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16 ―新しいかぞく― side Nilgiri

ニルギリ視点

side Nilgiri




――姉さまがみんなを守るのなら、ぼくが姉さまをまもるから。



  あの時 そう心に決めた 



    誓うよ あの小さな花の言葉と共に




  だからずっと一緒に傍にいてね、姉さま。





*********



 このアズハル()、ぼくの名前はニルギリ・メルローズに変わった。


 前の家名はテトレー。ぼくは伯爵子息だった。


 珍しく長雨が続いたこの年、ぼくの世界は一度色を失った。



 

――ぼくは風邪をこじらせて寝込んでいた。お父さまは騎士だからこの長雨で被害が遭った場所に行ったり忙しい。お母さまはお父さまの代わりに領地のみんなの為に忙しい。


 あまり会えなくて寂しいけれど、約束したから――――



『ニール、将来の夢ってあるのか?』

『お父さま、とうとつですね』

『おぉ!難しい言葉知ってるんだな!』

『お母さまとべんきょうしてます』

『そうなの、ニールったら凄いのよ!本も家の蔵書の半分くらい読んだかしら』

『すごいなニール、これは今度リシーのとこから借りるか』

『?』

『あぁ、父さんの友人だ』

 オレは親友って思ってるけど…ナイショなって照れているお父さまは珍しい。

『で、リシーの家の蔵書はこの国一番ってくらい多いんだよ』

『一度、見せて頂いたことありましね。本当にすごい量で吃驚したのを覚えてますわ』

『まあ、それは置いといて…夢の話なんだか、アイツが今度“特化級魔術師”っての発表するらしくてな』

『“特化級魔術師”それはどんなものなのですか?お父さま』

『……実はよく知らん』

『お父様?』

『……あなた』

『…いやー、難しくてさ。言いたいことはそれじゃなくて、宰相の息子の話』

『『??』』

『ディンブラ様とおっしゃるんだが、彼はその“特化級魔術師”を目指しているんだそうだ』

『さいしょうさまの息子なのにですか?』

『そう。自分で決めたそうだ。だからさ、ニール』

『はい』

『お前も好きな道を選べ。騎士じゃなくても良いんだ。魔術師でも医療魔術師でも』

『……お父さま、知ってたの?』

『当たり前だ。お前は優しいから言い出せなかったんだろ?』

 母さんも知ってるぞ?と笑うお父様に怒っていいのか喜んでいいのか分からなくなる。

『そうよ、ニール。誰が何と言おうと自分の道は自分で決めなさい。あなたは一人じゃないわ。いつでも私もお父様も見守っているんだから』

『お母さま…ぼく……』

『何も直ぐに決めなくていいのよ、ゆっくりとで良いの。ただ、私達が応援していることを覚えていて』

『そうそう!諦めなきゃ道はある!』

 母さんとの結婚も諦めなかったからな!というお父様に苦笑いしか返せなかったけど。


―――その約束は大事なものになった。


でもそれがお父さまとお母さまからの最後の贈り物だった。

 


――“テトレー伯爵夫妻が事故に巻き込まれて亡くなった”――


 ぼくにその知らせが来たのはお祖父さまの屋敷で拗らせていた風邪が治って両親を待っていた時だった。嘘だって言ってほしくて、何も知りたくなくて。ぼくはボクの世界に閉じこもった。



 ぼくが風邪をひいたから? 治ったから? 


   会いたいって思ったから?


 どうしてどうして 会えないの?


  おとうさま!  おかあさま! ぼくを

 

   ひとりにしないで!―――

   


  

 何もする気が起きなくて…食べ物の味もしなくて……


 ずっとベットの上でうずくまっていたから、どのくらい時間が経ったのかわからない。

 


 ある日、お祖父さまが一人の男性を連れてきた。お父さまの友人らしい。


 リシーハット・メルローズ侯爵……どこかで?


    わからない…


 彼は僕を養子にしたいらしい。


 かぞくはおとうさまとおかあさまだけなのに?

 

 なにもかんがえたくない……



 彼は痛ましげな表情でぼくをみて――お祖父さまと何かを話してぼくを毛布に包んだ。

 そこからはあまり記憶にない。たぶん寝ていたのかもしれない…ゆらゆらと揺れていた気がする。



――次に気がついたときは、どこかのソファーの上で。


 珊瑚色の髪とアザレアの瞳の優しそうな女性が――メルローズ侯爵夫人と紹介された――ぼくに暖かな光を注いでいた。

 不思議な感覚だったけど、でもそれだけで。光が止まったからソファーに膝を抱えて毛布に包まった。


 どうしたらいいのかも、どうしたいのかも分からないから。



 雨音だけが響く部屋にドアの開く音がして、あの男性が部屋に入ってきた。ぼくの前に立ったと思ったら“かぞく”を紹介された。


 女の子の声がした。


 ぼくに話しかけてくる。


 なんで?


 毛布の隙間からみたその子はさっきの女性と同じ珊瑚色の髪と不思議な紫苑色の瞳だった。


 

 その子は、ぼくと、なかよくしたいって? かぞく?


 どうして? ぼくは だめなのに ぼくがこわしちゃうのに!!



 ぼくの なかに はいってこないで!!


