15 ―新しい家族― (後編)
これまでで一番長め。
――――――
「あれ、サエちゃん。またこの花買って来たの?今日のは紫だね」
「イイでしょ~♪ 私の好きな花」
「ペチュニアだったけ?」
「そうだよー。色々あるんだよ?色もだけど種類も沢山!」
絞りとかあって揃え買いがあるのだ!と胸を張る『私』。
「そのうちペチュニア屋敷になっちゃうんじゃないの?」
「それでもイイもん!好きだし(この花言葉が)」
「じゃあ、今度送ろっか?」
「これは自分で買うのがイイの!私の(決して諦めないと言う)信念です!」
(絶対にあんたに取り戻させて見せる)
――――――
―――どうして貴女は……。
「……!」
「……ちゃん!」
「………さまっ!」
「…ん……あれ?」
「ルゥ!」「ルゥちゃん!」「お嬢様!」と口々に言うお父様とお母様とキィが心配そうに私を覗きこんいる――何か夢を見たような気もしますが――え~と………。あ!
「ニルギリくんは!? 大丈夫なんですか!?」
「ルゥちゃん、落ち着いて。ニルギリくんの命に別状はないわ、安心なさい」
慌てる私を抑え、笑顔で言うお母様。
「そうですか……良かったです」
「良かったですじゃない!無茶しやがって!」
「でもっ!」
「まったく、上手くいったから良かったものの…でも、ま。良くやった」
怒っているのか褒めているのか分かりませんけど…褒められているという事にしておきます。
「お父様…」
「ったく、誰に似たんだか」
「あら、私の心配がやっと理解しまして?」
「………。あーうー、すまん」
お父様とお母様のやり取りに思わずキィと苦笑い。お父様も無茶をしますものね~
「それでニルギリくんは?」
「そこ」
私を指さすお父様? はい?
「お父様、私、ニルギリくんではないですよ?」
「当たり前だ! 俺の指の先をよく見てみ?」
……お父様の指の先を追うと私の腿の上に布の塊?
もしかして?と見上げると頷くお父様とお母様とちょっと不機嫌なそうキィ?
「あの、これはどういう…?」
「ルゥはどこまで覚えてる?」
そのお父様の言葉に記憶をたどります。
キィと一緒に渦の中に飛び込んで、ニルギリくんに抱き付いて――声が聞こえて――渦がおさまって、ホッとしたら眠くなって……誰かが私の手を……。手?
視線を下に移すと――小さな手が私の手を掴んでる?
「…ニルギリくん?」
「……ん」
「ニルギリくん! 良かった~」
「…あれ?……ぼく…」
「目が覚めがみたいだな」
「あの…」
「ほらほら、ルゥちゃんもリシーも落ち着いて。驚いているわよ?」
私達に覗き込まれ目を白黒させるニルギリくん。確かに起きてすぐに囲まれたら混乱しちゃいますね。
ごめんね。と謝り少し距離を空けようと……手が握られたままなのでそんなには離れられない。
私の視線の先に気付いたニルギリくんはじっと自分の手で握っている事をみて慌てて離します。……そんなに急だとお姉さん、ちょっと傷つきますよ~
「あの、ぼくは…」
「疲れてたんだろう、急に寝たんだよ」
「そ、うなん、です、か?」
「そうよ、お腹すいたでしょう?」
「はい! 食べましょう!」
お父様は今のところ彼には言わないでおくみたいです。悩みそうになっているところへフォロー。さすがお母様! 私もお腹も空いてきましたし!
