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13 ―魔術修行とオネエサマ―

新キャラあり

 魔術修行が始まったアイティオ()が終わりウルジュワーン(精霊の休み月)も過ぎ、寒さ厳しいセルイ()も後半。これから段々アズハル()に向けて暖かくなります。


 あれから毎日の様に魔術修行をしています。お菓子作りはたまの息抜き程度になってしまいましたが、最近はあまり〔記憶〕が思い出されないので少しお休みでも良いのかもしれません。


 そうそう、セルイ()が始まったころから魔術修行にセイ様とディン様も加わることが多くなりました。不思議な事にセイ様とディン様とも魔力の質が合うことが分かったのです。しかも属性が強くなるこというオマケ付き。



 セイ様と〈共鳴(シンクロ)〉するとウィリ()が、ディン様とはルフス()でした。ディン様は元々の加護のこともあって、今ではエリュトロン()も使い始めたそうです。

 キィとの〈共鳴〉は基本全種が平均的に上がるのですが、少しニヴィ()が多くなるとお父様が言っていました。

 まだ全然解明できていないので、目下お父様が陛下の指示で研究中。えぇ、ある意味実験体です。



************




 今日もあの衣裳を着て練習です。

 一度ちょっと術を失敗して泥まみれにしてしまったので変更できると思ったのですが、衣裳部屋に10着ほど予備を見つけたときは一瞬違う世界に飛んだ気がしました。



 中庭でいつもの様にキィと練習です。お母様は新しい術を試したりするときはいらっしゃいますが、復習などの時はコントロールの上手なキィが居れば私たちだけでも許可がでました。

 


 今日は昨日失敗した術のおさらいから始めます。


 お父様の指示通りにキィと〈共鳴〉してからニヴィ()を使います。少しづつ出来る範囲も増えてきたので中級にチャレンジです!

 前回不安定になりかけたのでキィに手を繋いでもらってからイメージします――石を薄く鋭く葉っぱのように…それを嵐に乗るイメージを浮かべ――右手を前に出し目標を定めて、〔言葉〕に魔力を乗せて…



「〈石葉の嵐(ストム・エル・ニヴィ)〉!」



 イメージ通りに石の葉が目標の石柱の周りに出現し、切り刻むように当たっていくのですが………。



「…また失敗です」

「途中までは良いのですが…何かイメージが不足している感じですね」

 

 そうなのです。昨日も同じところで石柱に当たるは当たるのですが、石葉の方が負けてしまうのです。

 石柱の周りには無残な石葉の群れ………。


「う~ん、何が足りないのでしょうか…」

「ルゥは優しいから攻撃系は相性が悪いんじゃないかな?」

「そうそう!得意な方を伸ばせはイイって!」

 

 今日は聞こえないはずの声に驚き、入口の方へ顔を向けるとそこには中庭に入ってくるセイロン殿下とディンブラ様。


「セイ様!ディン様! 今日は来られる予定ではなかったですよね?」

「そうだったんだけど、急に休みになったから」

 あ、メルローズ団長には許可を取ってあるから大丈夫と微笑むセイ様。


 せっかく休みになったのに何故か我が家へ練習しにきたお二人。その為、お二人とも同じデザインの黒の練習服を着ています。キィの服よりもきっちりとした造りで、このまま式典に出られるような感じです。ディン様は前を開けてちょっと気崩しています。


「ルゥ!会いたかっ…痛ってー!なにすんだ!セイ!!」


 私達の方へ走り出そうとしたディン様が急に転びました。


「酷いなぁ、私は何もしてないよ」

「足元をデコボコにしただろ!」

「大丈夫ですか!?ディン様!」  


 私は慌ててディン様に駆けよろうとしますが、先程の失敗した術のせいでまさか地面がでこぼこ!?

 私のせいだった!と思った瞬間に私も波打った地面に足を取られて体が傾き――地面にぶつかる!とギュッと目を閉じ――「お嬢様!」――キィと手を繋いだままだったのでぶつかる前に抱き上げられました。

 ふわっと私に負担をかけないような動きにはいつも驚かされます。ふぅと一息ついてからキィを見上げます。


「キィ、ありがとう。ごめんなさい」

「お嬢様にお怪我がなくて良かった」

「ルゥ、大丈夫!?」

「ルゥ!」


 セイ様もディン様も私の方へ走って来てくれます。


「セイ様、ディン様、ごめんなさい」

「ルゥ? なんで君が謝るの?」

「そうだぞ、どうしたんだ?」

「私がさっき練習した時の影響で地面がでこぼこになってしまったのだと思います」

「……」

「……あ」

「ディン……」

「あ、いや…ごめん、セイ」

「私は別に気にしないけど、ね」

「あー…」


 「キィ」と彼の袖をくいくいと引っ張り、下に降ろしてもらいます。ディン様は私と違って転んでしまったので怪我をしているかもしれません!


