01-02>宿場町タフレ
『選択肢が未確定の世界』の俺に届くことを願って、このメッセージを送る。
これから俺の前に『問題解決に繋がる重要な鍵』へと至る選択肢が現れる……筈だ。
だが、その選択肢を進む前に『禍福は糾える縄の如し』と言う故事を思い出せ。
最善と信じた選択肢は、俺に『重要な鍵』と『大きな厄災の種』を齎し、以来、賑々しくも悩ましい厄介事に塗れた日常を送る羽目に陥っている。
この状況が『塞翁之馬』かどうか――道半ばの俺には判らない。
だから俺は祈る。『選択肢が未確定の世界』の俺が賢明な選択を下してくれる事を。
俺は――――――――――――
◆◆◆
山中の逃走劇から遡ること10日前――
東の大門を抜けると、夕焼けに染まる宿場町を東西に貫く大通りは往来の人々の喧騒で満ち溢れていた。
――家路を急ぐ街の住人。
――通行人を相手に、最後の一稼ぎに精を出す露店の主。
――これからが稼ぎ時と、これと思う相手に声を掛けて回る妖艶な呼び込み。
――閉門前に街へ入れたことに安堵し、市内へ散っていく行商人や冒険者。
街道を旅してきた俺も数日振りの喧騒に頬が緩み、心が浮き立つのを感じていた。
この街はゾール地方を東西に貫く主要街道に古くからある宿場町だ。数年前に同地方を南北に貫く街道が新たに整備され、街道の交差点になったことで更なる発展を遂げようとしていた。
道すがら街の外に建築中の防壁が見えたが、手狭になる街区を拡張しているのだろう。
本拠地を離れて早3ヶ月――割り振られた調査区域も残り僅かだというのに、入手した情報の中に「大当たり」を感じさせるものはない。まあ…初めての遠征調査だし、移動手段が徒歩では調べられる範囲が限られてくるので当然の結果――と言えなくもない。
調査範囲の拡充には「移動手段の確保」や「人員の追加」が必要だが――この世界で入手可能な「馬」や「馬車」は仲間に経験者がいないため手を出しかねている。それに旅をしていて気付いたが、騎乗しているのは領軍の兵士や騎士ばかりで、馬車は商人や一般人の荷物運搬用、その他は基本徒歩だ。騎馬を所有している一般人や冒険者は極まれにしか見ない。
(この世界に本拠地製の四輪駆動車やオフロードバイクを持ち込めないしな。)
人員に関しては――本拠地の残留組は、俺達探索者ほど「安全が確保されていない環境下での、対象が定かでない調査活動」に慣れていないので難しい。
通信衛星に次いで複合探査衛星の打ち上げが進行中なので、そちらに期待だ。
当面、俺は情報と物が集まるこの街に投宿して近隣の情報収集を行う予定だ。
そのためにもまずは宿の確保――と、入市登録所の門衛が紹介してくれた宿屋へ向け、足早に雑踏を抜けていく。
◆◆◆
門衛の話によれば、街の急速な発展にインフラの整備が全く追い付いておらず、特に宿屋は常時満員御礼。あぶれた余所者は酒場で一晩過ごすか、色町の連れ込み宿を利用するか、軒下を借りて野宿するかしかないそうだ。
街に入ったんだから宿のベッドで熟睡したいっ!! この際フカフカで無くてもいいから――
そんな俺の切実な祈りが通じたのか、幸運にも一軒目で、宿の主人と揉めていた商人から部屋を譲り受けることが出来た。どうやら「知り合いが泊まる宿に転がり込んで宿代を節約したい」商人が、夕刻に戻ってくるなりキャンセルを通告し、宿代の支払いで揉めていたらしい。
「何かにつけてサービスを強要した迷惑客」だとしても、紳士的に振る舞えば宿も少しは態度を軟化させただろうに……大声でゴネるわ、口汚く罵るわ、もう双方引くに引けない状況だったので、下心込みでお節介を焼いてしまった。
(見るからに強欲そうな顔してたもんなぁ……。まあ、このランクの宿なら宿代に少しばかりの迷惑料を上乗せしただけで泊まれるんなら安いもんだ。)
宿の廊下を案内されながら、さっき出て行った商人の顔を思い出して苦笑いを浮かべる。あれだけガツガツ余裕のない顔をしていたら目の前を幸運が横ぎっても気付かないだろうに……。
「ちょっと待っててくださいね」
先に部屋に入った宿の娘さんが、慣れた手つきで【蓄光燈】を点灯していく。
【蓄光燈】はこの世界で「油を使ったランプ」に次いで普及している照明だ。内部に収めた【蓄光石】と呼ばれる水晶に似た鉱石が、励起状態になると蓄えた光を放出する性質を利用している。励起が強いほど光量が増えて持続時間が減り、弱ければその逆になる。
