04 ―たんじょうびプレゼント―
20150422修正5歳→7歳
ピンク色だったから甘いと思ったのに……。しくしく
リモン、おそるべし。
でも、お母様が〈癒しの光〉かけてくれました。
あったかくて、ぽわぽわして気持ちが良いのです。思わずふぁ~と欠伸がでちゃいました。
「あらあら、ルゥちゃん。まだ眠い?」
「だいじょうぶです、お母さま」
「楽しみで眠れなかったんじゃないのか?」
「ちゃんと、寝ましたよ。お父さま」
「寝られなかったのは貴方でしょう、リシー?」
「うぅ、イヤそれは……」
「お父さま、寝てないの?」
「そうなのよ。お父様ったらルゥちゃんのお誕生日だから張り切っちゃってね、明け方まで色々と集めてたのよ」
「今、言うか?」
「うふふふふ」
お父様もお母様も楽しそう~
「リシー?、準備は終わったのですか?」
「ああ、終わったよ。それこそ君のいう徹夜でね」
私達の側に来てふわっと私を抱き上げるお父様。おー高いです!
「お父さま、だいじょうぶ?」
「平気だよ、ルゥ。心配してくれてありがとう。昔、宰相に3日間くらいぶっ通しの仕事押し付けられたことあるからな」
「うふふ、あの時は回収に行きましたね~」
あははーと遠い目のお父様。た、大変なことはまだまだ世の中にあるのですね……。それと何か聞いてはいけない言葉もあったような?
あとお母様? 回収って??
あ、お父様が遠いところに行っちゃう? さっき、キィにしてもらったようになでなでしましょう!
「お父さま、すごい!」
「うぅ、ルゥは優しいなぁ」
「はいはい、そろそろ行きますよ」
「奥さんが冷たい…」
「ルゥちゃん、お父様置いて行きましょうか」
「スミマセン」
「ふふ、冗談ですよ」
お母様強し。
「どこにおでかけですか?」
「外には出かけないよ。ルゥへのプレゼントがある場所にね」
「プレゼント?」
「そうよ、私達からルゥちゃんに」
そうでした! 今日は誕生日でした。
お母様のむぎゅ~とリモンの酸っぱさで忘れていましたー。
「じゃ、出発~」とお父様に連れられて向かった先は厨房?
料理長さんの新しいお菓子でしょうか? でも、それだったら食堂かサロンのハズですし。
頭の中が疑問符でいっぱいの私を見て両親は嬉しそうにニコニコしてます。
横を向けばキィもセラもエネも他の皆さんも何か知っているのか笑顔です。
……ちょっと仲間外れ。
ちょっぴり頬を膨らませればそれに気づいたお母様にぷにっと頬を押されます。
「拗ねないの。仲間外れじゃないのよ?みんな貴女に喜んでもらおうとしてるのだから」
「はい、ごめんなさい」
謝らないで、笑顔よ。と俯きそうな私をお母様が笑顔をくれます。
「そうだぞー。お父様、頑張りました!」
「リシーは調子に乗らない」
見上げれば、にかっと笑うお父様にお母様、バッサリ。わぉ。
じゃ、開けるぞ~と扉が開かれた先にはいつもの厨房の片隅に見慣れない場所が。
低い台?
………もしかして!
バッとお父様を見上げ、次にお母様を見ると二人とも満面の笑み。
嬉しくて思わず涙が出てきそうです。
声も出ずあわあわとしていると両親の嬉しそうな声。
「そうよ、ルゥちゃん専用の場所よ」
「ルゥはお菓子作りたかったんだろ? そわそわしてるって料理長から言われてな」
「でも、まだ火を使ったり危ないのはダメよ? 切るのは練習してから」
「必ず料理長か副料理長に声をかけて、セラとキィは器用だから良いとして、エネはまだダメだな「えー」「こら、エネ!」必ず一緒に、ここが忙しくない時間にな」
「はい! お父さま、お母さま。ありがとうございます!!」
嬉しくてぐすぐすと泣く私を優しく撫でるお母様の手とポンポンと背中を叩いてくれるお父様。
「お父さま、お母さま大好きですー」
「私もよ」
「大好きだぞー!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめてくれるお父様とお母様。あ、デジャヴ? ちょっと苦しくなってきました!
誰かタスケテー!
「お嬢様!?」
「「「わー! お嬢様がーーー!」」」
私の手がパタパタしているのに気づいてくれたキィの一言で使用人さん達に救出されました。
危機は回避された!
慌てるお父様とお母様が侍女長と家令に怒られている間に私は一息ついたあと説明を聞き、事前に使用確認してから使うことができる事になりました。
早く色んなお菓子を『思い出して』作りたいです!
