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私、乙女ゲームしたことないんですけど?【連載版】  作者: たばさ
彼らとのこれから
36/41

35 ―新しい目標― 

タイトル変更 

内容分割しました。修正前35話前半部分の医療部の話のみですので読み飛ばし可。

修正前より最後の部分に少しだけ追加してありますが、内容は変わっていません。6/3

 ニールが前テトレー公のところへ行って3日。我が家は少し……いえ、かなり静かになりました。

 キィもお父様からのお願いでニールの行きの護衛を頼まれて一緒に行っています。

 送るだけなので明日には戻って来るそうです。


 ニールもいない、それからずっと一緒にいたキィが3日もいないのは初めてで寂しさを感じます。

 ……これから離れることに慣れなくてはいけないのに、決心が鈍りそうになるので休みなく勉強をしてしまい、セラに止められるのがこの3日間の私でした。



 ニールを送って来たキィは出発前の悲痛な表情が少し緩和されていました。

 どうやら彼自身の中でなにか落ち着いたらしく、また以前のような振る舞いに近い感じに戻っていました。

 私の方がまだぎこちないのですが、それでもキィの笑顔に励まされて少しは私自身も落ち着いてきたのかもしれません。

 お母様の淑女教育の強化もだんだんと効果が出てきて、顔に出さないように出来るようになったのも落ち着いて行動出来るようになった原因だと思います。

 


 それからまた3日経って……ニールが出かけて1週間たったころ、適性審査の許可が出たので今日はお母様と魔術院に赴いて受けることになりました。

 キィは留守番です。転移の許可と取らなかったわけではなく、魔術院に行くとあの試合を見た人達に捕まって勝負を挑まれてしまうのです。

 今日はお父様がいるのでそのようなことは起こらないと思いますが、何か用があるそうです。

 キィが自分の事をしてくれるのは嬉しいはずなのになぜか複雑な気分なのです。緊張してるからかな?


 お父様が迎えに来てくださったので3人で転移します。

 こうやって行くのは魔力判定の時を思い出して少し笑みが浮かび、それを見たお父様に私の頭をぐりぐりと撫でられて髪形が崩れる!と思ったらお母様が笑顔でお父様を扇でバシッと叩いていました。

 そんな普通の事が嬉しくてちょっと泣きそうになりましたが、笑顔を保ってお父様とお母様を引っ張って先を急ぎます。

 ちょっと子供ぽかったかもと後で落ち込んだのは内緒です。



 魔術院に着くとお母様が注目を浴びました。

というのは今日のお母様は魔術師団医療部の白いローブを纏っているので滅多に現れない人物&団長(お父様)と一緒という事で目立っています。医療部の階級色は上から白・薄紫・ベージュだそうです。


 ちなみに私の衣装はまだあの黒のフリフリです……。髪形だけは三つ編み一つだけを死守しました!

 ……もうそろそろ変更して欲しいですよ、お母様。恥ずかしいのです。


 私はいそいそとお父様の後ろに隠れましたが、すぐに抱っこされてしまいました。

 お父様の意地悪~!と恥ずかしくてお父様にしがみ付いたのは、私の気持ちを逸らせるために仕向けられたのだと後で気付きました。



 主要な方々にだけ挨拶を済ませたお母様とお父様に連れられて、以前と同じあのくねくね迷路のような廊下をまたも抱っこされたまま連れられて最奥の部屋へ。

 以前と同じ栗色の扉の部屋に入ると中には魔力判定の時もお世話になったインディゴ色のローブを着たリッジウェイさんが奥側の2つのテーブル内の片方で何か作業をしていました。


「すまん、遅くなった」

「いえ、捕まると思っていましたから。丁度ですよ、団長。キャンディ先輩、お久しぶりです」

 ルフナ嬢もこんにちはと笑顔で挨拶してくれるリッジウェイさん。彼を見ても特に私の身体は固まらないようです。お父様に抱っこされてままだからかもしれませんが。検証が必要でしょうか?

 それよりも……


「お母様が先輩ですか?」

「そうだよ、彼は副団長兼医療部主任でね。ディーは前の医療部主任だったんだよ」

「僕はキャンディ先輩にとても鍛えられましたから」

「そうそう、ディーの教育は厳しいらしいと評判で」

「うふふ、そんな事はないわ。試してみましょうか、リシー?」

「……」

「え~と、先輩!準備終わりました!」

「あら残念」

 そう言ったお母様の手にはいつの間にか救急箱のようなものがあって……治療道具に見えなかったのは気のせいでしょう。お母様は最恐ですね……イエナニモ考えていませんよ、お母様!

