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第二話 この世界から滅っしちゃいました

帯刀(たてわき)は俺と視線を交わして、しばしの沈黙(ちんもく)(のち)


ベンチから立ち上がるとこめかみをピクピクさせながら俺の方に向きなおった

先ほどの氷室(ひむろ)とのキスとおっぱいの感触の余韻(よいん)せいだろう

股間がギンギンに自己主張していた

(怖エーよ帯刀、頭と股間の両方に血が昇ってんじゃねーか)


「落ち着け帯刀・・・まーなんていうかお互いついてないよなーははは・・・」

「ははは」なんて声をだしてはいるが

口元が引きつってぜんぜん笑い声になってない


「誰かと思えばぼっちの神城(かみしろ)かよ」

(だから、ぼっち()ーな!)


「この後氷室を家に連れ込んで○○○や×××をやらせてから△△△して

その一部始終を動画で撮影して楽しむつもりだったのに

お前のおかげで全部パアだよ!」怒りのまま一気にまくしたてた

(何この人、"真性器覇王(しんせいきはおう)"の異名どうりおもっきし下衆(げす)なこと考えてたよ、

しかも最後に恐ろしいことをさらっとカミングアウトしちゃったよ)


俺は帯刀から眼をそらして、うつむきかげんに小さな声でつぶやいた

「こいつ腐ってる、腐りきってやがる」


「いつも教室では空気のくせに、無駄に存在感発揮してんじゃねーよ!

空気は空気らしくちゃんと空気読めよこのKY野郎!」と俺を怒鳴りつけた

(おまっ!? ちょっとそれ言いすぎだろ、一瞬マジ泣きしそうになったぞ)


俺は(うる)んだ(ひとみ)がバレないように気にしながら

「ぼっちみたく()ーな! こんなところでエロいことしてるお前らのほうがよっぽどKYだろ!」と

言い返そうとしたがイッちゃってる帯刀の()を見て

覚醒した自己防衛本能がそれを邪魔した


帯刀の怒りは周りの空気を蜃気楼(しんきろう)のようにゆらめいて見せた

まるで闘気(オーラ)をまとったかのようだった


いや、目の錯覚(さっかく)ではなく実際に帯刀の背後の空間がぼんやりと(ゆが)んでいた

(何だあれは、あいつは気づいてないみたいだけど)


帯刀は左手の拳に右手の手の平を重ねると"ポキポキッ"と嫌な音を鳴らし

マンガみたいなベタな威嚇(いかく)をした


そして俺の方に向かいゆっくりと歩きはじめた

いまだ股間をギンギンにさせたままの帯刀が俺に向かって息を荒くして近づいてくる様は

腐ったお姉ェ様の妄想をかきたてる、さぞやシュールな光景だろう


一歩また一歩と帯刀が歩みを進めるたびに

ぼんやりとした歪みはやがて闇のように暗い(うず)のような(かたち)に変っていった

俺の目の前でその歩みを止めたときにはその渦は長身の帯刀よりも(はる)かに大きく

その背後で禍々(まがまが)しく渦巻(うずま)いていた

(二人とも早く逃げたほうがいいんじゃないか? なんかヤバそうだ)


「帯刀待て、なんか様子がおかしいぞここ!」

しかしイッちゃってる帯刀が俺の言葉に耳をかすことはなかった


帯刀が股間を臨戦態勢にしたままで拳を振り上げ

「今日のところはクラスメートのよしみでこの一発で勘弁してやるよ」


腐ったお姉ェ様なら

(こぶし)なの? ギンギンになっちゃってる方なの? どっちの一発なの?」

()るの? それとも()っちゃうの?」と

妄想大爆発のお祭り状態になるような一言の後


「天に()っせい!神城」覇王キャラらしいセリフとともに

その拳を振り下ろしたときだった

(自分では"真性器覇王"ってキャッチフレース気に入ってたのか?)


禍々しい渦はよりいっそう大きくなると同時に俺たち二人を瞬またたく間に飲み込んだ

背後の異変に気づいていなかった帯刀はともかく

その存在を認識していた俺が身構える間もない一瞬の出来事だった


渦は俺たち二人を飲み込むと、やがてゆっくりと

空間に溶け込むようにして霧散(むさん)して消えてしまった


こうして俺たち二人は"天に滅っした"かどうかはともかく

この"世界から滅してしまった"のだった


ついさきほどまで茜色(あかねいろ)に照らされていた摩藤神社はすっかり闇につつまれ

あんなにうるさかったひぐらしの鳴き声はいつの間にか鈴虫の優しい音色にかわっていた



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