表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/41

25 ―約束のデート?―

デート?の部分はある意味次回。



 色々あった『花祭り』も終わり、早いもので10日後には『剣術大会』が開催されます。



 『花祭り』にあった騒動により一時は我が家に人が押し寄せるなどありましたが、お父様の説得――アル姉様曰く命令(脅し)という名のお願い――で、今は平穏です。


 変わらないのはお菓子作りとセイ様やディン様との関係性。離れたほうが良いのかもと考えもしましたが、心優しいエリア様やジャスミン様に『今まで通り……今まで以上に仲良くしてね♪』と言われてしまっては断れません。私も皆様と離れるのは寂しいので変わらないことが嬉しいです。


 変わったことは、今まで以上に厳しいお母様の淑女教育とキィとお父様による魔術勉強。覚えることが多くて頭がパンクしそうになりますが、心の中で『目指せ!アル姉様!!』と思って頑張っています。

 


 ニールは私以上にたくさんの変化がありました。

まずは魔術師団の見習いになってお父様と毎日ではないですが魔術院に通っています。魔術師団下級のカーキ色のローブもとても良く似合っていて、格好良いのですよ。

ニールは全属性持ちで魔力量も多いため、期待の新人らしいです。うふふーうちの義弟は凄いのです♪

 それから次期侯爵としての勉強です。こればかりは私はお手伝い出来ないのが残念です。この前のお茶会の時に「女侯爵って素敵ですよね♪」と言った時は全員に猛反対されました。そんなに頼りないですかね。むー

 ニールと一緒の時間は我が家での魔術練習と朝晩のひと時に減ってしまいましたが、彼が頑張っているので私があまり寂しがってはいけませんね。一緒にいられる時間を大切にしたいと思います。



 キィはアル姉様に落とされた爆弾――アル姉様との試合――に向き合っています。個人的にするはずだった試合の話が大きくなってしまって戸惑っていたようですが、なにか吹っ切れたように自由時間に自主練習をしています。

