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第4部;六月〜時空の旅人〜-5

 ようやくグループ名を決めることはできたものの、専門知識のない彼らでは、曲のコンセプトを、誰もやりそうもないこと、としか決められなかった。


「ま、いいってことよ。それよか、決まってないポジション決めなきゃ」

「あ、オレ、やっぱ吹奏楽部の部長として、フルート吹くさかい」

「お前、バカか。なしてバンドでフルートなのヮ?」

「イヤ、ブラスバンドやさかい……」

 サキの突っ込みに、アキラは抜け駆けし損なった。

「見た目的には、オレがドラムだべ。すると、アキラとカズヤの手が余るなあ」

「んじゃ、オレが作曲するさかい、唄うのはカズヤでええやんか。言い出しっぺなんやし、どうせ、カズヤ、お前、何も楽器できひんのやろ」

「え、まあ、んだけど……」

「っつーか、鈴木カズヤwith二年五組の仲間たちなんだし」

「いや、だからそれは冗談だって……」

 何やら必死なアキラの様子に、こらえきれずにコメチは口をはさんだ。

りないわねえ、アキラ。抜け駆けは許さないわよ」

 口篭もるカズヤなど無視し、コメチはアキラを捕まえた。これでまた、抜け駆け失敗だ。


「ぬ……抜け駆けって何やねん」

「何、寝言言ってんのよ。あなたの顔、知らない生徒は、校内には一人もいないくらい、有名なのよ。そういう人にこそ、前サ出てもらわないと」

 コメチの言う通りだった。入学早々に悪名を馳せた、背の高い女生徒を知らない生徒などいない。

「ま、作曲はやってもらうとして、音楽をやってる者として、気になるところがあるのよね、わたし。

 カズヤ、ちょっとこの音で声出して。アキラも、オクターヴ下げて合わせてみて。ほら、やっぱり」

 つい乗せられて、二人は声を合わせた。

「あーっ、そっくり!」

「でしょ」

 コメチは五人に親指を立てて得意げな顔をしていたが、反対にアキラは頭を抱えた。コメチが弾いたギターの音に合わせて出した声は、迂闊だったと後悔してしまうほど、カズヤとアキラの声質は似ていた。


「気にすんな。いいことだよ、オレらのステージの為には」

「何が、気にすんな、だ。オレ、絶対嫌やねん」

「意外と往生際悪いよね、アキラって」

 シキにまでそう言われ、いよいよアキラは頭を抱えた。

「可愛い顔して、結構キツイこと言いよるな、シキは」

「そんなに嫌ならさ、同じツインヴォーカルでも、メインはカズヤにやってもらおうよ。どうせアキラなら、それこそ何でもできるっちゃ。何でも屋さんになってもらうっぺし」

「シキ、大好きやわ。やっぱ一番優しいのは、シキだわ」

 アキラは諦めたものの、彼女の抜け駆け劇にかき消され、カズヤもヴォーカルは嫌だったのに、その一言が言えず、気が付けば強引にヴォーカルの座に据えられてしまった。

 彼が落ち込んだり、ねてみせたところで、誰一人として構ってあげるような者はいなかった。気付いた者すらいなかったのだ。


 可哀そうなカズヤなど放っておいて、話は進む。


「ところでやあ、練習とかってどうすんのヮ?運動部は市大会予選、そろそろ始まるっちゃ」

「ああ、んだなあ。カズヤ、うちらはいつだったかャ」

「八月の頭。バレーはいつだったっけ、シキ」

「夏休み入ってすぐ。ちゃんとこっちの練習にも顔出してよ、カズヤ」

「あたしも来月中旬」

「みんないいわよね。わたしらなんか、そこら中に応援演奏で引きずり回されて、休む間もなく盆のコンクールでしょ。秋には文化祭だし。アキラはソロコンテストだっちゃ。市予選は夏休み中でしょ」

「オレは平気やねん。どうせやり慣れた曲で出るさかいな」

「できる人はいいわねぇ……」

「日々の練習の賜物たまものって言うんや」

「んだなあ……。みんな忙しいみたいだし、いっそ誰かん家で強化合宿なんちゃって。アハハハハ」

 ポンは冗談のつもりで言った。サキの家だって、そんな息子の道楽に付き合ってくれる程、優しくないのも知っていた。


「あ、それ、ええやんか、ポン」

「はぁ?」

 予想外の展開に、誰もが驚いた。

「オレん家やったら近所に誰も住んどらんし、うるさい親も住んどらんし、防音やし、完璧やんか」

「ぼ……防音って……」

 彼女の家を見たことがない四人は特に、言葉を失った。サキとカズヤだって、この展開は予想外だ。

「何なら今から来てみるか。どうせ誰もおらへんのやし、構わへんで」

 珍しく積極的に自分の一面を明かそうとするアキラに、六人は結局強引に案内されて彼女の家にやって来た。




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