 

――そう思ったら身体の中から何かが溢れて来て――ぼくは沈んでいった―――



 暗くて寒くて――だれもいない――


  どこ? もう いやだ――


 どんどんと沈んでいく身体が急に止まり、暖かい何かに包まれたような気がした。



 でももうぼくは――



――ぼくのせいでおとうさまとおかあさまが――

 『――違うわ――』


――ひとりはいやだよ―――

 『――お前は一人じゃない――』


――おとうさま、おかあさま!おいていかないで―――

 『あの時の約束を忘れないで―――』



 この声は、おとうさま? おかあさま?



    ぼくを むかえにきて くれたの?




「ダメっ! ニルギリくん!!」

――……だれ?


「帰ってきて!行かないで!」

――どうしてぼくにそう言うの……?



――ぼく、は――― 『どうしたい?』



『あなたは好きなことができる。好きなことをしていいのよ、私達の――』


 かあ さ ま  なの?


 この暖かい手を離しちゃいけない気がした。




―――ゆらゆらとあったかくて ぽわぽわする――



 誰かに呼ばれたような気がして、目を覚まさなきゃって思って


 目を開けたら目の前にはあの不思議な瞳の女の子。前に見た絵本の妖精さんみたい。


 女の子がビックリして動こうとして…ぼくの手が引っ張られる? なんで? あれ?


 慌てて手を放すとあの子は 悲しそうな顔? わからない。


 ぼくは何をしてたの? さっきのは夢?


 あの子の かぞくが 話して そしたら お腹がなった


 ぜんぜん食べたくなんて なかったのに 


 あの子の笑顔と あの子がだした手を見たら 身体がかってに動いてた――



 

 なんでだろう? あの子といると だんだんと世界に色がついていく


 味がしなかったはずの ごはんに味がした。


 部屋の中に ヒカリがある



 不思議で見ていたら お花を見ようと言われた。


 あの子が好きな 花 ――お母さまも 花が好きだった――


 


 また手をつないで歩いてく 家の中なのに庭になっているところ


 きらきらが いっぱいある 「すごい…」と思わず言っていた。




 あの子がぼくに見せたいと言った花は 花壇にある花じゃなかった。


 紫の――あの子の瞳の色のような――小さな野に咲く 花だった

 

 あの子はこの花みたいに なりたいと言う。


 だれか助ける―――ボクハタスケタカッタ『  したい』


 あきらめないココロ――――アキラメタクナイ『  になりたい』


 なんであの子は ぼくを 守りたいの?  


 それに お父さまとお母さまの 言葉を知っているの?


 あれは 夢じゃなかったの? ホントウなの? 


 そうなんだ と思ったら ストンとココロに落ちてきた。


 お父さまとお母さまとした『約束』思い出したよ



  ―――覚えてる―――



 ぼくはお父さまのように『自分の道は自分で決め』たい。


 お母さま、ぼくは『一人じゃない』んだよね。

 

 『約束』まもるから『見守って』てね―――



 少し落ちついた気がしたら……あの子の名前 聞いていなかったことに 気が付いた。

  聞いたら教えてくれた―――ルフナちゃん


―――もっと 彼女のことが 知りたいと思った―――


 

 彼女は不思議。 くるくる表情が変わる。 楽しい。


 急にお菓子の話になるし。びっくり。


 手をつないでくれるの うれしい。



 

 ルフナちゃんのキッチンも 空気が きらきらしてる。


 ルフナちゃんのまわりは 楽しいと感じられる


 お菓子もきらきらしてて すごい


 一番キラキラしている お菓子を食べた


 やさしくて あったかくて おいしくて


―――お父さまとお母さまと 食べたいと 思った。



 そしたら もう会えないことが 悲しくて 哀しくて


 お父さまとお母さまに 見ていて欲しくて 


 一緒にいきたいけど きっとそれは 怒られちゃう


 お父さまみたいになりたい


 『約束』を守れる人になりたい


 だから今は泣いていいよね、お母さま―――


 泣いてたらルフナちゃんがぎゅってしてくれて


――そのまま寝ちゃったみたいで起きたら目の前に彼女がいてビックリした。


 またぎゅってされたら、また涙がでた。どうしよう。


 悲しいけど嬉しい気持ちもある。不思議。


~~~~~~


 夢の中で考えた。ぼくがどうしたいか。


 いっぱい考えた と思う。


 本当は お父さまとお母さまにこれでいいか 聞きたい。


 でもきっと正解は ないんだと思う。

 

 だから今は――ぼくがしたいこと。ぼくの道。


 ルフナちゃんといたい。彼女をまもれるようになりたい。 


 そのためにはきっと『この答』が良いと思う。


――かぞくになる。そう決めた。



~~~~~~

 

 

 ドキドキしながら 『ここにいたい』って言った。


 ぼくのもう一人の とおさまとかあさまは喜んでくれて


 改めて彼女の前に立ったら緊張した。


 名前の呼び方で「おねえちゃん」って言ったらすっごく嬉しそうで


 「ねえさま」って呼んだら特別に感じた。


 だからぼくも特別が欲しくて、お願いして、呼んでもらえて うれしくて


 また泣いちゃった。



 

*********



 ねえさま、姉さま。 


 今は ぼくは まだ弱いけど


 きっと 強くなって まもるよ


 だから 少しだけ 甘えていいかな?


 ぼくの だいすきな ねえさま―――




読んでくださってありがとうございます。


これで短編版の4人がやっと出揃いました。

さて、どうしよう?

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