 根を詰め過ぎないように声をかけたりしていますが、私が寝た後も何かしているようなので心配です。



~~~~~~



 今日は一日、お母様による淑女教育でした……。なぜ貴族というものは他家の家系図まで覚えねばならないのでしょう。関係性という意味で大切だと言う事は、理解します。……でも!せめてもっと分かりやすく書いて欲しいっ!同じ人物かと思ったら違うし、名前が途中で変わっているのに同じ人だったり。どうなってるのーと何度泣きそうになったか……。これでまだ国内だけと言われた時の絶望感は未だに忘れられません。イヤー。


 そんなわけで若干グッタリしつつ、最近の日課のニールのお出迎え。実はこれも淑女教育の一環だそうです。

 そろそろ帰宅すると言う連絡をもらったキィが私を呼びに来てくれて玄関ホールへ向かいます。

 この時もお勉強。キィのエスコートでの移動です。キィの所作はお母様が褒めるほど綺麗で、自分が失敗しないか手を乗せる時も歩く時もまだドキドキが止まりません。緊張のあまり階段で落ちそうになったことも数回。その度にキィには申し訳なくて…でもなぜかキィは嬉しそうなんですよねー。

 なんか悔しい……いつか完璧になって驚かせたいと思います!


 玄関ホールに着けばすでにお母様がいらっしゃるので急いで隣に立つと「75点ね」と評価が落ちてきました。あー昨日より低いです。最後に急いだのがきっとマイナスですね。


 玄関の開く音がしたので背筋を正して入って来るお父様とニールを待ちます。

「ただいま。ディー、ルゥ」

「ただいま戻りました。母様、姉様」

「お帰りなさいませ。あなた、ニルギリ」

「お帰りなさいませ、お父様、ニール」

 そして一礼。頭に本を乗せた結果は出たでしょうか。


 お父様とお母様が何か話しているようなので少し離れて姉弟で会話です。

「ただいま!姉様」 

 とニールが抱き付いてくるのでギュッと返すのが一緒の時間が少なくなった私達の約束。

「お帰りなさい、ニール。今日はどうでした?」

「今日はアル兄様に新しい魔術を……あ!」

 急に私から離れてパタパタとローブのポケットがある部分を叩いて何か探しているようです。

「どうしたの?ニール」

「えーと、ちょっと待ってね。確かここに……あった!」

 ニールが取りだしたのは薄ピンクの封筒?もしかして!

「ニール!誰から貰ったの?その子可愛い?」

「へ?姉様。これ、姉様のだよ?」

「え?私宛なの?てっきりニールがもらったラブレターかと思ったのに」

「姉様!僕、そんなのもらわないよ」

「そうなの?ニールは格好良いから貰っているとばかり」

「僕、格好良いの?姉様?」

「えぇ」

「そっか…。僕、姉様のために頑張るね」とはにかむニールにあれ?と思いつつ「がんばって」とエールを送り、渡された封筒の宛名をみます。流麗な文字で書かれるのはニールが言った通り「Dear Ruhuna」と私の名前。裏を返せば「From Earlgrey」の文字――アル姉様だ!

 読みたいけれど開けるためのナイフは今はありません。でも読みたい!とあわあわしていると「お嬢様」とキィの促す声。ハッと顔を上げれば微笑む両親とキョトンとした義弟……しかしお母様の目は笑っていません!

 引きつっている顔をお母様に向ければ「明日は手紙を頂いた時の作法と返信についてね」と。……うぅ、浮かれてごめんなさいー!



 和やかな家族だんらんの――私にとっては緊張感漂う――夕食が終わりニールと子供部屋へ移動して二人の時間。まぁ、キィもカイルベッタもセラもいるのですが。

 主に今日あった事とか取り留めのない話をしたり、本を一緒に読んだりとのんびりとするひと時です。


 今日はまずアル姉様から頂いた手紙を開封することに。キィに預かってもらっていたのでペーパーナイフと共に持ってきてもらい慎重にナイフを通します。…一度間違って手紙を半分に切ってしまったのでこれでもかと言うくらい確認してからナイフを滑らせます。よかった~、ちゃんと封筒のみ切れました!自画自賛でホクホクしながら手紙を開くと宛名と同じく流麗な文字が目に入ります。


 先日の『花祭り』の事やニールの頑張り――「ニール、アル姉様がニールのこと褒めてるわ」「アル様が!嬉しい!あ、そういえばこの前アル様とディン様が……」――などが書いてあり、最後に明後日空いていたら約束のお出かけをしないかとの質問が書いてありました。はて、特に予定はなかったと思いますがキィに聞いてみましょう。


「キィ、明後日は何か予定はありますか?」

「明後日ですか……特には。奥様との勉強のみです。如何しました?」

「アル姉様にお誘いを受けたのです」

 あのお礼の。と言うとキィは眉間に皺をよせ、「そうですか、奥様に確認して参ります」と私の返事を待たずに部屋を出て行ってしまいました。機嫌が悪くなったようですが…はて?

