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第3部;六月〜球技大会〜-5

 初夏の午後七時は、未だ明るい。

 木々に囲まれながらも、風通しも日当たりも適度に良い場所に、桂小路邸はあった。

「いい家住んでんなャ」

あこがれだったんだ、森の中の一軒家ってさ」

 森の入り口まで迎えに出たアキラは、二人を大きな家の中に招き入れた。


「で、秘密主義で通っているオレが、何でお前らに自分のこと話す気になったのか、知りたいんだろ。サキだけならまだしも、カズヤまで呼び付けてな」

 冷たい麦茶を出して、アキラは二人に質問を用意してやった。「違ってたか?」

「いや、そうなんだけど……」

「ま、オレがこうなるように仕向けたんだけどな

「え?仕向けた?」

 アキラの言葉に、サキは思わず口を挟んだ。

「そう。サキは真面目だから、オレの思った通りの反応をしてくれる。知りたがりだけど、ちょっとオレが怖かったみたいだな。どうして怖いかも答えてやるから、ちょっと勝手に喋らせてもらうぜ。

 サキはオレのこういう性格を解ってくれてるから、今更何とも思わないだろうけど、ちょっとカズヤは解らなくて困るかもな」

 サキとアキラは、顔を見合わせて笑った。

「じゃ、お前らのその能力な。三人の共通項だから、とっかかりやすいだろう」


 後でカズヤは解ったのだが、アキラは本当に人付き合いが苦手で少人数だと話慣れしていなくて、冗談抜きで話下手だった。


「オレは去年、サキと同じ教室になった瞬間から、サキが能力者だって気付いてた。当然カズヤも、去年のうちから目ェ付けてた。お前ら、能力者の匂いぷんぷんさせながら、いつも一緒に歩いていたからな、判りやすいったらありゃしない。

 ここでのオレの仕事は、本当は能力者二人を見付け出したら終わりだったんだ。ところが能力者は入学式当日にすぐ見つかっちまった。転校したその日にまた転校じゃ、変じゃねぇか。

 本来の目的はあったにしろ、オレ自身、前の学校から離れたかったとこだし、見付けたお前らは、まるで能力のことを知りやしない。カズヤは隠してるし、サキに至っては気付いてもいない。そこでオレは残ってお節介することにしたわけだ。

 先ず、同じクラスのサキに能力を自覚させることにした。そうすれば、カズヤの方は何とかなるって思うだろう。

 大変だったよ。この真面目で常識的なお兄さんを落とすのに、一年以上もかかっちまった。他の仕事がなかったからいいけど」

 一方的に喋っているので喉が渇くのだろう。アキラはお茶を一口すすった。


「仕事って、お前、オレらと同い年だすぺ?何の仕事してんのャ?」

「悪いなぁ、カズヤ。それはちょっとな。仕事ってのは、相手に対して守秘義務ってもんがあるんだよ、な、サキ」

 アキラは、自分のことを黙ってくれていたサキに同意を求めた。

「ね、じゃあ知ってて、それで目覚めさせたって、どういうこと?」

 カズヤは超能力のことに、興味津々の様子だ。さっきの質問に答えてもらえなかったことなど気にしていない。

「今日までかかっちまうような、とても回りくどいことだよ。

 ほら、オレがいきなり、『私は能力を持っているあなた方二人を、探す為にやって来ました』なんて言ってみろ。そこの常識の塊のサキに、気違い扱いされるのがオチだろ。オレもそこまでバカじゃない。けどな、短気なオレにとっちゃ、めちゃくちゃ大変だったんだぞ、お前ら」

「そんなこと言われたって……、なぁ」

「ま、そりゃそうだ。でも、去年のアレは助かったぜ。あのバカ共が勝手に騒ぎ起こしてくれたからな、サキを掴むことができた」

 アキラはしまったとばかりに口を抑えた。サキの顔が凍り付いている。

「え、何?あれもお前の演技だったのヮ?」

 思わずいきり立ったサキに対して、アキラは両手を挙げた。

「違う違う。まあ聞け。あの事件は本当だよ。短気はオレの本性だから、勘弁してくれよ。本当に人間関係苦手で困ってたんだから。マジで感謝してるよ」

「なら、いいんだけど」

 サキは、麦茶を飲んで心を落ち着かせた。

「でもサキ、お前はどうして、オレが気になるのか考えたことあるか?」

「そりゃ、格好といい、態度といい……」

「それだけじゃない。お前は無意識にオレの能力に気付いてたんだよ。自分と似た匂いを感じてたんだ」

「犬かオレは……。もう少し、何つーか、キレイに言えないかなぁ」

 サキは苦笑した。

「悪かったな、口がこんなんで。

 ま、話を戻すけど、お前らの持ってる力は、テレパシーの他に、サキは念動でカズヤは瞬間移動。もしかしたら、これから増えるかもしれないけど、もういらないだろ。隠してたくらいだから、力がわずらわしいってこと、解ってるようだし。何でもできるってのも邪魔なだけだぜ」

「え、アキラは何でもできるんだ。いいなあ」

 カズヤは目を輝かせて食いついてきた。

「カズヤはいいやつだよな、気楽で。うらやましいくらいだよ」

「そんなあ」

 アキラはそんなカズヤを本心から羨んでいるように見えた。少なくとも、嫌味で言ってはいなかった。


「能力を使わないようにするのって、すごく大変なんだぜ。何でもできちゃうと、能力使わなきゃ生きられなくなっちゃうし、それに能力のこと知られてみろ。オレの全てが評価されなくなるんだ。むかつくだろ。だからオレは勉強するんだ。勉強は能力関係ないからな。なのに、誰もオレのことを天才扱いしやがる。努力すれば誰も同じくらいできるようになるはずなのに、これじゃ、余計に力のことバラせやしない」

「でもさぁ、力使わないであれだけできるんだっけ、天才って言われてもなあ」

「しっ、叱られっとヮ。今、言ってたろ。使わないでできることは、他の誰もができて当然だって」

「言ってることは正しいのに、失礼だよな、サキは。オレ、年中怒ってるみたいじゃないか」

 アキラはサキを小突いた。

 これ以上アキラをからかって、反撃されたらかなわない。サキは少し話題を逸らす為に、他愛無い疑問を口にすることにした。まさかそれが、本題へ通じる質問だとは思わずに…。




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