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05 ―あの日のこと― side Keemun

キームン視点。

side Keemun




「あぁ、本当に愛らしい」

 ルゥの部屋から自室に戻り、先程の彼女を思い出す。

 本来ならばあのような時間に女性の部屋へは訪れるべきではないのでしょうが今日だけは―――どうしても会いたかった。


 彼女に出逢った記念日なのだから。




 キームン・エディアール

 私は今はそう名乗っています。


―――エディアール。自身で主を選ぶ精霊に愛された一族―――と言われているようですが、事実でもあり嘘でもあります。


 人間族の世界を周る。その為に必要な地位というのが長年我々が使用している『エディアール一族』



 私は人間族ではありません。 精霊です。


 

 


 ちょうど今から3年前。


 私は旅の途中で寄った森に壊れて放置されていた魔術具の異常な魔力に影響され、暴走状態に陥ってしまった小精霊を助けるために魔傷(ましょう)を負いました。


 万全の通常であればこんな事では簡単傷つかず、たとえ魔傷を受けても動けないほどのものは受けないのですが、養父にある条件下でしか解けない封印を施されてしまいました。

 


―――ルゥに出逢えたことには少しは感謝していますが―――えぇ、絶対にお礼は差し上げますよ。絶対に……。ふふふ



 あの時、魔傷を受けて動くことすら困難になってしまった私は精霊の姿しか保てずわずかに降り注ぐ月の光で癒すしかない状態でした。

 


 もう、このまま消えていくのかと諦めたときに彼女が現れた。



 今でもハッキリと思い出す。

 月の光を受け、珊瑚色の髪は春の花の様に優しく輝き、あの神秘なる紫苑(しおん)色の瞳をキラキラとさせて私を見つめていた。




*********************



「だいじょうぶ?おにいちゃん」

「だ、れだ」


 霞む頭で、それでもなんでこんな森に小さい人間が?と思う。

 キラキラと輝く人間族の幼子。


「わたし、ルゥ」

「な、んで…」

「わかんない。おまつりいったの。おじさんルゥにここにいろって」


 誘拐か?まあ、もうすぐ消滅してしまう俺にはなにも出来ない。出来たとしても助けようとは考えないな。



「おにいちゃんしろくてきらきらで、きれーね」

「う…そ……だ」



 人間は精霊を忌避するか利用するかだ。

 先程のあの捨て置かれた魔術具もそうだ。あぁ、もう……。




「おにいちゃん、いたいの?」

もう、構うな

「そうだ!おかーさまがしてくれるおまじないしてあげる!」

無理だ

「え~とたしか…〈〈フェク・アル・ロセゥ(いたいのとんでけー)〉〉?」

「なっ!?」


―――突如吹き荒れる白磁と漆黒の粒子

 こんな時代にこんな場所でこんな幼子が古語を!?なんていう

―――


 一瞬で魔傷は癒され、しかも養父にかけられた封印まで消え失せた。

 それでも魔力の奔流が収まらない!このままでは!



 急いで魔力が感知できないように結界をはり、いつの間にか集まっていた光と闇の精霊に手伝ってもらいながら、いつも以上に扱いやすい力を操り二色の粒子に働きかけ何とか収める。


 奔流の中心にいた彼女の何もなかったようでキョトンと俺を見上げていた。



「なんて子供だ…」

「こどもじゃないよ、ルゥだよ。あなたたちは?」

「俺は……。キームンだ」

『ウィッティだよ、お姫ちゃん』

『アーテ』

「きーむ? うぃーてぃ? あーて!」

「キームン」

「キィ?」

「もう、それでいい」

「キィ!あのね!」

「なんだ?」

「かみのけさわって、いぃ?」

「は?」

「しろくてきらきら、だから!」

「なんで?」

「きれーだから」

『坊や、触るくらい良いじゃないか』

『減らない』

「あのなぁ……」



 会話は成り立っていないが……会話!?って今、俺は精霊に戻ってるんじゃ……。

 慌てて体を見回すと、髪は月白(げっぱく)だし目線の高さも戻ってる。

 人間には精霊は見ることは叶わない。例外は加護を与えた精霊のみが見えるはず。じゃあなんでこの子は―――



 彼女を見るとキラキラと紫苑(しおん)色の瞳の中に(ステラ)が煌めく。



―――あぁ、実在していたのか。不可視のものを見ることができると云われる『真実の瞳』。


 だからか、(精霊)を怖がらない。


 腑に落ちた。あの時、初めて彼女に話しかけられた時には分かっていたんだ。


 彼女の側は心地良い。彼女を守りたい。一緒にいたい。



「なあ」

「ん?ルゥだよ」

「ルゥ。俺達、実は精霊」

「精霊さん?」

「もうすぐ、俺たち見えなくなると思う」

「え!やだ!」

「そっか」

 

 なんか嬉しい。

 だから彼女を守るのに不自然にならないような年齢の少年に姿を変える。10歳くらいの黒髪で深緋色の瞳。エディアールの証と地位が今は有難い。



「これでいつでも側に居られるよ」

「キィ、かっこいい!」

「っ!(///)」

『あっはっは、青春だねぇ坊や』

「ウィッティ!!」

『頑張れ?』

「うるさいっ!」

『そんな口調は侍従には相応しくないぞ』

「……。わかってます」

『ルゥ、寝そう』

「え?あぁルゥそんなとこで寝ちゃだめだ!」

「ねむ~…くぅ」

「はぁ…」


 なんとか地面にぶつかる前に抱き寄せることができた。間一髪。

 幸せそうな寝顔を見ているとこっちまで嬉しくなるなんて不思議だな。



**********************



 あの後、誘拐された記憶を封じ込めた。

 移動してきた旦那様と奥様に〔白磁と漆黒の粒子〕を理由にしてエディアールの一族の地位でルゥの侍従になることが出来た。


 人間族は未だに苦手だけれど、君の周りは温かい。



 これからはずっと貴女を守るよ、ルゥ――――――








お読みいただきありがとうございます!


*おまけ*


『このヘタレ』

「ヘタ!?」

『精霊時と心の中でしか呼び捨てにしてないじゃないか!』

「それは、けじめを付けないと…」

『アイリス送ったのは良し』

「なっ!」

『いやいや、そこはパンジーだろ?』

『じゃあ、鉢植えのモモで』

「いい加減にしてください!」


キームン、一年で変わりました!w 色々と。


※アイリス(切り花)=あなたを大切にします

※パンジー(切り花)=思想、私を思ってください

※ モモ (鉢植え)=あなたに心を奪われた


他にも意味はあるようですが、今回はこれで。

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