「でも…ぼく、(くぅ)…あ」
「ニルギリくんのお腹は食べたいって言ってるよ、私もお腹ペコペコ。一緒に行こう?」
「…あの……」
「ね?」
手を差しだしてみます。今度は手を取って欲しい―――じっと私の手を見ていたニルギリくんは暫し迷ったあと、おずおずと手を重ねてくれました。うれしいな。
みんなで一緒に食堂に移動し――キィは呼ばれてしまっていないのですが――仲良くお昼ご飯をいただきます。
サンドイッチとコトコトと煮込まれたスープに果物、ミルクたっぷりミルクティー。ニルギリくんにも食べやすそうなメニューが並んでいます。少しずつですが食べてくれているようで、向かい側に座るお母様と視線を合わせてホッとします。
お腹も満たされて満足です。ごちそうさま♪
昼食が片づけられると用事を終えたらしいキィと珍しくカイルベッタの姿が見えました。彼は主に護衛がお仕事だったはずです。もしかしてお父様はニルギリくんに付けるのかもしれません。年も12で近いほうですし。
ニルギリくんも少し食べられたおかげか会った時よりは顔色が良さそうに見えます。彼は部屋の中が気になったのかキョロキョロと見ています。可愛い~
お父様とキィ達が話いるのを横目で確認して、ふと窓の外を見ると雨が上がったようで雲の隙間から日が出始めてきています。私と同じくそれに気づいたお母様が提案します。
「ずっと家の中にいたらダメね。やっと晴れたから中庭にでも行ってみてはどう? 解放するわ」
「わぁ、素敵ねお母様! ニルギリくん、行ってみない?中庭にね、私の好きなお花があるの」
「…でも」
「いつもはね、お母様が閉じているのだけれど偶に開けてくださるの。そうすると風も入って気持ち良いの」
「…好きなの?」
「うん!だから見て欲しい」
どう?と聞くとちょっと悩んでから頷くニルギリくん。良かった。
「じゃあ、行こう!」と手を出すと握り返してくれる。その子供特有の暖かさにホッとします。
私達が入口に向かうと後ろからキィとカイルベッタが付いてきます。予想が当たったと笑いが零れるとニルギリくんに不思議そうな顔をされてしまいました。危ない人に思われたらどうしよう!?…慌ててにっこり微笑んで「行こう!」と促し、庭に向かいます。
中庭に着くと久々の晴れということもありますが、アズハル特有の爽やかな風が吹いて草木もキラキラしてるような気もします。
全属性を持っているからでしょうか、この『中庭』という空間に満ちているお父様の魔力を感じ取ったのか「すごい…」と言うニルギリくんの顔には喜色が浮かんでいます。お母様の提案は思った以上に良かったようです。
キィとカイルベッタに入口付近で待っていてもらうようにお願いをして、――キィは渋りましたが、何とか了承してもらい――ニルギリくんの手を引いて二人だけで中庭の右手側にある花壇の方……ではなく、左側のへ向かいます。
「お花、あっちじゃ、ないの?」
「私がニルギリくんに見せたいと思っているお花はこっちなの」
疑問符を浮かべるニルギリくんに微笑んで促します。
左側にある岩場の下の方にある、小さな紫の野草が群れになって咲いている場所が目的地。
緑の元気な葉の中から上に向かって咲いている、光の角度によっては紫苑色にも見える小さい花。
「これなの」と言う私にニルギリくんは「これ?」と不思議そうな顔で私と花を見比べています。その様子が微笑ましくて嬉しくなります。
「キランスミレって言うの。私はこんな花みたいな人になりたいの」
「お花に?」
すっかり混乱してしまっているニルギリくんに微笑んで続けます。
「この花はね、お薬にもなるのよ。咳を止めたり熱をさげたり」
「おくすり?」
「そう。誰かを助ける事ができる花」
「たすけ…る?」
「そんな人になりたいの。あとね、花言葉は『諦めない心』」
「あきらめ、ない?」
「うん。…ねぇニルギリくん」
「?」
急な話題変更にまたもや疑問符満載になっちゃったかな?