 ニールの方を向き、「どうしたのかしら?」と言えばニールはニコニコ、セラとカイルベッタは苦笑い。え?3人とも何か知っているの?


 どうぞ、とセラから差し出されたカモミールティを飲みながらニールとカイルベッタが会話をしているのをぼんやりと見ながら――「ねえカイル、明後日って……」「確か……大丈夫ですよ~」「じゃあ、よろしくね」「調整しときます」二人は楽しそう――先程のキィの態度を思い出します。

 キィの約束はアル姉様と試合なのですよね……しかも大きなスケールになってしまって。大変ですよね…私の事もしてくれてその上で今は自主練習も。

キィもお休みしたかったのかな。最近疲れが溜まっているようですし。


「……キィもアル姉様とお出かけしたかった「「それは絶対にナイです!!」」

 独り言を拾ったセラとカイルベッタの見事なハモリ。

「お嬢。それ、絶対にキームンに言わないでー!!」

 確実に凹みます!と力説するカイルベッタと、うんうんと頷くセラ。二人の迫力に思わず引きます。そこへニールの助け舟。

「姉様、どうしてそう思ったの?」

「色々あってキィも疲れていると思うし、息抜きが必要かなって」

 姉様は優しいねとニッコリ笑ったニールは暫し考えた後、何か思いついたらしく、はいっと手を上げて提案します。

「姉様は明後日お出かけでしょう?それならキームンにその間休んでもらうのはどう?」

 その手がありました!キィが帰って来たら相談しましょう。



「お嬢様、お待たせしました。奥様との調整は出来ました」

「ありがとう、キィ。それでその日、キィはお休みしてね」

 パキンと何かが割れたような音が聞こえたような気がします。

「……なぜですか?」

「アル姉様はお一人でも強い方ですし、私も自分の身くらいは守れるように特訓してますから」

 大丈夫ですと笑顔を作ってもキィは顔を顰めたまま。

「それだけの理由で?」

「キィは最近、全然休みをとっていません」

そう言えばキィは黙り込んで口を引き締め、私を射抜く様に見つめます。私も負けるものか!と見つめ返します。



「ねえ、キームン。話があるんだけど」

「……なんの話でしょう」

 いつまでも続きそうな状態に声をかけたニールでしたが、キィの視線は私から外れません。

「明後日」その一言でキィはピクッと反応すると私からニールへ、鋭さを保ったままの視線を動かします。

 一度目を閉じて、ふぅと息を吐いたキィは「わかりました」と告げてニールの方へ向かい、何か話し始めました。


 その様子に一抹の寂しさと、“休みを取る”という安堵とが複雑に絡まった気分になります。

 そろそろ就寝時間になるとの知らせで自室に移動しようとしますが、まだニールとキィは話が終わらないようです。先に寝ることを伝えて部屋をセラと共に出ます。

「おやすみなさい」と、挨拶の時にはいつもの笑顔だったので気付かなかったのですが、キィが“いつもと違っていた”と思ったのはベッドに入って目を閉じて眠りに落ちる瞬間。

 日課だったはずの〔瞳〕のための共鳴(シンクロ)をしていないことに気付いた時でした。あぁ。




――次の日の朝。


 昨日の事はなかったかのように“いつも通り”のキィ。これで良いはずなのに…もやもやする?


 朝食の前にお母様にお願いしてアル姉様への手紙の書き方を指南していただき、お父様とニールが出掛ける時に託して。午後にセイ様とディン様との魔術の練習は急遽中止で、入れ替えたお母様の授業を前倒し。

 夜、またニールが預かって来てくれたアル姉様の手紙を読んで――タイムスケジュールが書いてあるとは思いませんでした!――ニールたちと話をして。就寝の時間が迫ってきたのでニールと挨拶を交わして自室へ。



 今日はちゃんとキィと共鳴することができてホッとしました。


 珍しく共鳴が終わると〔瞳〕がちゃんと発動。久々にみる光景に見惚れます。色とりどりの粒子たちが舞っています。そして目の前には侍従服を着る月白(げっぱく)の髪に銀の瞳で微笑む本来の(・・・)キィ。キームン・エディアール。


 私の瞳が煌めいたのに気付き彼は笑みを一層深くします。

「相変わらず貴女の瞳は星のようですね」

「……言い方がちょっと気になるのですが?」

「間違えました。瞳ではなくルゥ様ですね」

「キィっ!」

「それで怒っているんですか?」とククッと笑う。そう言う意味じゃないのに!!もう知らないと横を向くけれど笑いが収まらないキィが気になって視線を戻します。

 視線が合うとキィは苦笑いを浮かべて「昨日は申し訳ありませんでした」と謝罪します。

「少し自分との折り合いが付かなくて、ルゥ様に八つ当たりしてしまいました」

「申し訳ありません」と目を伏せるキィに私はちょっと勢いを付けて――繋いだままの手を引っ張って――頭突きします!