大きくて質が良い【蓄光石】ほど光量が強くて高価だが、油を使うランプに比べて燃料代が掛からず、熱を発しないので火災を恐れず使える利点がある。
本拠地でも組成や発光の仕組みを熱心に調べているが、質の良い【蓄光石】なら日向に8時間放置しただけで、我々の世界の室内灯とほぼ同じ500ルクスの光を12時間放ち続けられると言う。
(光であれば何でも吸収するので、曇りや雨の日は竈の火の光などを利用するらしい。)
因みに――【蓄光燈】から【蓄光石】を取り出したり、励起のON/OFFには専用の鍵が必要になる。
鍵がなければ光らすことも光を蓄えることも出来ないし、無理に【蓄光石】を取り出そうとすると盗難防止装置が【蓄光石】を砕いてしまう。砕かれた【蓄光石】は価値が大幅に下がるため、宿屋としては鍵さえ管理しておけば盗難を心配せずに済むわけだ。
(宿泊客は光量の調節しか出来ないので、就寝時は最低に絞り、それでも我慢できなければ布をかぶせて対処する。)
――光量からしてこの宿は質の良い【蓄光石】を使っているようだ。
部屋の右手側に【蓄光燈】が1台と、左手側に壁付け型が2台――計3台分の明るい光に満たされていく室内を覗いた俺は、中の上ランクの宿にしては値段以上の内装と調度に思わず顔を綻ばせた。
――何より浴槽のサイズが大きいのが評価が高い。
俺が借りた部屋は12畳ほどの縦長な一人部屋だ。
入口側から、間仕切りを兼ねた棚とセミダブルのベッドを右の壁際に、次いで二人掛けのソファを対面に配したローテーブル、一番奥は窓と風呂場で左右半々と言った構成で、窓際には洗面台と水瓶が置かれている。ソファは背もたれを倒せば簡易ベッドになるので最大三人まで泊まれる部屋だ。窓側に水回りが集まっているのは湿気や排水を考慮した結果らしい。トイレは室内に臭いが篭るので宿の裏だ。
「お客さんは運が良いですよ、最近じゃ宿が取れずに野宿する人が多くて……そうした人を狙った犯罪が増えてるから衛士もピリピリしてるんです」
仕事の手を休めず、そう話してくれた見た感じローティーンの少女も宿の立派な働き手だ。
手早く室内を掃除してベッドや調度を整え、入れ替わりに出ていった商人の忘れ物がないかチェックしていく姿には手慣れたものを感じる。そんな少女の頼もしくも微笑ましい姿を横目に、旅装を解いた俺はソファに座って装具の点検を始める。
ここ暫くは防具も武器も出番が少なかったから手入れに時間は掛からない。野生動物の撃退に使用したスローイング・ダガーが何本か欠品しているから、明日にでも鍛冶屋か武器屋を回って補充しよう。
(回収不能になりやすい投擲武器は全て現地調達品だ。)
「わっ!! 凄い!!」
声に驚いて顔を上げると宿の娘さんが目を丸くして俺の手元を覗いていた。
小太刀の研ぎ具合を見るために、立てた刃に滑らせる紙が端からスパスパ斬れていく光景が珍しいのだろう。そう言えば昔懐かしい実演販売員が似たようなことをしていると、小さい子供が釘付けになってたっけ。
キラキラ眼の少女に間近で見詰められるのには慣れてないので、頬を掻いて誤魔化す。
「ちゃんと研いであれば、包丁でも同じことが出来るよ」
小太刀を鞘に戻してテーブルに置き、床に落ちた紙片を拾い集めて屑籠に捨てる。
そういえばあの強欲商人の一番の被害者は彼女だと宿の客が噂してたっけ……
「へーーー。あ、すみません。ベッドメイクとお風呂の用意終わりました。食事はお風呂の後ですか?」
「ええ、まずは旅の垢を落としたいので、食事は後で……お願いします」
「じゃあ、お客さんの分は残しとくようお父さんに言っときますね」
ベッドシーツを手に、ペコリと頭を下げて部屋を出て行こうとする少女を呼び止め、チップを握らせる。嬉しいような困ったような顔で逡巡する少女に――
「迷惑掛けたからそのお礼。お父さんには内緒でね…」
小声で耳打ちすると、少女も上目遣いに悪戯っぽく微笑み返す。うん…中々チャーミングな共犯者の微笑みだ。
「ありがとうございます、タゥアキィさん」
小声で返礼した少女がパタパタと廊下を駆けていく音も心なしか軽やかに聞こえた。
それにしても……俺の名前って発音しにくいんですかね、師匠?