その後、キィからはノートとペン。セラとエネからはエプロン。使用人一同と言うことで子供でも使える道具一式をいただきました。おーミニサイズってあるんですね!
皆様、ありがとうございます♪
夕飯には料理人さんたちがたくさんのご馳走と美味しいデザートを作ってくれてました!
料理長お手製ロールケーキはふわふわで絶品でした。
大満足です! ごちそうさまでした!
私は幸せ者ですね♪
―――――その夜。
就寝の支度も終わりセラとエネも下がり―――もう寝るだけとベットの上で窓の向こうで雲に隠れたり出たりしている月を見上げているとコンコンというノックの音と「お嬢様?」とキィの声。
こんな時間に珍しい。何かあったのでしょうか?「どうぞ」と声をかけると「お休み前にすみません」とキィが入ってきました。
「ルゥ様、お誕生日おめでとうございます」
朝は言えなかったので。と、いつものふんわり笑顔で一輪のアイリスを差しだします。
「きれい……。キィ、ありがとう!」
そっと受け取るとちょうど月が雲に隠れたせいか部屋の中がうす暗くなる中、まるで今この瞬間に摘ん
できたようなキラキラとしているアイリス。
「喜んでいただけて嬉しいです。それと……《 》」
キィがそう何かの言葉を発すると私の周りに色とりどりのキラキラと輝く粒子たち。
くるくると一色で回るものもあれば、何色かで帯状になったりまたバラバラになったりとまるで踊っているみたい。色が集まって、そして、弾けるように溶けて消えていきました。
「きれー……終わりですか?」
「すみません、ちょっと魔力切れです」
「わゎ! だいじょぶ?」
「平気です」
『坊やったら見栄を張るんだから』
「ウィッティ!!」
「あれ?ウィッティ?」
『そうよ、お姫ちゃん』
『私もいる』
「アーテ!」
「あれだけ魔力持っていって直ぐにアレが消えた訳はこういう事ですか……」
「キィ?」
『坊やはね、お姫ちゃんの〔瞳〕が発動していなくても精霊の光が見える空間を作って見せたのよ』
『全種に頼むの無謀』
「貴女方がルゥに話しかけるために半分以上持っていかなければもう少し保っていられた!」
『坊や、口調』
「!!!」
月もまた出てきて明るくなった室内なので、珍しいく失敗したのが恥ずかしいのかちょっと朱い顔が見えます。キィのこの表情は初めてかも。「花を活けてきます!」とすぐさま後ろを向いちゃいました。貴重なの表情だったのにざんねん。
5歳しか違わないのにキィは大人びているから、たまにしか出ないこういった表情は見ていて嬉しくなります。
『ウィッティ、からかい過ぎ』
『ありゃりゃ』
「ウィッティ、アーテ、ひさしぶり」
『私らはいつでも側にいるんだけどね、話すのは久しぶりかねぇ。あぁ誕生日おめでとう、お姫ちゃん』
『おめでとう』
「ありがとうございます!」
『早く大きくおなり』
「ぜんしょ?します!」
『そろそろ時間』
「もうですか?ざんねんです」
『坊やに頼んで〔瞳〕のコントロールを学べば会えるさ』
「ほんとうですか!?」
『本当。またね』
「はい!」
「やっと静かになりましたね」
「キィ、ありがとう」
「喜んでいただけて幸いです」
まあ、最後のは私の本意ではないのですが。と少し疲れた表情で花瓶持って戻ってきたキィですが、アイリスをベットサイドに置いた時は笑顔に戻ってくれました。
ふゎ~と欠伸が出はじめてしまいました。もうそろそろ5歳児は寝る時間です。もっとお話ししたかったけど。
「それではルゥ様。失礼いたします」
「キィ、おやすみなさい」
「……ルゥ様。ちょっとよろしいですか?」
「はい?」
と、私の髪をひと房すくい上げそのままキィは口元に持っていき―――え?
えっと? ど、どうしたらいいの??
思わず見上げて固まる私にキィの一言。
「ルゥ様。奥様が明日から淑女教育を始めるとのことです。お伝えするの忘れて申し訳ありません」
「え?」
そう言ってにっこりと笑顔で優雅に礼をして「おやすみなさい、良い夢を」と部屋を出ていきました。
最後の最後で混乱の塊を置いて行ったキィでした。
え?どうしよう! 寝られないかも!? でも、取り敢えず寝てみよう!
―――――そのままセラとエネが起こしに来るまでぐっすりでした。あれ?
お読みいただき、ありがとうございます!