ガンっ!


「ぃったー」

「っん~~~!」

 二人とも慌てて手を離して自身の額に手を当てます。

「キィの石頭―!」「えぇ、ちょっとルゥさま!?俺ですか!」「そうですー」「理不尽!」

 額に手を当てたまま言い合っていたので段々面白くなって最終的には笑っちゃいます。ふふ

 ひとしきり笑った後はお互いに謝って仲直り。喧嘩ではないけれど雰囲気的にそう言う感じだったので。

「私はキィに頼ってばっかりで…だからちょっと頑張りたかったのです」

「……そうですか。ルゥ様の気持ちを知ることが出来て良かったです」

「キィ……」

「でも、お傍にいさせてくださいね」

「もちろん!キィが嫌になるまでお願いします」

「はは、それは有りえないのでお覚悟を」

「……なにか怖いのですが?」

「ふふ、そろそろお時間ですね。明日は楽しんできてください」

「はい。キィもちゃんと休んでくださいね」

「えぇ、有効に使いますよ」


 キィと元に戻れたようで安心して眠れます。




――次の日。アル姉様とデート?の日です。


 本日の装いはドレスではなくチョコレートブラウンのエプロンドレス。シャツの部分が小花柄。三つ編み下髪に同じ生地のリボンで結んでいます。左手首には金と銀の組み合わさったチェーンに五色での石の花が付いたブレスレット。今朝の後にニールが“お守り”とくれたものです。翠・黄・蒼・紅・紫の五色の石が控え目にでもキラキラしているので、とても可愛いです♪


 玄関先でアル姉様を待っていると我が家の前に馬車が止まり、降りてくる人影が見えました。そちらへ向かうと女性用のフロックコート――あ!これは“乗馬服”に似てる!――を着た、まるで男装の麗人(・・・・・)のアル姉様。……ん?この表現はあってます?と疑問も残りますがとにかく格好良いアル姉様なのです!



「お待たせ、ルフナちゃん。奥様、お嬢様をお借りしますね」

「お願いするわ。ルゥちゃん、ちゃんとアールグレイのいう事を聞くのよ?」

「はい、お母様。アル姉様、今日はよろしくお願いします」

「お願いされますわ。それじゃあ行きましょう……あ、そうそう」

「なんでしょうか」

「今日の格好、とっても可愛いわよ。ブレスレットも素敵ね」

「ありがとうございます!これはニールがくれたのです。お守りだそうです」

「……お守りねぇ。うふふ、本当にステキね」

「はい!」

 装いやニールから貰ったブレスレットも褒めてもらえて嬉しいです♪



 アル姉様の馬車で目的のお店の近くまで行きます。窓から見える景色を楽しんでいるとアル姉様は「ふふっ」とか「あらら~」と笑っています。なにか面白いことでもあったのかと聞くと、どうやら何か報告のようなものを聞いているとのことです。「お仕事ですか?」と聞くと「半分仕事で半分趣味」との回答。休みの日は大体そうしているらしく、気にしないでほしいとお願いされました。


 目的の通りに着くと、アル姉様と手を繋いで寄り道しながら歩きます。

 小物屋さんで髪飾りやリボンを見たり、お菓子屋さんを覗いたり。植物園で色々な花を観て公園で早めのお昼を食べました。


 その時に不思議な出来事があったのです。

 公園でアル姉様を待っている時に道案内を頼まれてしまったのですが、アル姉様に一言残しておこうと手紙を書いている時に突風が吹いたと思ったら、そのお兄さんが消えて『道が分かった、ありがとう』という紙が落ちてきたのです!不思議な出来事を戻ってきたアル姉様に話したところ、なにかツボに入ってしまったらしく暫くの間、目に涙を浮かべながら笑っていました。どこが面白かったのか聞いても「色々とツッコミたいっ!」と教えてくれませんでした。むー


 それから、驚いたことにアル姉様が私を連れてきたいと言ったお店にセイ様とディン様、それにニールとキィが待っていたのです。アル姉様は一瞬驚いた様子でしたが、いつもの微笑みで「ミッションクリア~」と一言。

 全員が「「「「やっぱりかーーー!」」」」とハモってビックリです。いつの間にそんなに仲良くなったのですか!!


 最後はみんなでアル姉様オススメの焼き立てスフレを食べて帰りました。美味しかった~♪

 またアル姉様とはお出かけの約束をしましたが、今度はみんなで出かけることも約束しましたよ。


 楽しい一日でした。




読んでいただきありがとうございます!

次回はこの話の裏話的なものの予定。頑張る4人です。


お知らせ

活動報告にも書かせていただきましたが、ちょっと体調を崩しておりまして更新が不定期になるかもしれません。

時間の20時は変更しないと思います。

よろしくお願いします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