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2-3

ガキ(ミロ兼兄弟)はほっとくとすぐ静かになった。

それに、あいつにはあいつなりのサイクルがあるみたいで、あくまで俺のことを一人形としてしか見てないようだ、とJ・パッカーは思った。


タンスに座したJ・パッカーのミロ観察結果はこうだ。


兄弟、絵本を読む。

兄弟、ベッドでもがく。

兄弟、うとうとする。

兄弟、リビングへと走る。

兄弟、不在。

兄弟、おもちゃを取りに来る。

兄弟、退出。

兄弟、走り回って入退室を繰り返す。

兄弟、俺を見つめる。

兄弟、退出。


こんだけ暇なやつということは未就学児だな。保育園や幼稚園にもいまんとこ行ってないみたいだ。

ざっと三歳、いや四歳くらいのものか、腕を口元にもっていきながらあくびをするようにしてJ・パッカーはそう考える。


本来の無生物らしくじっと動かぬままあれこれ考えていた彼は、窓の外がすっかり暗い青をしていることに気付いた。


すぐにタンスから飛び降りるJ・パッカー。

受け身はとれずに、鼻から地面に落下する。

ミロに触れられたときと違い、痛みはなかった。


すぐにむくりと起き上がると、そのまままっすぐベッドへと向かった。

自分が寝られる身体なのかはともかく、自然とやわらかそうな子供用ベッドに彼の足は向いた。

どんな状況であれ、清潔なシーツがJ・パッカーを包んでいないと安心して日などまたげない。

それが俺のポリシーだ、J・パッカーは強く思う。


ミロが自分を置いていた定位置にたどり着くと、J・パッカーはとりあえず寝るふりをしてみた。


部屋の時計は夜六時を回ったごろだった。

普段なら今から酒を浴びるところだ。


それでも体感速度が人間だったころとは違うのか、はたまた人間仕様の家ではなにをするにも不便なのか。

正確な理由は不明だが、J・パッカーはあっさりとこの一日を通り過ぎる気持ちになっていた。

疲労感こそないが、年表に書き残されるであろうビッグイベントを、彼は今日一日で十分過ぎるほど経験した気がしたからだ。


しばらくすると、ミロも彼のとなりにすべりこんできた。

入眠のあいさつをされるとJ・パッカーも悪い気はしなかった。

さあ兄弟、いっしょに夢見心地といこうじゃないか、そんなことを考えながら、J・パッカーは天井と向かい合っていた。

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