たぶんこれは私の自己満足。
でも、伝えておきたい想い――
「私ね、いつも守られてばっかりで。未熟だから今回何もできなくて。悔しくて。でもお菓子作ったらみんな喜んでくれて……自分にも出来ることあるかなって」
「な、にが…」
「何言ってるの?だよね……う~ん、上手く言えないんだけど私はニルギリくんの力になりたい。守りたいって思ったの。だから、私に怒っても良いよ?」
「なん、で?」
「『諦めたくない』から。君が居なくなるのは悲しい。せっかく出会えたんだもん。仲良くなりたい」
「だって、ぼくは…」
「それに…あの時聞こえたの。たぶん君のご両親の声」
「!!」
君にも聞こえたはずだよ?と問えば彼は呆然と立ち尽くしています。
そう、あの時の声は――
「『一人じゃない』、『あの時の約束を忘れないで』」
「…!? あれ、は。夢じゃ、ない? ぼくを?」
「私はどんな約束をしたかは知らない。でも、あの声には君に生きて何かをして欲しいと願っていたと思うよ」
「ぼくは…おとうさま……おかあさま」
「ごめんね。あの時のこと、『夢』にしちゃいけないと思ったから」
「……ううん、ありがと。夢じゃ、なかったの、うれしい」
泣きそうになりながらも少し笑顔の表情のニルギリくん。ご両親の愛情はもちろんですが、彼は幼くともココロが強い。きっと前を向ける。
「まもる……」
「え?」
「ううん、なんでもない」
「? そう?」
「うん。あの、なまえ…」
「私?」
こくんと肯くニルギリくん。そう言えば…会ったときにひと騒動ありましたね。
「ルフナ、だよ?」
「るふ、な?」
「うん、よろしくね」
「ルフナちゃん」
ぎこちなくではありますが、出会ったときには考えられないくらいの笑顔。
さっきの会話で何か彼の中に戻ったのかもしれません。
笑顔、増えてくれると良いな。あ、また話題変更しちゃいましょう!
「ね、お菓子好き?」
「え?…好き、だと思う」
「一緒に食べない?」
「…うん」
「じゃあ、行こう!」
「どこへ?」
「私のキッチン」
「キッチン?」
キッチンでお菓子を食べるって普通はないですよね。今日のニルギリくんの頭は疑問符でいっぱいになっちゃうかもしれませんね。
「行こう」と手を出せば、今度は迷うことなく手を握り返してくれました。その行動に思わず目の奥が熱くなりますが何でもない風を装って入口に戻ります。
キィとカイルベッタにキッチンへ行くことを告げると、もうすでに用意はしてあるそう。……できた侍従に頭が下がります。というか、私の行動ってお見通しなんですか!? キームンさん!!
キッチンに着いたニルギリくんは初めてこういう場所を見るのでしょう、入った瞬間からきょろきょろとお茶の準備ができても止まらず――流石に棚の下に潜ろうとした時は慌てて止めました――色々なところを見ていました。
「ニルギリくん、用意できたから食べよう?」
「…うん」
「食べ終わったらここの説明するから、ね?」
「はい。……わぁすごい!」
ここで毎回試食をしていたので、リニューアル時に小さなテーブルセットも追加されていたのです。心遣いに感謝でいっぱいです。
キィにお茶を入れてもらい――ニルギリくんにはミルクも入れて――小さなお茶会の始まりです。
どんなものが好きか分からなかったので、色々と用意してくれたみたいです。
クッキーにマドレーヌ、マカロンにカスタードパイ。ベリーのムースにフルーツロールケーキ、ショコラタルト。
テーブルの上に所狭しとのったお菓子にニルギリくんの瞳も心なしかキラキラしている気がします。
「好きなものを食べてね」
「うん!」
「選んでくれたら取ってもらうから、座ったまま大丈夫よ」
「えっと…どうしよう……あ!」
「見つかった?」
「うん、あのフルーツが入ったグルグルのが食べたい」
「ロールケーキね」
「はいは~い、お取りしまっす!」
「カイルベッタ!お前は……すみません、お嬢様」
「大丈夫よ、それに今はその方が緊張も解れるでしょう」
「さっすがお嬢♪」
「調子に乗るな!」
私達のやり取りにビックリしながらもちょっと笑ってくれました。良かった。
カイルベッタがロールケーキの他に「オレのオススメだよ~」とマカロンとパイも載せた皿にフォークを添えて、ニルギリくんの前に置きます。
おそるおそる一口食べてビックリしたようですが、そのまま食べ進めていきます。半分くらい食べ終わった辺りから様子が変です。段々と食べる速度が遅くなっていっていると思ったら、彼の目からは涙がぽろぽろと落ちています。
「ニルギリくん!どうしたの?嫌いなもの入ってたの?無理しないで」
慌てて椅子から降りて駆け寄ります。フォークを手から外そうとしますが、彼は涙をこぼしながらしゃくり上げながら、でもそのまま食べ続ける意思を示します。――なぜ?
