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09 ―お茶会のお誘い―


 ディン様とお友達になってから一か月。何回かジャスミン様にお願いされてお菓子を持ってスタッセン公爵家へお邪魔しました。

 (ララン)なのでゼリーやムースを良く作ってお届けしていましたが、その中でもジャスミン様はリモンを使ったお菓子が好きだそうで「これを使ってね」と送って頂いたときは裏口に10箱も積み上げられていて料理長以下料理人全員と固まったのはいい思い出です。

 5キロ×10箱…ジャスミン様。やりすぎではないのでしょうか?公爵家の普通にビックリです。

 

 一週間かけてピールにマーマレード、リモンカード、リキュールで漬けたりコンポートも作ったり。香りだけは爽やかでしたが白かった調理服がピンクになった光景は一生の思い出だと思います。

 さすがのキィも当分遠慮したいとのこと。


 ディン様とはあまりお会いできないのですが、良くお手紙交換をします。私が2、3枚しか書けなくてもディン様は毎回5枚以上書いてくれます。なのでどんなことをしているのかは分かりました。最近は勉強も楽しくなってきたそうで、毎日剣術と魔術と共に励んでいるそう。


 あ、先日いつでも食べられるようにと送ったリモンクッキーもリモンカスタード入りのスフレサンドも気に入ってくださったそうです!また新作と共にお送りしなければ!


 今の夢は先日発表された『特化級魔術師』になることだそうです。スゴイです!



 私はと言うとまだ魔術の特訓はさせてもらえません。お父様が魔力判定の結果、もう少し私が安定してからという判断をしたのです。残念。

 でも、キィとの『真実の瞳』のコントロールの練習はしています。でもなかなか安定しなくて……でも、頑張ります!



 

 今日もキィとセラと一緒にお菓子の試作です。二人ともどんどんお菓子作りの技術が上昇して料理長さん曰く、いつでもデザート係りに来ても大丈夫とのこと。私も早くそうなりたいです!


 今日のお菓子はリモンとショコラの2層のムース。

 今朝見た〔記憶〕の夢からです。今回の夢はいつもより幼い感じの〔サエちゃん〕が出てきました。同じような紺色の服を着て一人用の机がたくさん並んでいる場所で話をしていました。



―――――


「ねぇ、今度作ってほしいお菓子があるんだけど」

 カバンの中をがさごそと探しながらサエちゃんが私に聞く。

「サエちゃんがそういう事、言うの珍しいね」

「たまにはね~そういう気分もあるのよ。ダメ?」

「ううん、良いよ。それでどんなの?」

「この本のコレ」

 あ、あった。これこれとページをめくり目当てのものを指さしながら言う。それを見て『私』は答える。

「ん?なになに……『恋ショコラのムース』?作り方とか載ってないけど」

「うん、ないよ。想像で作って欲しいの。」

「サエちゃん。それは…」

 ツキンと何故か『私』の頭が痛む。

「複雑に考えないの。ほら、良く言うでしょ?初恋はレモンの味って」

 にや~とまるで童話の中の猫のような笑顔のサエちゃん。

「いや、どうなのそれ」

「イイじゃん。作れそう?」

「う~ん、サエちゃんのいう『恋』は考えない。でなら」

「そこ重要なんですが!?」

「う~ん」

「…まだダメ?」

「ダメというか、分かんない」

「そっか、じゃ気長に待つわ」

「ありがと」


―――――



 そういう会話。

 意味は分かりませんが、レモンというものとリモンは似ているみたい。作り方も浮かんできます。ただ一緒にあの夢で感じた切ないような痛みと共に。

 

 今はもう痛みはありませんが、不思議な体験でした。




「お嬢様、これはどう…。いかがされました?」

「あ、ごめんなさい。なんですか?」


 思い出してちょっとボーっとしてしまっていたようで、キィが心配顔で覗き込んできました。いけない


いけない、今はお菓子作りに集中しなければ!


「ちょっと大きさを考えていました」

「そうですか?」

「はい!」


 えへへ~と笑えば、ちょっと訝しげな顔をしましたが直ぐにいつものキィに戻ってくれました。

 最近、キィはちょっと心配性。キィにそんな表情はして欲しくないので頑張らないと!