◆◆◆
施錠を確認した俺は、早速数日振りの入浴を楽しむことにする。
風呂と言っても窓際の半分――2畳ほどが板張りを施されずに一段低くなっていて、そこに陶器製の浴槽を置いただけのシンプルな空間だ。
床は「洗い出し仕上げ」を施したモルタルのような感じで、天井から50センチほど下がっているL字状の小壁と間仕切りで部屋の中に湯気が流れていかない様にしている。
排水は壁の穴から樋を伝って外に流す構造だ。
間仕切りはL字状の小壁に沿って引く一枚が普通で、この宿のように部屋を横断するようにもう一枚間仕切りを設けているのはランクの高い宿屋の証明だ。
風呂場の出入りの際にどうしても流れ出してしまう湯気を二枚目の間仕切りで遮断すると共に、何人かで部屋を借りた時に間仕切りの間が脱衣場として使えるようにしてある。
(宿のランクが下がると風呂はあっても間仕切りがない部屋が増えるが、こうした風呂は部屋が湿気るのを避けるため朝風呂が基本だ。)
宿の娘さんの説明によると、浴槽一杯分のお湯は宿代に含まれるが、おかわりは別料金だそうだ。
ベッドサイドの【蓄光燈】を手に、俺は意気揚々と風呂場へ行く。
(この【蓄光燈】だけ、照明のない風呂場やトイレに持って行けるように、床置き用の脚と壁掛けに使える持ち手がデザインされている。)
風呂の作法はこの世界でも変わらないが、俺は入浴と同時に洗濯もやってしまう。
風呂場の備品の盥の中に、背嚢から出した汚れ物や脱いだ衣類をまとめて放り込み、手桶でお湯を注ぐ。軽く濯ぐだけでみるみる濁っていくお湯を替えつつ、二~三度水洗いをしてから洗濯用洗剤を投入する。
シュワシュワと泡立ち、洗浄成分が衣類に浸透している間に手早く自分の身体を洗ってしまう。
手桶で掛け湯をし、泡立てた石鹸で頭の天辺から爪先まで念入りに洗う。今回のように数日野宿した後などは念入りに二度洗いだ。
因みに――使用している石鹸・洗剤はこの世界の商品そっくりに偽装してあるが、本拠地製だ。この世界で入手できる物は役立たずの粗悪品ばかりで、厄介な成分を使っているから極力使わない。探索に出る女性陣からはシャンプーやリンス・コンディショナー等々の要望が出されたが、この世界には存在しないので石鹸に成分を配合することで妥協した――らしい。
さて、身体が洗い終わったら盥の中の洗濯物を手早く洗う。濯ぐのは風呂に入ってゆっくり体を温めてからだ。
余談だが――お湯の張られた湯船を見て、肩までじっくり浸かりたいと思うのは民族特有の習性なのだろうか? 湯が少なかったり冷めてたりすると興醒めなので、浴槽が狭いときは洗濯はそっちのけで風呂を優先する。これは俺の鉄則だ。
「ふぅぅぅぅぅ……………………」
肩まで湯につかって、そっと目を閉じる。
ああ、今日一日このために頑張って働いたような気がしてくる。
ここのところ野宿続きで心身共に緊張や疲労が溜まっていただけに、入浴の喜びも一入だ。
充分風呂を堪能したら残り湯で衣服を濯ぐ。軽く絞って水気を切ったら風呂場に備え付けの物干し竿に通して形を整えていく。安宿でもない限りこうした風呂場は湿気が篭らず、乾燥しやすいように造られているから、そのまま干しておけば翌朝には大抵乾いてくれる。
本拠地製の洗剤は汚れ落ちや泡切れがよく、少ない湯でも綺麗に濯げるので重宝している。濯ぎ水が足りなくなったら宿の主人に頼んで井戸を使わせて貰うのだが、洗濯物を入れた盥を抱えて狭い階段を上り下りしていると擦れ違う人の迷惑になるし、ぶつかったりして地味に危険なのだ。
◆◆◆
「今夜のお勧めは臓物と野菜の煮込みとアーグの網焼きだよ。そこの黒パンはお代わり自由だからたくさん食べとくれ」
こざっぱりとした身なりに着替え、席に座った俺の前に恰幅の良い女将が景気よく料理を並べていく。風呂に入って時間がずれたので、一階の食堂は人もまばらだ。
