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第八回 1と0との間の小説、その外側の小説

マンガ「ワンゼロ」のあらすじと、他の方のエッセイ、小説さまの感想込。



 何やらエッセイランキングがざわついていらっしゃいますね。



 

 わたくしのエッセイでは、なろうの他の作品様のこと、具体的に「この作品について」をどうこう言うのはやめよう、という暗黙の決めごとがありまして。ええ暗黙だったんですけど(明言しちゃうし)。ここまで映画とかゲームとか具体的なタイトルを掲げつつ自分の思索活動の材料にさせて頂く感じで進めてきたこのエッセイなんですが、あくまでその対象は商業ベースのものに限らせて頂こうと考えておりまして。


 なので、風倉@こぴーらいた様の『なろう批判を批判する』につきましてはこのエッセイのテーマにすることはしません(タイトル挙げちゃうし)。なのですが、あれを読ませて頂いて、関連と言いますか、自分なりに考察するテーマが一つできたので、ちょっと久々にエッセイ書いてみようかな、とか思いました(久々とか言っちゃうし)。



 

 てわけで今回のテーマは佐藤史生さんの『ワン・ゼロ』というマンガです(誰が知ってるんだ)。




 萩尾望都さんとかと仲が良かったらしいですね。親の本棚以外で私は名前を見たことがありません、佐藤史生さん。さとうしおさん。と読むそうです。昔風の少女漫画の絵柄ですが、読み辛いということはなく(好みですが)、むしろ数ページも読めばまるで気にならなくなるくらいに物語に引き込まれます。


 私が知る限りの長編は『夢見る惑星』と『ワン・ゼロ』なのですが、テーマ性の好みから、私はこの『ワン・ゼロ』の方が好きです。単純な好みです。『夢見る~』もものすごい名作です。


 どんな話かって言いますと、ある企業が持っている自律思考型コンピュータ「マニアック」。いわゆる時代を先行するただのAIだったマシンは、とあるハッカー高校生とつながりを持つようになり、少しずつ外の世界を学習し始める。一方で、そのハッカー高校生は、永くディーヴァと戦を繰り返してきたダーサの遺伝子を継ぐ者たちで、マニアックは魔の影響を受け、加速度的に人間を理解していく。


 うん、私なんぞがまとめようとすると非常に陳腐な表現にしかなりません。とりあえず私が言えることは、先日掲載した拙作『デウス・エクス・マキナ』は、存分にこのお話の影響を受けて書いたものだって言うことです(パクリじゃないよ。うんパクってないと思うよ)。




 さて、このお話のテーマやあらすじはあまりに壮大なので、それについて語るのはここまでにしておきます。壮大なんですけど、たった4冊(文庫だと3冊だって噂?)で完結してるんですよね。密度の濃いお話です。もし興味を持ってくださった方がいらしたら、本屋さん……、で手に入るのかな。まぁ、なんか探してみてください。


 で、今日の本題は、その中のワンシーンにあった、マニアックの所有企業「アイツー」社の社長のお話。


 インド神話をモチーフに語る。神話の魔族はよく神々に騙され、現わした頭角を押さえつけられる。主人公たちの「神ってやり口が汚い」の感想を前に、社長は「魔族が自由奔放に過ぎる」と自らの感想を口にした。「神の前に出ていくならもっとずる賢くやらなきゃいけない。思いのままに暴れるだけ暴れて、叩かれないと思われる方が悪い。我がアイツー社は、魔のように大企業の間に割って入り、神のようにずる賢くその立場を守ってきた」。そう言うお話。


 『なろう批判を批判する』というエッセイを読ませて頂いて、まずこのエッセイはタイトルに反して何かを批判する目的では書かれていない、と感じたのが第一印象でした。批判に反論しようというのではなく、こちらにはこちらの歴史がある、知らぬままに批判を受ける謂れはない、と。


 私自身、拙作のレベルの低さではお恥ずかしい限りですが、書籍化を目指している人間です。「なろう」作者様方にはいろいろな書き方がそれぞれにあるかと思いますが、私は、あくまで「なろう」サイトさんを発表の場と考えさせて頂いております。「なろう」さんの形式に添った作品は書いておらず、別に書いた話を更新頻度やサイトのデザインに合わせて切り張りしてるようなイメージです。


 中には、なろうさんのために書いている――、というと語弊がありますが、他での発表の機会は一切考えず、なろうさんでみんなに見てもらうために書いている方もいらっしゃるでしょう。ひょっとしたらそういう方の方が大多数かもしれません。テキスト形式とか、一話分の長さとかね。そう言う方について、「なろう」は、web小説はこういう歴史を持っていて、こういう意義があるのだ。こういう需要があって、批判するような連中に理解を得る必要はない。そう掲げることは非常に大切なことだと思います。


