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J・パッカーが壊れた人形のように動かなく、しゃべらなくなってから、一日一日と日は過ぎた。
だけれども、その間ミロとその家族が抱える問題はなんの進展もみせず、いたずらに時間だけが経過していった。
家族間で繰り返されるのは最低限の必要な会話のみで、それはいたって義務的なものでしかなかった。
ミロの両親が幼い子と本気で喧嘩をしているともとれるこの状況は、少々違和感を覚えるかもしれない。
しかしこれは、いくつかの要素がタイミング悪く重なってしまって起きた不運であり、仕方のないことだった。
言ってしまえば、ミロの家族はここまで波風なく齟齬なく家族の形を保って歩んできた。
そこに、初めて生じた亀裂のようなものが今回のひと騒動であった。
いっぱしの大人としての経験値はあっても、父母としての経験はまだまだ浅かったミロの両親。
一方ミロは四歳。自我が芽を出しそれが大きくなりつつある段階であり、自己主張はするものの、それはけして上手とは言えなかった。
そんな状態の彼らなので、膨らんだ風船が割れるように、いつかは対立が生じるはずであった。
それが如実に顕在化したのが、この度の事件だったのだ。
しかも、今回は内容が酷すぎた。
本来なら笑って済まされる程度の、四歳の成長を肌で感じられるほどの悶着で済むはずだった。
しかし、事実は家の窓がほぼすべて割られるという、おふざけでは容易に済まされない事態となっていた。
事が事だけに、両親もミロがきっちりと反省するまでは許すわけにもいかず、かといってミロ自身もまったくもって無実の身であったため、幼心にそれを遵守したまでだった。
今回のケースはなんといっても、両者が共有できない秘密が解決のカギとなっていた。それだけに解決の糸口はもつれにもつれ、すべてが明るみとなる、正しい終着点にたどり着くエンドはほぼ不可能と云えた。
それでも終わらない物語はない。
ある一定のものさしで、それはエンドという形を形成していく。
それはある意味で、すべてが解き明かされるよりも暖かみを帯びていた。
その瞬間はやって来る。
J・パッカーの抑えがたい衝動はついに人形の姿においても、本来の姿を取り戻した。