これから情報収集を兼ねて夜の街に繰り出す予定なのでさっさと腹ごしらえを済ませたいところだが、並べられた料理を前にどうにも食欲が湧かない。
――そんな心の内をひたすら押し隠し、意を決して網焼きを一切れ口にする。
アーグは猪と豚の交配種――突然変異で巨体化した「イノブタ」だ。大人のアーグは成牛と遜色ない大きさにまで育つが、気性は猪譲りなので飼育が大変だと聞く。それでも、豚に比べて成長が早く、短い飼育期間で大量の肉が確保できるために、広く飼育されている。
(脱走した野良アーグの捕獲や駆除依頼は、駆け出し冒険者の良い収入源だ。)
アーグの肉は猪よりも癖が少なく、豚よりも脂身が少ない、どちらかと言えば豚肉よりの味わいだ。噛めば噛むほど脂の甘味が口の中に広がる美味い肉なのに、料理されたものは塩漬け肉を塩抜きせずに、更に塩で味付けしたんですか――と問いたいくらいに塩っ辛い。
臓物と野菜の煮込みはトロトロになるまで煮込まれたスープで、固くボソボソした食感の黒パンを浸して食べるのだが――これも味付けは「塩」のみ。
肉体労働の割合が高く、塩分補給を兼ねた濃い味付けが好まれるのは判るが、どう考えても「塩分過多」だ。ピルケースに体内塩分濃度の調整薬が無かったら、高血圧症や腎臓疾患になりそうだ。
(スープの塩分濃度を測ったところ、海水に匹敵する驚異の3.0%だった。この世界では、この塩分濃度でも薄いと塩を足す人がいるのだから――まさに異世界恐るべしである。)
俺の田舎には「ちゃぶ台返し」なる古典喜劇があるが、まさか異世界であの「妻が作った料理に難癖付けてちゃぶ台をひっくり返す家庭内パワハラ親父」に少しでも共感を覚える日が来るとは……思わなかったな。
――さて、この世界の食を取り巻く状況を説明しよう。
・塩は安価だが、遠く沿岸部から運んでくる為に「使えば使うほど贅沢」という価値観がある。
・薬問屋で扱っているハーブは、料理に利用するという発想があまりない。
・スパイスは種類も流通量もごく僅かなので、庶民の口には中々入らない。
・ワインビネガー擬きはあるのに、売れ残りの酸っぱい酒として安売りされている。
・味噌や醤油、魚醤と言った発酵調味料は存在しないか、地産池消で流通していない。
・砂糖は作られておらず、甘味料と言えば蜂蜜や果物ばかり。
・調理方法は「直火で焼く」か「鍋で煮る」の二択で、それ以外は広まっていない。
・生食は「獣に堕ちる」と忌み嫌われているため(果物以外は)何にでも火を通したがる。――と、食材ならともかく、この世界の料理に俺達が「食べる楽しみ」を見出すことは難しい。
味に関して言えば、本拠地から持ってきた携帯糧食の方が遥かにマシだが、数に限りがあるから食べ物が手に入る場合は我慢するしかない。
日々の食事は「栄養補給」と割り切っているが、不味そうに食べると周囲が気にするので――美味そうに食べる演技ばかりがドンドン上手くなっていく。
ああ――本拠地の美味しい食事が懐かしい。
◆◆◆
苦行を済ませ、食後のお茶で麻痺した味覚の回復を図る。
単体で飲んだ時は麦茶に似たスッキリした味わいのお茶だったのに、麻痺した味覚のせいで薄い塩水で入れたような変な味がする。許されるなら大量の水で口を濯ぎたい。
――本拠地に帰ったら、味覚を正常に戻す薬か、一時的に味蕾を覆って塩味を感じにくくする薬効成分を練り込んだ飴を作って貰おう。そう何十回目かの決意を心に刻む。
「すいません女将さん。ギルド酒場ってどっち行けば良いですか?」
食器を片付けに来た女将がテーブルを拭く手を止め、訳知り顔でニヤリと笑う。
猫が鼠をなぶるときの顔に背筋に悪寒が走る。
(マズい、話を聞く相手を間違えたっ!!)
