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第五回 若者言葉を使っていた若者が年寄りになった話

 

 人称の話とか、小説の書き方、読ませ方の話とか、少し続いてしまいました。


 それはそれで楽しいのですが、ここらでちょいと目先を変えようかな。ってわけで、今回は小説の書き方よりもツールの考察。「日本語について」です。



 

 若者の言葉の乱れが~とか言われて久しい日本語の話。一方で、どれくらい久しいかってーともう2,000年くらい前からずっと言われてたんでしょ年寄りってしょうがないよね、とかも言われてやっぱり久しい日本語の話。文法がどうとか、修辞技法がどうとか切り口はいろいろありますが、特に「乱れた若者言葉」で槍玉に上げられやすいのは単語レベルの話かな、と思います。


 ですので、私的見地から単語についてのお話をしてみたいと思います。



 

 私はそういう世代でして、どういう世代かはまぁ推して知ってくださいって感じなのですが、とにかく、人生で初めて「言葉が乱れてる」と世の中で言われているのを聞いたのは、「チョー」でした。コギャル語、とかいう表現がマスコミに持て囃された時期ですね。「チョベリバ」とかの流行語が代表格でしたでしょうか。ああっ、具体例挙げると年が重く圧し掛かるなぁ……。


 具体的に、「チョー」はまぁ、程度の大きいことを表す形容詞、副詞として突然みんなが使い始めた、その頻度の高さと耳障りなところがいろいろ叩かれもしたんだと思いますが。そもそもあった「超音波」とか、「超高層ビル」みたいな名詞を飾る形容詞的用法から、「超痛い」「超笑える」のように形容詞、動詞を飾る副詞的用法へ広がって行った、……ことは叩かれてた理由に上がるんですかねぇ。叩いてた人たちも、そこまで考えてなかったんじゃないかとか思っちゃいますけど。


 どうでもいいですが、個人的には、「超」の使用頻度を広めたのはドラゴンボールZの功績だと信じています。超戦士たち!! とか超激戦!!!とか、何かにつけ超つけてた気がする。超サイヤ人とかも。


 他によく聞いた「乱れた日本語」は、「ら抜き言葉」とか「ムカつく」とかですかねぇ。ら抜き言葉は「着られる」「見られる」「食べられる」と言った、上一段、下一段活用の動詞に可能の助動詞「られる」が付いた場合に、本来必要な「ら」が省略される、というもの。でもこれは、日本語学者の間ではむしろ効率的な変化の例だって意見の方が多かったみたいですね。「見られる」には、「受け身」「尊敬」「可能」「自発」の意味があって、どの意味で「られる」助動詞が使われているかは文脈から判断しないといけなかった。それが、現代語で一番使われる「可能」の意味だけ、別の形を持たせるっていうのは、必要に応じて言葉が変化している例で、乱れているわけではなくむしろ機能的な進化だと。


 余談ですが上一段、下一段以外の活用動詞はどうなってるのかって言いますと、「歩く」+「れる」は、「歩かれる」が本来の活用。でも現代語では「歩ける」になっていて、「そのくらいの距離だったら歩けるよ」を、「歩かれるよ」と言う人はむしろ少数派になっていると思います。他の動詞の変化はすでにほぼほぼ終わっていて、残っていた「ら」が使われる言葉だけ叩かれるのも変な話だ、っていう意見もまた然りかと思います。


 さらに余談ですが、ら抜き言葉にはシリーズ(?)として他に、「さ入れ言葉」「れ足す言葉」というのがあるらしいです。さ入れ言葉は、五段活用動詞+使役の助動詞せる、と上一段、下一段動詞+助動詞させる、の区別が完全についていない人が、五段の場合にも「させる」をつけてしまっているのではないかと思われます。これは明確な誤用だと思われるので、「歩かせる」と「歩かさせる」、「書かせる」と「書かさせる」どちらが文法的に正しく、どちらが誤用か?と問われたら、多分回答は偏るのではないかと思います。偏るよねぇ? え、不安になってきました。もしお暇な方いたらご感想くださいな。あ、方言的なものは今回の埒外ですよ。