 お父様は入り口付近で正座を命じられました。


 準備が出来たとのことなのでお母様と机に行くとそこには魔術紋様が書かれた紙と何か液体と小さな石の入った透明な花瓶のようなものが置いてありました。

 適性審査とはこの紙に片手を置いて魔力を流してもう片方の手を液体の方へ手をかざすとどの属性が得意とかどんな仕事が向いているかを見ることが出来るそうです。


 〈判定者〉のギフト持ちであるリッジウェイさんのみが出来る方法だそうで、ギフト持ち以外の人にも出来る方法を考えているそうです。

 閑話休題。


 言われたとおりに魔力を流すと花瓶の中の石が様々な色に輝いて液体の中を舞っています。特に白と黒の石が元気よくクルクルと回っていて楽しそう。

 魔力を止めて下さいという声で流すのを止めると光っていた石の色が弾けるように消えていき――まるで〔花火〕のようで――キィに見せてもらった魔力の粒子に似ていて……。

 顔には出しませんでしたが、ちょっと切なくなりました。


 鑑定結果が出るまで待つという事でお母様とソファーの方へ向かいます。お母様が嬉しそうなのは何か結果に思い当たることがあるのでしょうか。


 正座から解放されたお父様も一緒にソファーに座っていると鑑定結果が出たようで、見せてもらったのですが……読めませんでした。字が読めないのではなく、専門知識のない私には解読不可なものでした。

 それはさておき。


 鑑定結果はほとんどのものに適性があったそうですが、医療部と諜報部の適性が高かったようです。

 医療に関してはお母様同じ光の精霊の加護持ちという事もあったのでしょうがまさかの諜報部。これはもしかしたら闇の精霊の加護かもしれませんが、今のところ加護持ちの事は秘密なので選ぶことはないでしょう。


 医療部では安定的に〈癒しの光(アルブス・アージェ)〉を使えるようになることや風邪など魔術を使用しても治らないものに対しての薬の調合を学ぶそうです。

 薬魔草(ハイ・ハーブ)も取り扱うそうなのでちょっと楽しみ。お菓子にも使えないかと考えています。

 目指せ〔記憶〕にある栄養補助食品!


 ニコニコ顔のお母様と対照的にお父様はどうやら私には医療部にというよりは魔術師団に入って欲しくないそうでちょっともめましたが、お母様の笑顔の一言で私はめでたく医療部に入ることが出来そうです。

 しかし渋ったお父様の譲れないという提案で、今すぐではなく私の症状が落ち着いてからという事になりました。


 う~ん、解決策はないものでしょうか。

 色々な人と会うというのは却下されてしまいましたし、あの言葉を使うのは違う気もします。

 相談できる人は……両親以外に〔記憶〕の事を言うのは決心がつかないので、今のところ誰もいません。

 お母様の言う時間が解決してくれるのを待つしかないでしょうか。


 とりあえず適性審査も終わったのでリッジウェイさんにお礼を言って帰宅することになったのですが、折角なのでお母様の権限で薬魔草の温室を見に行けることになりました。


 途中まではお父様と一緒だったのですが、上級職の色のローブを着た人に引きずられていきました。時間になっても戻ってこない!と探されていたそうです。……お父様がご迷惑をおかけしました。



 医療部の温室に着くと魔術院の入り口以上にお母様は大人気でした。お話が終わらないようなので、ルピアさんという温室の管理人の立場にいる方に案内してもらえることになりました。

 ルピアさんはお母様の元同僚で今でも仲が良いので、私の案内を買って出てくれたそうです。


 温室の中は色とりどりの薬魔草が育てられています。

 近づきすぎないという条件で色々と見せてもらい、今すぐには無理ですが医療部に入れると言うとルピアさんは喜んでくれて一緒に温室のお世話をする約束をしました。


 温室から出てもお母様はまだお話をされていたので、ルピアさんに連れられてお母様から見える位置にある東屋で休憩させていただくことになりました。



 飲み物を取って来ると言うルピアさんを待っている間に考えます。


 医療部に入ればきっと誰かの役に立つことが出来て……皆様の手伝いができる。

 しっかりすれば、心配をかけることも少なくて済むでしょう。

 私の目標の“笑顔にしたい”にもあてはまるよね……。


 気持ちの良い気候と優しい風に木々の擦れる音が心地良くだんだんと瞼が落ちてきて―――




いつもお読みいただきありがとうございます。



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