「あんたも好きだねぇ……。遅くなるんだったら酒場の裏に連れ込み宿があるからそっち泊まりなよ。ここは最後の鐘が鳴ったら戸締りしちまうからネ」
額を冷汗が一筋伝い落ちる。
(違いますよ女将さん!! 確かにギルド直営の酒場じゃウェイトレスが承諾すれば一晩ゴニョゴニョ出来ますけど……誘われたことはあっても、疚しいことは一切してません!! 八重に誓って俺は潔白です!!)
ニマニマする女将さんの向こう側にジト目で俺を見る少女が……何故睨む!?
からかってる女将さんと違い、下手な言い訳は彼女の疑いを深めるだけだ。
「路銀の足しに何か良い仕事がないか、話を聞きに行くだけですよ。街に着いたばかりだから、今日はベッドでゆっくり休みたいんで……」
「今夜は……かい?」
駄目だこの人!! こっちの逃げ道を潰しにかかってる!!
ニヤニヤが止まらない女将さんに、「ふっ…」と溜息を吐いて達観したような顔で目を逸らす宿の娘さん――
(ちょっと待って!! 君いくつなの? その「所詮男なんてみんなスケベなんだから…」みたいな諦めた目をしないでっ!! 違うから、君の誤解だから……)
「酒場なら、大通りに出て西門の方に歩いて行きな。一番大きい建物の隣だからすぐ判る。すまねぇな兄ちゃん。うちのかかぁときたら、若い男からかうの好きでよ…」
ナイスフォローです、旦那さん!! もう貴方にはどんだけ感謝しても足りませんよ。
心の中で手を合わせ「後光を放つ旦那さん」を拝む。
「いえ、じゃあ少し出てきます…」
旦那さんを睨む女将さんに、ここが好機と見た俺はさっと立ち上がってそそくさと宿を出る。
男にとって敗北しか許されない戦場からの敵前逃亡……いや、せめて名誉ある撤退と今は考えよう。
宿場町「タフレ」のモデルは西欧風の城塞都市です。
街の発達に伴い石造りの建物が隙間なく建てられていますが、もう限界なので街区の拡張工事が行われています。
領主は別の街に居て、代官が治めています。
文中で宿の娘さんが主人公を「タゥアキィさん」と呼んでいますが、これは主人公がこの世界の文字に不慣れなために起きた『読み間違い』です。
英単語をローマ字読みすると変な読みになる――あれと同じ理屈です。
宿の食事を塩っ辛いと書いてますが、海水の塩分濃度が3.1~3.8%なので……どんだけしょっぱいかは判っていただけるかと思います。
美味しいみそ汁の塩分濃度は1%(高血圧注意!)と言いますから、その三倍の塩分濃度の汁物を平気で飲む人達って……。
この世界ではしょっぱい料理がデフォルトです。
この伏線を生かすか殺すか……思案中です。
P.S.
男の入浴シーンなんて誰得? とか言わないで……