 一方で、書籍化を目指している人たちは、言い方を変えればweb小説の枠を出て行こうと考えている人たちです。そして立場を変えれば、書籍をスタートに持っている人たちからすれば「ナメてんのか?」って思われても仕方がないかもしれません。彼らにとっては、なろうがどうこうという話ではない、自分たちのテリトリーを守るとか、そう言う話かもしれません。同じ物書きとして共存共栄、出来れば一番だとは思いますが、人間感情として自分と全然違うスタートから出てきた訳のわからない連中が、自分と肩を並べて同じ舞台に立つ、というのは認め難いのかもしれない。



 

 かのSF作家シオドア・スタージョン氏は、「SF作品の90%はクズである」と批判された際、「あらゆるものの90%はクズである」と言い返したそうです。今では押しも押されもしない小説の一大ジャンルとして確立されたSFですら、そう言って叩かれ、名のある編集者たちと戦ってきた歴史がある。なろう系はようやく今「なろう系」として少しずつ一般にも認められ、書籍も本屋さんの一角を占めるようになってきました。だからこそ、批判も集まってきたのかな、と思います。「ワンパターン」、「異世界転生とは荒唐無稽」、「主人公が強すぎて面白くない」。叩かれる要素は当然ありますし、多分書いている人たちの中にも、言われて「一理ある」と認める部分は多かれ少なかれあるんじゃないでしょうか。個人的に、二理以上を認める必要はないと思いますが。

 



 どなたか、ななめ読みしたエッセイ様だったのでもう忘れてしまったのですが(非常に失礼)、「なろう系は円熟期からそろそろ衰退期に差しかかっていると思う」と仰っていた方がいらっしゃいました。


 もしかしてそれが「小説家になろう」サイトさんのどれか一つの流れについての感想だったら、それはわかりません。ただ、「チート付き異世界転生」「俺tueee」など狭義の定義を含んだいわゆる「なろう系小説」の時代は、まだまだ草創期、むしろこれから爆発的に力を付けていくジャンルなのではないかと考えています。


 長らくランキング1位に輝いておられる、理不尽な孫の手様の『無職転生』、このジャンルの教科書のような見事な作品だと思います。ただ、誤解を恐れず敢えて言えば、最高傑作ではない。歴史的な役割も含めて、この作品は多分狭義のなろう系の「礎」になる作品なんじゃないかな、と個人的には思っています。


 そのうちものすごい一般にも認められるような作品が出てきて、実写映画化ドラマ化万歳、主演俳優はあの有名な誰々、小説にそこまで興味のない人たちも、「面白いですよね、大好きです」なんて感想を言いつつ、そういう人たちが今現在のなろう系人気作を見て、「え、何ですかこれ?」みたいな反応。でもその超人気作の作者さんにとっては、孫の手様とかは神みたいな存在。一般の人は知らない「なろう系」の歴史があってね。云々。そんな時代が来るんじゃないかなーって、私は期待しています。

 

 私個人の立場としましては、狭義のなろう系、いわゆる異世界転生作品にはそこまでの思い入れがないので、自分がその旗手になる、みたいなのは夢物語としても縁遠い感じです。


 ただ、『かんてん』を書かせて頂いて、多少なりと理解は深まってきている気もします。転生モノを読ませて頂く機会も増えましたし、もっともっと面白い作品が出てくる余地がまだまだあるジャンルだと思います。



 

 と、ここまでで終わってもいいんですけどね。

 なんだかんだと名前を挙げさせて頂いてしまったので、蛇足なんですが感想などを一言添えさせて頂きたいと思います。

 

 風倉@こぴーらいた様の『「なろう批判」を批判する』、非常に楽しく読ませて頂きました。そりゃもう抱腹絶倒させて頂きましたはい。個人的に二次創作って一回しかしたことなくて、当時もそういうSSなんかの流れの存在は知りながら横目で見てただけなので、楽しかったんだろうなって、ちょっと羨ましく感じる気持ちも抱いてしまいました。

 

 理不尽な孫の手様の『無職転生』は、結構以前に読ませて頂いた作品です。まだ本編だけしか読んでないですけど。面白かったです。「チート俺tueee」、がなろう系の本分なのかもしれませんが、個人的にはいよいよラスボスが本性を表して「やばいじゃんどうしよう」ってなったときの緊迫感が一番わくわくした展開でした。






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