 ちなみに、さ入れ言葉として唯一定着しているかもしれない、と個人的に思っているのは、「やらさせて頂きます」っていう形かなぁ、と。「やらせて頂く」よりもちょっとだけ丁寧な意味に聞こえなくもない、敬語的な意味を追加させるためにこういう言い回しができたのかなぁ、と思いますが、まぁ「させて頂きます」で十分なんですけどね文法的には。


 余談長いな。れ足す言葉っていうのは、私も大学の講義で一回そんなものがあるっていう話を聞いただけで、実在を確認したことはありません。「着られる」→「着れる」と、ら抜き言葉になった可能動詞に、何か不安になったのか「れ」を入れ直して「着れれる」とした表現のこと、らしいです。実際使ってるの聞いたことない、……と思うんだけどなぁ。使っている例をご存じの方いらしたら、教えてくださると嬉しいです。興味本位ですが。


 一応例を挙げましたので最後に「ムカつく」の話も。「ムカつく」が流行ったのは、90年代の最初の方とかでしたかねぇ。「キレる」「キレやすい子供たち」みたいな社会現象と一緒に出てきたような印象なのですが。その辺の話の極め付けが酒鬼薔薇事件だった気がするので、90年代半ばとかですかねぇ。当時の大人が「ムカつく」っていうのは胃がムカムカするとかそういう意味で聞いてたんで、機嫌が悪い時にムカつくっていうのは違和感があるなぁ、って言っていたのを覚えています。ですが、軽く調べてみたところどうやら関西の方では元々「ムカつく」に「怒る」という意味があったらしいですね。大阪弁がお笑い芸人とかのテレビとかの影響で全国区になるのは時々起こる現象のような気がします。最近だと「ドヤ顔」とか。



 

 やー、長いですね。


 ここまで前振りのつもりだったんですが、これだけの話でなんかいつもの一回分に及ぶ分量になってしまっています。


 せっかくなので二回に分けようかな。いわゆる「乱れた日本語」の話について、本当に言いたかったことは次回に回すと致しまして。とりあえず今回のまとめとしては、そうだなぁ。自分の中では、「まずその言葉がどうやって現れたのか、どういう意味なのか、本当に乱れているのかそれともその言葉の登場によって逆に日本語が整うのか。新しい言葉を聞いたときに一回そういう検証をしてから意見を言ってもいいんじゃないかな」と思います。新しい言葉が出たら、「辞書にない、若者言葉は文法的におかしい。聞いてて煩わしい」という全否定的な意見、「今使われてるんだからそれはもう言葉としてあるもの。認めないのが見苦しい。言葉は変わるもの」と全肯定的な意見。私はどちらも同じくらいに考え無だと思います。そして、あらゆるものに関心がある人、無関心な人それぞれいますので、考え無しだからどうとかって話でもないのですが、少なくとも言葉を表現の最重要具にしている身としてはそういうのってアンテナ張っておきたいかなって。まぁ純粋に好きなのもあるんですけどね。



 

 ところで、昔の若者言葉ばかり取り扱ってきた反動、最近の若者言葉ってどういうのがあるのかなってちょっと調べてみました。「リアタイ」や「ワンチャン」辺りは、実際に聞いたことがあったのも含めてある程度意味の予想がつきましたが、そういや見たことあるけどちゃんとは知らなかったなー、というのの中に「ふぁぼ」というのがありました。「favorite」から来てたんですね。語源がわかってすとんと腑に落ちると、すっごく気持ちいいです。



 

 てわけで次回も続けて言葉の話ー。


 最後に余談ですが、っていうか今回の文章は何割余談なんだって話ですが、私は「超」が流行ったのはドラゴンボールZの影響だと信じて疑っていません。そして、ポテトチップスを「ポテチ」とする略称を世に広めたのは『きんぎょ注意報!』だと思っています。語源ではないかもしれませんが、絶対このアニメのおかげで「ポテチ」略称が全国区になったはず!


 もう年齢の話はやめましょう!





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