「ディン様、お怪我はありませんか?」

「大丈夫だよ、ルゥ。ディンは丈夫なのが取り柄だから」

「そう、ってなんでセイが答える!?」

「だって平気でしょう?」

「いや、まぁ平気だけどさー」

「本当に痛いとこないですか?」

「ナイナイ! ダイジョブ!ダイジョブ!!」

 

 私がディン様を見上げるとディン様は赤くなって慌てます。やっぱりどこか痛めたんじゃ…


「ディン様、あの、やっぱりどこか…」

「ルゥ、本人が平気と言っているんだからそんなに気にしたらディンが困ってしまうよ?」


 私がディン様の方へ伸ばした手は何故かセイ様の手に握られ其方に向きを変えられます。

 でも、セイ様の言う通りかもしれません。あまり無理強いしてはご迷惑でしょう。


「あ…そうですね。ごめんなさい、ディン様。ご迷惑でしたね…」

「いやいやいや!? ほんと何で?セイ、ちょっと待て? いや、うん。ルゥは悪くないぞ!オレは平気だから心配はしなくて…イヤして欲しい?? あれ?分かんなくなってきたぞ???」


 混乱するディン様に私もどうして良いか分からず、キィを見上げて助けを求めます。


「ディンブラ様、落ち着いてください。念のため〈調査(エコー)〉させていただきます」

「え?あ、うん。でも、出来たらルゥに…」

「『私』がさせていただきます」

「…ハイ」

「キィ、お願いします」

「お任せ下さい、お嬢様」


 キィが〈調査〉を使い、ディン様に何事もないことが分かりホッとしました。セイ様もやはり気になっていたのか無事が分かって、はぁ。と安堵していました。


「特に問題はなさそうですね」

「まぁな、ちょっと転んだだけだし」

「良かったです~」

「これくらいで怪我してたら教官に怒られるよ」

「うっ、セイ!黙ってよろ!」

「こんな事言えなよ。酷いなぁ、ディン」

「信用ないなぁ」と苦笑いのセイ様に「前科があるんだよ!」と言いつつも笑ってるディン様。セイ様とディン様は従兄弟兼幼馴染。昔から仲が良いのは理解していますが、こういうやり取りは何か入っていけない雰囲気で私にそう言う人が居ないので羨ましいですね。

 表情に出てしまったようで少し心配顔のキィが私にそっと話しかけます。 いつもキィは私の変化にすぐに気づいてくれるので恥ずかしいやら嬉しいやら。


「お嬢様?」

「え?なんですかキィ?」

「寂しそうに見えましたが」

「ん~セイ様とディン様が仲良しさんで素敵だなぁと」

「そうですね、我々はお邪魔できませんから向こうへ参りましょうか?」


 私の左手を取り入口の方へと足を向けるキィ。その様子を見て慌てるセイ様とディン様?


「はい!?」

「チョット待て!キームン!!」

「なんでしょうか、ディンブラ様」

「なんでルゥを連れていく!?」

「御二方の邪魔はできませんから」

「イヤイヤイヤ? なんかオカシクないか!?」

「そうでしょうか」

「ソウデス!」


 あら、今度はキィとディン様が仲良しさんです。男の子同士ってすぐに仲良くなれて凄いです。と今度はセイ様に空いている右手を取られました。セイ様も私を気遣ってくれる奇特な方です。


