたり、さっき挙げたようなビブリア、給食みたいな短編連作みたいな表現形式が増えてきたのも、世相の現れなんでしょうねぇ、と勝手に納得してみる。



 

 というわけで、このエッセイのシリーズ第4回ではスポーツ中継を取り上げながら「日本人は一人称視点で見るのが上手い」と仮説を立ててみたのですが。今回は、「物語よりも要素を求める」風潮が強くなってきたのではないか、という仮説を合わせて立ててみました。あくまで仮説というか個人の感想なのですが。


 ただしその中で、ラピュタより後に物語を優先して紡がなかったジブリ作品の影響は、日本人の物語消費のあり方について多大な影響を与えているのは、確かだとこれははっきり思うのです。日本人で、フィクション好きで、ジブリ見てない人って、多分もう相当な少数派じゃないかなって。


 ジブリってアニメ映画の世界では、漫画界の手塚治虫、くらいに一種神格化されちゃってる部分があって。そんな中ジブリ作品は、多分見る側の人たちのどこかに、「2時間枠のアニメ映画は、お行儀のいい物語なんて描かなくていい」っていうイメージを無意識化に植え付けちゃってる。そんな気がします。でなきゃポニョなんてウケないよね。ストーリー的には支離滅裂ですよあれ。


 つまりはそんな中「物語性」を武器にしてフィクションを売ろうと思ったら、少なくともジブリクラスのインパクトは必要なわけで……、うん、挫けるなぁ。



 

 というわけで、ラピュタは名作だよね、うん。


 でも、もののけ姫は最高峰だと思うよ。うん。


 あと、ポニョよりはゲド戦記の方が面白いと思う。異論ありそう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