「きらい、な、もの。ない。ちがうの。すっごく、おいしくて」
「…ニルギリくん……」
「とぉ、さまと、かぁ、さまと…」
「っ!」
「おい、しいね、って」
――いいたかった――言葉にならない声でそう言って彼は大きな声で泣き始めました。
私はただ彼を離さない様に―― 一人じゃないよ、傍にいるからという思いが届けばいいと彼が泣き疲
れて眠るまで―― ギュッと抱きしめている事しか出来ませんでした。
泣き疲れてしまったニルギリくんは私の服を握りこんだまま離さない状態で寝てしまい、どうにも動けないので、カイルベッタにお父様とお母様を呼びに行ってもらいます。
「キィ、私…」
「ルゥ様は出来ることをしたと私は思いますよ」
「でも!」
「決めるのは彼です」
「……そうですね、ありがとう。キィ」
「私は何も」
そうやって、私を甘やかす。でもそれが今は嬉しい。心の中でもう一度感謝を捧げ、眠るニルギリくんを見ます。 泣いて少し感情が戻ったようなニルギリの寝顔はあどけなく――こんな小さい身体に悲しみを詰め込んで――何か力になりたい、守りたいと改めて思います。
暫くしてお父様とお母様とカイルベッタがキッチンに入ってきてました。
「たくさん泣けたみたいね。…彼なら乗り越えていけるわ」
「そうだな、アイツの息子だ。強くなる。心も身体も」
愛おしそうにニルギリくんを見つめるお母様とお父様。誰が何と言おうと私達は家族になるんです!彼の悲しみは変わってあげることは出来ない、傍にいることしか出来ないかもしれないけれど…それでも――
彼に服をギュッと掴まれたままだったのでお父様に二人一緒にベットまで運んでもらいました。今日は特別にそのまま寝ます。服の皺は……セラ、ごめんなさい。
ベットに入っても私には直ぐには眠りは訪れず……隣を見るとニルギリくんの濃紺の髪は月の光で煌めき、瑠璃色の瞳を閉じて穏やかな顔で寝ています――夜空の星々の様な輝きがあの瞳に宿れば良いと祈りながら――そろそろと私も目を閉じます。
*********
「…、……、……ちゃん?」
「……」
まだ―ねむい――
「…ルフ、ナ、ちゃん?」
「んっ?…あ、にるぎりくん?」
いつもの声とは違う私を呼ぶ声が聞こえ、目を開ければ困った表情で私を見ているニルギリくん。ふふ可愛いなぁ~と寝起きのまだ働かない頭で思います。
寝転がったままだけど、とりあえず挨拶だけはしておきましょう。
「おはよう、ニルギリくん。よく眠れた?」
「えっ、えっと。寝た、と思います」
おは、よう、ございますと困ったような嬉しそうな顔。混乱してるかな?