「ルゥ、私の練習に付き合ってくれる?昨日受けた授業でちょっと疑問があって」

 手伝ってくれると嬉しいなと王妃様譲りの蕩けるような微笑みのセイ様。うにゃ~このセイ様の笑顔はキラキラしてて眩しくてクラクラします~ 


「は、はい。私でよければ喜んで」 

「ルゥじゃなきゃダメだよ」

「セイ様?」


 セイ様は私の手を取っている反対側の手を私の頬へ添え、顔が近づいて……誰かの手が私の目を覆います。これは――


「キィ?」

「ご無事ですか、お嬢様?」

「だー!セイ、何やってんだ!!」

「え?ルゥと話してただけだけど?」

「それ違う!絶対違う!!」

「そうかな?」

「抜け駆け禁止!!」


 ぬけがけ?あ!もしかして…


「ごめんなさい、ディン様も早く練習したいですよね!セイ様とどうぞ!」

「は?」

「えっ!」

「………ははっ」

「あれ?」


 キョトンとする3人。いち早くその状態から復活したキィはクスクスと笑い始めます。


「お嬢様、流石です。そうですね、お二人でどうぞ?」

「キィ、どういう意味です?」

「勘違いしないで。私はルゥと…」

「オレだって…」


「ここにいたのね、ガキども?」

「「!!!」」

「お嬢様!」


 ビクッとするセイ様とディン様。初めて聞く声が後ろからします。

 とりあえずキィを見ようと……すでにキィの腕の中でした。ピリピリした空気を感じ、いつもとは違う低い声のキィ。


「何者ですか?」

「怪しいものじゃないわよ。って言っても、今のあなたには通じないわよね~」

「当然です」


 どうしましょ?と顎に長い指を置き思案する美人なお姉さん。魔術師団の上級職のクロムグリーンのローブを着こなし、榛色の髪を邪魔にならないよう、でも優美に結い上げた碧緑の瞳の長身の女性。

 切れ長の目を面白いというように細め、「じゃあ、こうしましょう♪」と美人さんは空中に魔術紋を出現させて――〈通信接続(フルム・ヴィオン)〉と唱えると――魔術紋の中心にお父様が映りました!


「お父様!!」

『おや、ルゥ?何が……そこにいるのはアールグレイか』

「はぁ~い、団長。悪ガキちゃん達見つけました~♪」

『やっぱりウチか…。セイロン殿下、ディンブラ様。残念ですが、この提出書類は無効です』

「え?」

「なんで!」

『日付が間違っています。明日です』

「ディン…」

「あーすまん」

「と、言うわけで……強制送還です♪」

「「………」」


 あ、セイ様とディン様が固まっちゃった。大丈夫でしょうか……。


『キームン、アールグレイは俺の部下だ。警戒はこれ以上不要だ』

「……承知しました」

「へぇ~貴方がキームン・エディアールねぇ」

「……なんでしょうか?」

「結構、イイ男になりそうね」

「!!」


 わっ!キィが固まった! そんなにギュってしなくても~


「キィ、キィ!ちょっと苦しいかも」

「あ、すみません!」


 慌てて手を緩め、私を降ろすキィ。こんなに動揺するキィは珍しいです。


「で、貴女がルフナちゃんね。団長に聞いていたけど……可愛い~」

「ふきゅ!」


 抱き付かれた!! 美人さん結構力強いです~


「お嬢様!」

「ルゥ!」

「ルゥを離せこの変態!」

『あーそろそろ切れるから、ちゃんと連れ帰ってな』

「……変態?ですって?」

「男なのに女の格好するのはそうだろ!」

『聞いてる?……あ、きれ…』

「別に着ちゃいけない規則はないけど?」

「規則とかの問題じゃない!!」

「だって楽しいんだもの」

「結局それかーーー!」


「セイロン殿下、あのお二人は随分と仲が宜しいようですが…」

「あ、ああ。ディンとアールグレイは従兄弟なんだ」

 ジャスミン様の甥で……と遠い目のセイ様。微妙に納得しているキィ。そうですよねー


「ね、ルフナちゃん。男性の服着てみたくない?」


 あれ? 急に矛先が私に?でも、考えてみると……。おぉ!


「そうですね……楽しそうです♪」

「そうよね~。ほら、どうするのディンブラ? ルフナちゃんが男性服着たら変態?」

「なんでそうなる!?」

「ダメですか…」

「いや、そうじゃなくて! うん、ルゥは似合うと思うぞ!」

「そうですか!? 嬉しいです~」

「ほら」

「……理不尽だ………」


 疲れ切っているディン様。大丈夫でしょうか?………ん?


「アールグレイ様は男の方なのですか?」

「そうよ、おかしい?」

「いえ、とっても美人さんで素敵です!」

「あら嬉しい。…団長に似てるわね」

「そうですか?お母様に似ていると言われますが」

「姿じゃなくて、受け入れるって考え方がね」

「えへへ、嬉しいです~」

「うふふ、ルフナちゃんとはお友達になれそうね」

「お友達ですか!すっごく嬉しいです!」

「私もよ。じゃあ改めまして。アールグレイ・ディルマと申します」

 アールでもグレイでもアルお姉様でも良くってよ。とほほほと笑うアールグレイ様。


「私はルフナ・メルローズです。以後お見知りおき下さい。アル姉様でも良いですか?」

「うふふ、ありがとうルフナちゃん♪」



 新しくアル姉様がお友達になりました! 嬉しいです♪


 この後、固まったままのセイ様とディン様はアル姉様に連れられて帰って行きました。あ、お菓子渡しそびれました…。


 次の日、ちゃんと申請をとったセイ様とディン様。それからアル姉様が偶にですが講師として教えて頂けることになりました!

 私はとても嬉しいのですが、セイ様とディン様とキィはちょっと元気ないです。なんででしょう?



読んでくださってありがとうございます!


次回はやっと4人の最後の一人予定。

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