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第10部;十月〜野外活動〜-1

※本文中に、真似してはいけない設定があります。

 交通法規では認められていないので、決して真似しないで下さい。

10;十月〜野外活動〜


 文化祭という行事を終え、ようやく一息付けると思いきや、野外活動という二年生のメイン行事が、山の合宿所で行なわれることになっていた。

 一日目は市内自由行動、二日目は登山、三日目は野外炊飯とオリエンテーリング、キャンプファイアー、そして最終日は体験学習といった、密度の濃い予定だ。


「ねーっ、牧場サ行くべな、ね」

 ポンはここ数日、この言葉しか口にしていない。

 文化祭が終わって、この野外活動の計画を練り始めてからというのも、ずっとこの調子だ。

 朝は「おはようございます」の代わりに、昼は「いただきます」、帰りは「さようなら」の代わりに言うものだから、周りの人間はたまらない。

「ねぇっ、牛乳美味しいし、ソフトクリームも美味おいしいし、ヨーグルトだってあるし……。ねぇったらぁ」

「……」

 ポンの食い意地は今に始まったことじゃないのだが、ここまで続けられると、呆れ返って言葉も出ない。あの有名な牧場の何処に、ポンの食い意地を活性化させる魅力があるのだろう。

「牛もいるよ。馬もいるし、羊さんだっているよヮ。ね、んだから行くべな。ねえってばぁ」

「ポン、頼むから、もういいよヮ。目当てはこれ?」

 シキは堪えかね、ガイドブックのある箇所を指差した。

 そこに書いてあったのは「ジンギスカン」という文字。

「あ、バレたぁ。あははははっ」

「今更バレたって……」

 照れ笑いをするポンに、一同は閉口した。


 しかし、実のところ、ポンがイチオシしなくても、初日に牧場に行くことに、コメチ以外は賛成だった。

「何で牧場なのヮ?今更牛なんか見たって、あなたたち農家じゃないから行きたがるのよ。見飽きるほど見ているわたしの身にもなってよね」

「まあ、それは一理あるけど……」

「ただでさえ田舎モンで、そんなのが更に田舎に行くのよ。せめてちょっとは市街地にいましょうよ。せっかく出かけられるんだっけね」

 だからと言って、市内でウインドウショッピングしようとは、つまらなさすぎるというのが、男子たちの意見だ。「ウインドウショッピングなんて、くそくらえだ」と言うのはカズヤ。「腹の足しにもなんねぇ」と言うのはポンだ。

 結局コメチが折れて、B班は有名牧場に行くことにしたのだが、コメチはやはり不満顔だ。


 当日は、七時半に駅の三階の新幹線コンコースに集合予定。

「うちの父親が、明日会社にいくついでに、送っていってくれるって」

 突然前日にナミから電話があり、彼らは全員自宅待機していた。

 アキラの所には七時に来ると言っていた。

―――遅い……

 荷物チェックを何度もしながら、アキラはエンジン音を待っていた。

―――!来た来た。

「アーキーラっ!おっはよーっ!」

 朝っぱらからテンションの高いコメチの声がした。

「今行く」

 アキラは大きな荷物を軽々と持ち上げ、引き戸を足で閉めて鍵を掛けた。

「あのね、ちょっと予定が狂っちゃってね、てこずっちゃったのよ」

「ええねん。車は楽やねんから。で、解決したんか?」

「ええ。あなたにも協力してもらうけど」

「は?」

 アキラは呆然とした。目の前にはセダンが止まっている。どう考えても、七人乗れないし、ピストン輸送するには遅すぎる。

「どうすんねん、これ?オレ、荷物持ってってくれたら、電車で行くけど」

「大丈夫よ。解決してきたから遅くなっちゃったんだっけ」

 ナミの父親にお辞儀をしたアキラは、ポンがいないことに気が付いた。

「ポンは?オレが最後やろ?」

 アキラの質問を無視し、コメチは車の中の面子メンツに話し掛けていた。

「サキ、カズヤ、どっちがアキラなのヮ?」

「おい、何のことや?」

 何だか嫌な予感がしてきたアキラは、車の中をのぞき込んだ。

「あなたの下敷きのこと。アキラはカズヤの上ね」

 よく見れば、ポンはナミの下敷きになって隠れていたのだ。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!シキ、お前、交換しろよ」

 アキラは慌てた。

「冗談。アキラの方が軽いし、背は高いから隠れるっちゃ」

「そういう問題じゃねえっ」

 アキラは助手席のドアを開けようとしたが、当然ロックされている。

「何照れてんのよ。往生際悪いよね」

 「おいっ!」と叫んでドアを揺さぶるアキラに向かって、ナミまで笑って言い放つ。

「簡単に言うなよ、ナミまで。二人ともオレより軽いじゃんか。オレは背が高い分、重いんだよ」

「でも、その背で五十キロないんだすぺ?栄養失調じゃないのヮ?」

「オレは食事には気を遣ってる。えぇーい、そんなことどうでもええんや。シキ!替われっ!」

「イヤだよ、ボク。一応男子だから」

 時間がないから車に乗ったものの、アキラはずっと騒いでいた。




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