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第4部;六月〜時空の旅人〜-1

4;六月〜時空の旅人〜


 昨日のアキラの予告通り、コメチは優勝祝いをやろうと電話してきた。当然ナミや、お祭り大好きポンが反対するわけがない。そうなれば、大人しいシキだってついてくる。

 昨日の今日でなければ、サキもカズヤも率先して大騒ぎをするのだが、残念ながらどうもその気分になれない。しかし他の五人の勢いに負け、結局サキは自分の部屋を、騒ぎに提供するはめになってしまった。


「あーっ!サキ、これ最新のステレオだっちゃ。いーな、いーな」

 部屋に入るなり、ポンは大きなスピーカーに目を付けた。

「いいだろー。バイトの結晶」

「あなた、まだやってたのヮ」

 コメチは、すぐに目くじらを立てた。

「だって、健康の為だもん」

 サキは自慢のステレオのスイッチを入れた。

「でも、何でこないな立派な家に住んどって、どうしてバイトでステレオ買うてんのや。親に買うてもらえばええやんか。だって、この一戸建、全部お前ら兄弟だけで使ってんやろ?」

 アキラは早速寛いで、部屋の中の冷蔵庫から、勝手にお茶を取っていた。


 サキの部屋とは、普通の一戸建の二階全部。一階は弟が使っている。同じ敷地内の立派な母屋を改築する時に仮住居用に建てた家で、ちゃんと台所も風呂もある、子供二人が与えられるには、とても贅沢な品だ。

「農家って、金持ちなんやな」

 自分の家のことなどさておき、アキラはつぶやいた。


「あ、そう言えば、この前雑誌で見たんだけど、このステレオ、フルモデルチェンジして、もうすぐ発売らしいよ」

「シキ……、お前って、可愛い顔して意外とキツイこと言うよな。悪気ないのは解ってんだけど……。ま、いいけど。次の目標はパソコンだっけ」

「いい加減、バイト辞めなよ、サキ。先生にバレるよヮ」

 ナミが心配そうに、控えめに言っても、「うん、バレてる」と、サキはお構いなしだ。

「でも、パソコンの前に、この間、ギターも買っちゃったんだよヮ。アコギ、欲しくなっちゃって」

 サキは周りに合わせて気分を立て直していたが、カズヤは未だだった。


 第一、サキとカズヤでは、脳への刺激の伝達速度が違う。

 カズヤは、昨日は部外者気分でいられても、時間の経過と共に当事者気分になってきていて、今、まさに、その気分は最高潮。昨日の帰り際のサキのようだった。

 この、二人の間の約一日のずれが、いつもサキが兄貴役になってしまう所以ゆえんなのだろう。

「えー、サキ、見せて」

 シキは、その買ったばかりのアコースティックギターを、何故かきちんと爪弾つまびいている。

「なして、ギターなんか弾けるのヮ、シキ」

「ヒ・ミ・ツ」

 誰一人として、テンションが一人低いカズヤなんかに構ったりせず、サキの玩具おもちゃに群がっていた。


「サキさぁ、どうせ身体弱いんやし、そないに楽器好きなんやったら、ハンド部なんかせんと、うちの部活に来ときゃ、ええやんか。なぁ、コメチ」

「え、わたしは嫌よ。幼なじみで、ずっとクラスも一緒で、この上部活まで同じなんて」

「そんなもんか」

「アキラには、幼馴染みはいないのヮ?」

「おらんなぁ。同じ所に長居すること、あんましあらへんかったし。だから、ほら、エセ関西人なんやわ。一貫した方言、ようしゃべれへんようになってしもて」

「だからか」

「やっぱ、判るか」

「うん、変だもの」

「んだ」

「そろそろ、ここの訛りもうつるかもしれへんで」

「やー、楽しみ。アキラが『んだ』なんて言ったら、あたし、ひっくり返っちゃうよヮ」

 楽しそうに他の皆と喋るアキラは、平然と嘘をついている。

「カズヤ、何や、元気ないやんか」

 アキラはにやっと笑った。まるでカズヤの心の動きを、すっかり見透かしているかのように。


『昨日は、いい返事で別れたのにな、カズヤ。サキはあんなに不愉快そうだったわりに、結構騒いでるじゃないか』

『オレはサキじゃない。それにオレ、昨日はよく解らなかったけど、よく考えると、アキラ、変だ。よく平気で嘘つけるなャ』

『オレの脳みそに言葉を送るんだって、よく意識してみろ。サキの方にも聞こえてるぞ。ホラ、お前を見てるじゃないか』

 アキラは「トイレ」と言って、席を外した。


『見えない相手とだって、集中すれば話せる。試してみろよ』

『お前は、どうして、平気な顔して嘘つけるのヮ?』

『よくできました。ご褒美に答えてやるよ。

 オレはな、目的の為なら手段を選ばないし、出身地なんて、この場において言う必要も、重要性もないからだよ。オレは今を楽しみたいし、他の連中が楽しんでいる場に水を差したくない。だから、陽気なオレを演じるんだ。

 それに、ここにいる全員は、オレが暴れた記憶を失くしたふりをしていることを、知ってるんだ。それでいて、こんなオレに合わせてくれてるんだぜ。オレとしては、それに応えて楽しむことが、礼だと思ってる。そういうこと。そっち戻るぞ』

 アキラは予告通り、勢いよくドアを開けた。




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