「ニルギリくんはね、泣いて寝ちゃったの」
「る、るふ、るふな、ちゃん!?」
こうやって、とギュッと包み込むように抱きしめると慌てたような声。可愛いなぁ~もう♪思わずふふっと笑ってしまいます。
「あの時ね、私の服から手を離さなかったの。嬉しかったよ」
「うれし、かった?」
「うん。少しは仲良くなれたのかなって」
「あの…ぼく……」
「今は何も言わなくていいよ」
「うん……」
まだ泣きたいよね。泣き足りないよね。いっぱい泣いて、いっぱい寝て。それからいっぱい食べて。
そのまま私達はお昼までぐっすり。
身支度を調えて食堂に向かい、着いた途端にニルギリくんはお父様とお母様からのハグに目を白黒。慌ててキィと共に止めるとニルギリくんは私の後ろに避難。
私の後ろからそっと様子をうかがう様子に、またもお母様がこちらに来そうになったのを侍女長のベノアに怒られみんなで笑いました。
ニルギリくんもぎこちなくではありましたが、笑みを浮かべられたようで良かったです。
朝食兼昼食(私とニルギリくん)をいただいた後、お父様の部屋でこれからについてのお話になりました。
机を挟んで奥のソファーにはお父様とお母様。手前には私とニルギリくんが座ります。壁際には家令のアーマッド、侍女長のベノア、キィとカイルベッタ。
滅多に入ることがないお父様の私室に興味が出ますが、今日は我慢して両親の方を見ます。お父様とお母様がニルギリくんの方を見ているので私も彼の方を向くと彼は手をギュッと握って膝に置いたまま俯いてしまっていました。
確かにこれでは緊張してしまいます。私は彼の固く握った拳に手を置き、ビックリして私の方を見上げた彼に「大丈夫」と笑ってみます。
不安そうな顔で私を見る彼に小声で「お父様、実はピーマン苦手なのよ」というとビックリした顔でお父様を見ました。うふふ、作戦成功です。
急に自分の方を見たニルギリくnにお父様も驚いた顔をしましたが、私の方を一瞬見てからニルギリくんに笑顔を向けます。
お父様が声をかけようとした時――「…あの」ニルギリくんから声が。
「何だい、ニルギリ?」
「ぼく…ここにいたい」
「「「!!」」」
ニルギリくんの言葉に私達は声が出ません。
「直ぐに答えを出さなくても良いんだ、君のお祖父様も急いでいない」
「ちゃんと、考えました。お父さまとお母さまは、きっと、ぼくのこと、考えてくれるから」
「それは……」
「お父さまとお母さまの…こどもなのは、変わらないから。それでも、ぼくはここの家に、いたいです」
「ニルギリ…」
「ぼく、つよく、なりたい、です。今度は、まもれるように…だ、から」
「もういい!それ以上言うな!この瞬間からお前は俺の息子だ!」
「~~~!」
良かった。お母様ともらい泣きしつつ微笑みあって二人が落ち着くのを待ちます…が、なかなか離れません。そわそわと痺れを切らしたお母様が扇子を手に(!)お父様に話しかけます。
「リシー、そろそろニルギリを離してくださいな。私だって息子をギュってしたいわ」
「え~…!?は、はい」
お母様の手の中の扇子と見て慌てて飛び退くお父様に私とニルギリくんは目を合わせて苦笑い。そしてお母様はそっと彼を抱きしめます。
「貴方のお母様の代わりになろうとは思わないわ。だからもう一人の母としていさせてね」
「……はい。かあさま」
「そう、呼んでくれるのね……ありがとう、ニルギリ」
少しの間抱きしめ合ったあと、すっとお母様は離れてニルギリくんを私の前に促します。私の前に立った彼は、少し頬を朱くしたまま「よろしくお願いします」とお辞儀してくれました。可愛いですけど私にだけちょっと固い気が……なのでちょっと ジャスミン様やアル姉様のようにはうまく出来ませんがちょっとおどけて言ってみました。
「うん。よろしくね、ニルギリくん!改めましてルフナです。ルフナでもルゥでもお姉ちゃんでもイイよ?」
「るふなちゃん?るぅちゃん?おねえちゃん?」
「うん!なんでも」
でも、できたらお姉ちゃんって呼んで欲しいかも~ 憧れ!
「……ねえさま。」
「! そう呼んでくれるの?ニルギリくん! 嬉しいな~」
「ねえさま?」
「うん、なぁに? ニルギリくん?」
「ねえさまには…ニールって呼んでほしい。お父さまとお母さまが、呼んでくれていたみたいに」
「! いいの?」
「うん。ねえさまに呼んで欲しい」
「~~~! うん!呼ぶ!何度でも呼ぶよ! ニール!」
「ねぇ、さまー」
ニルギリに――ニールに抱き付いて二人してわんわん泣いてまた泣き疲れてそのまま寝てしまったようです。
次の日はやはり二人とも目が腫れて――お母様に今日は特別よと治してもらって――朝から笑って。
今日から我が家に大切な義弟が増えました。
読んでくださってありがとうございます。
つぎはニルギリ視点