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第4部;六月〜時空の旅人〜-4

「あ、ちょっと待って、待って!」

 帰り支度をしている仲間の背中に、カズヤが声をかけた。

 責任者にまつり上げられてしまったカズヤの「明日さ、サキん家サ集まるべ」という呼び声にこたえ、一同はサキの家に集まった。


「で、なして集まったのヮ?」

 サキは全員分のお茶を出した。

「えー、せっかく秘密ってアキラが言ってたのに教室で話し合うのも何だし、今日は土曜で時間あるっけ、グループ名とか、どんなイメージでやるとかを決めようかと思ってさ。ほら、ホームルームで用紙提出しなきゃならないんだし」

 全員が目を丸くし、言葉を失ってカズヤを見た。天然パーマの天然パーの言う言葉じゃない。

「珍しく建設的なこと、言うやんか」

「そんなぁ」

 ようやく口にできたアキラの微妙な皮肉に当然気付くわけなく、単純なカズヤは照れて頭を掻いた。

 遠慮のないコメチだけがぷぷぷっと吹き出し、サキが彼女の脇腹を小突いた。


「それだけしっかり考えてんなら、何かいい案、あるんだべ」

「何、教えて」

 何だかカズヤの手に負えなくなりそうな雰囲気に、両手を振ってカズヤは慌てた。

「いや、そうじゃなくって。いいのが浮かばないっけ、集まってもらったんださ、もう」

「何だ、だらしないの。やっぱカズヤだもんね」

 コメチにはっきり言われ、カズヤは小さくなって言葉を続けた。


「だって、これだけ個性強いのが集まってんだぜ、みんな。オレが勝手に決めるわけにはいかないっちゃ。いいんだよ、『鈴木カズヤwith二年五組の仲間たち』でいいなら」

「ん〜、オレはそれでもいいよヮ。積極的だなャ、カズヤ」

 のんびり言うポンに、それこそ大慌てで「いや、そこはオーケー出すとこじゃなくって、ツッコミ入れるとこだって。オレ、嫌だよ」とカズヤは全否定して、カズヤは話を続ける。

「もう、名前はいい。例えば演奏する曲だって、それぞれ好きな曲とか違うだろうから、誰かのコピーバンドをやってステージに上がるなんてあり得ないわけだっちゃ」

 その指摘に誰もが頷く。

「すると、オリジナルをやるってことになるわけだろ。音楽のことなんかまるで解らないオレらが、一体どうすんのかなと思って」

 脱線しかかった話を最後まで話し終えることができて、カズヤは一気に脱力した。


「まあ、カズヤがそこまで考えたんだから、良しとしなくっちゃね」

「な、コメチ、さっきからオレのこと、かなりバカにしてないか」

「気の所為せいよ。で、どういう話し合いするの、これから」

 コメチは軽く受け流した。


「ほな、オレの方から一つ。楽器の件なんやけど、ちょっとした知り合いが、ドラムセットとキーボード二台、中古やけどキレイなやつを、セットで十万で譲ってくれるって人がおるねん。もし良かったらオレが買うて、一人一万五千円を、オレに返すってのはどうやろか。で、五千円が多くなるやけど、これは全員のお茶代ってことで、今日みたいな時に使う為に、サキに預けたいんやけど、どやろ」

「一万五千円くらいだったら、オレらでも何とかなるけど……」

 一同の表情がぱっと明るくなったが、去年から同じクラスの人間だけは、アキラの家の事情をふと思い出した。

「でも、アキラ、あなた一人暮らしだっちゃ。生活費、大丈夫なのヮ?」

「心配すんな。オレの金、どう使おうと、誰も何も言わへんさかいな」

 この上なくアキラらしい台詞なのだが、そういう言葉は中学生らしくない。


「それより、アキラ、あなた、やる気になったのヮ?」

「自分がやりもしないことに、簡単に十万出してやるようなお人好しに、オレが見えるか。その辺、コメチはよう知っとるやんか」

 しれっとアキラは言った。

「そりゃ、まあ……」

 平然と言ってのけるアキラに、コメチはちょっとだけ考え込むような仕草をし、そしてすぐに顔を上げた。

「ほんと、その通りだっちゃね。甘えさせてもらいましょ、アキラ。ついでに分割払いで頼むわ」

「オーケー。そうこなくっちゃ」

 アキラも明るく答えた。コメチのこういう割り切りの良さが、アキラも気を遣わずに済む、お互い気楽な面なのだろう。

「じゃ、次は真剣に、グループ名考えましょ。個人計画表に書くんだから」

「それと、一応曲のコンセプトもね」

「オレさぁ、B級アイドルっぽいの好きかも。イマイチっぽくて面白いっちゃ」

「ポンはB級アイドル……って、どういうのよ」

「オレ、プログレ」

「ボクもサキに同意見で」

 七人ですら話がまとまらないのだ。紙に書いているコメチも必死だ。

「もうっ、プログレって何よ。サキ、あなた、民族音楽が好きだったんじゃないのヮ」


 七人でのまとまりない話し合いの結果、ようやく決まったグループ名は……

《Time Traveler Boys & Girls》

 しかし、まさかこのベタベタな名前に、何やら意味があることなど、七人が知っているわけがない。

 彼らの全てには意味があるのということに……




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