青
女は待ち続けていた。
もう、何年も生きてきた女だ。
彼女にとっては、どんなに待たされたところで、それはほんの些細な停滞でしかない。
――停滞。
女は思い返す。
書きかけの日記、ずっと会っていない友人、編みあがらないマフラー、返信の来ないメール。
そういったものが、彼女の人生を俯瞰してみれば、いたるところに散らばっていた。
顔のシワだけは年々刻々、増えていくというのに。
そういうトコロだけは律儀なのだ。どうも。
待たされている、という現実に立ち返った女は顔を上げた。
折りよく、歩行者用信号が変わったところだった。
女は少しだけ、背筋を伸ばして歩き出した。
瞳には、よく晴れた空が映っていた。
イメージを重層的に詰め込んだメタ実験小説。
短い文章の中にどれだけ情報を圧縮できるか。お好みの解凍を。




