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第4部;六月〜時空の旅人〜-2

「帰国っ!」

 珍しいアキラのギャグに、一同は一瞬凍り付き、それから爆笑した。

「うわっ、オレ、それ、次使う」

「嫌だ、アキラ、それをずっとトイレで考えてたの」

「ボク、もうダメ……。アキラが言うなんて……」

「シキ、笑いすぎよ。あたしもうつっちゃう……」

「そないにウケるとは、思ってなかったな。困っちゃうやんか……」

「後始末しろよな、アキラ」

 サキまで腹を抱えて、苦しそうに笑っている。とうとうカズヤも笑い出した。


 きっと、彼女なりに考えたのだろう、本当に。ギャグの質はどうであれ、カズヤは、自分の為のギャグだと思い、気分転換するチャンスだと気が付いた。これを逃したら、アキラは何も教えてくれなくなってしまうだろう。それはとても困るのだ。

 全員は、しばらく笑い続けた。ギャグが面白かったわけではなく、アキラがギャグを言ったということが、面白かったのだ。アキラも困り果て、一緒になって苦笑していた。


 笑いが一段落つき、一同は雑談で盛り上がっていた。もう誰も、テンションが低い者はいなかった。

「サキやぁ、何本ギター持ってんのヮ?」

 楽器が弾けないながら、カズヤはサキのアコースティック・ギターをいじっていた。

「んー、そのアコギだろ、あとそこのエレキだろ、押入にベースも入ってる。貸すならいいけど……」

 まるでカズヤにねだり取られるのを警戒しているようなサキの様子がおかしかったのか、それともカズヤが自分から話題を提供できるようになったのに満足したのか、アキラは少しだけ、二人に微笑みを見せた。少なくとも、カズヤはその微笑みを見て、ほっとした。


「サキ、絶対ハンド部じゃなくてバンド部の方が向いてるべや」

 ポンも楽器コレクションをいじった。彼のレベルも、カズヤ並みだ。

 それ以前に神森中にはバンド部はない。

「ほんまや。面白いもんも持っとるんやな。サンポーニャまで……」

 アキラも半ば呆れ顔で南米の楽器をつかみ上げた。

「ああ、それ。南米の特集をテレビで見てやぁ、吹いてみたくなって、つい買っちゃったのヮ」

 全員がため息をついた。サキはただの、凝り性の買物魔だ。


「ならさ、サキ、演奏したくなるすぺ」

 カズヤはサキに、何やら思わせぶりな質問をした。

「ま、そりゃまあなぁ……」

「んじゃ、文化祭、オレらでバンド組んで出てみない」

「はあ?」

 今度は、全員が大声を出した。まさかカズヤに限って、そのようなことを言い出すとは、誰も思っていなかった。

「今日は何なの?言いそうもない人が変なこと言う日だこた……」

 コメチは例によって、思ったことをはっきり口に出したのだが、それは皆が思っていたことだ。


「えー、だって、吹奏楽部は二人もいるし、サキとシキは何だかギター弾けるし、ナミはピアノ習ってるし、なぁ」

 一番呆然としていたのはアキラだった。いくら気分転換しろと言ったものの、何もここまで気分を変えてほしいとは、一つも思っていない。

「何、言うとんのや、カズヤ。言うのは簡単やけどな、実際やるんは大変なんやで。なあ」

 アキラは一同に同意を求めた。しかし、彼女の思惑通りにはいかなかった。


「面白そう!やるとしたら、どんなのやるのヮ?あたし、ピアノしか弾けないけど」

「やっぱ、サキはギターだっちゃね。ボクはベースの方がいい」

「オレ、何やっぺしなャ」

「カズヤ、お前、言い出しっぺなんだっけ、少しは責任持てよ」

「足りない楽器は、バイトでも何でもしましょ。サキにできて、わたしらにできないわけないっちゃ」

「コメチ、そういう例えは、オレ、すごく嬉しくないけど……」

「いいってことよ。決定。はい、アキラはこれでも吹いてて」

 コメチにサンポーニャを放られ、アキラは反論する機会を失ってしまった。こうなると置いてけぼりのアキラにできることといったら、肩を落としてため息をつくことだけだ。


「アキラ、どうせ学校生活を楽しみたいんなら、これくらい派手にハジけなきゃ」

 コメチは、アキラの本音を(えぐ)るようなことを言った。

「けどなぁ、バイトって、お前ら中学生やんか。何ができるっちゅうねん」

「アキラ、周りを見てごらんなさい。人手欲しがってる農家なんて、腐るほどあるんだから」

「オレん家なんか、小遣いけっから手伝えって言われてたんだけどやぁ、いっつも無視してたんだよな。損したなャ」

「ポン、それ、ボクにやらせてよ」

 アキラは言葉を失った。


『サキ、今こそ救けてくれ……』

『やんだこた。コメチのが正しい』

『鬼や、お前は』

 サキは知らんぷりを決め込んだ。

 アキラは完全に乗り遅れた状態だった。




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