「ちょっと小さめに作っても良いかなと思いまして」

「確かに少々小さめの方が、味に飽きが来なくて良いのかもしれません」


 さすがお嬢様ですね。と言われましたが、嬉しい反面ちょっと複雑です。だってこの知識は〔前の私〕さんのもので()のじゃないのですから……。

 でも、美味しいものは幸せにしてくれるものなので、心の中で感謝の気持ちを込めて作ります。

 

 

 リモンとショコラの2層のムースは二口サイズになりました。

 アーモンドパウダーを使ったジョコンド生地にミントを香りを付けたシロップをたっぷり浸み込ませたものが一番下。その上にちょっと刻んだリモンのシロップ煮。ビターなチョコムースを型の半分まで。次は今度は香り付けをしていないシロップを打ったジョコンド生地、そして一番上の層はリモンの果汁と皮をすりおろしたものを入れたほんのりピンクなムース。よ~く冷やして二口サイズに切ったら、最後に上にミントとドライリモンの皮を薄く切ったものを飾って出来上がり。


 端っこをキィとセラと料理長さんといつの間にかお皿を持って待っていたエネと試食です。


 う~ん、良い感じではないでしょうか?リモンの爽やかさとちょっとビターなショコラの組み合わせ。

 ちょっと濃厚かもと思いましたが、一番下のミントの香りがほんのりと涼しくしてくれます。

 皆にも聞いてみましょう!


「どうでしょうか?」

「そうですね。少し濃厚な気もしますが、後味が爽やかでこの季節でも食べやすいと思います。」

 キィとは結構味覚が似ているので、感想が近いですが好印象の様で嬉しいです♪


「私も以前頂いたムースよりこちらの方が好きです。ミントと合うのには驚きました」

 セラも最近は色々な意見を言ってくれるので助かっています。


「お嬢様、流石でございます。またこちらの方でも色々と試す幅が見つかりました」

 料理長さんの美味しいご飯がさらに美味しくなるためでしたら、協力は惜しみません!


「お嬢さま~美味しいです~~~。もう一つ食べて良いですか?」

 エネは……相変わらずです。


「本当に、美味しいわ。これ明日持っていけるかしら?」

 お母様にそう言っていただけて………。ん?


「お母さま!? 何時いらっしゃたんですか?」

「今ですよ。ルゥちゃんに用があって来たら、美味しそうなものを頂いているから一緒に食べちゃいました」

「そ、それでお母さまは私に何の御用が…?」

「急になのだけれど。明日、王妃様にお茶会にルゥちゃんと共にお呼ばれしてるの」

「お茶会ですか…え?王妃様!?明日?」

「そうなの、珍しく急なのよね~。でも、ジャスミン姉様もご一緒なのよ」

 だからお菓子持っていきたいの~と頬を染めてい言うお母様。えぇ、とても可愛らしくて素敵なのですが、有無を言わせない笑顔です。はい、頑張ります!でもまず相談です。


「キィ、どの位のもの作れるかしら?」

「そうですね…。奥様、明日のお時間と人数はいかがでしょう」

「時間は午後の2時から。お昼過ぎにリシーが迎えに来るわ。人数は6人。増えても9人だと思うわ」

「かしこまりました。菓子の手配はメルローズ侯爵家のみででしょうか」

「そう…と言うかジャスミン姉様が王妃様にそう言っちゃって」

 ……ジャスミンさまー。

「そうなると…今からの作業も含めて量を抑えれば、焼き菓子5種類、生菓子が2、もしくは3種類ですね」

「そのくらいあれば十分よ」

「かしこまりました。では、お嬢様。午後の予定は後日に変更いたします」

「はい、では内容を詰めて作り始めましょう!キィ、セラ、料理長。お手伝いお願いします」

「よろしくね、ルゥちゃん。みんなも」

「「「かしこまりました」」」

「エネは向こうへ行きましょうね~」「そんな~奥様~~~」

 ……ありがとうございます、お母様。

 さあ、作りますよ~




―――そして次の日。王妃様主催のお茶会へ


 本日の装いはセラが選んだ、薄いライラック色の生地が重なってふんわりしたスカートのドレス。所々に白いリボンがアクセント。髪はキィがいつもの手際でお菓子の配膳に邪魔にならないようにな髪形に白い花の飾りとリボンでまとめでくれました。

 

 お母様は私より濃いライラック色のすらっとしたシルエットのドレスです。色がお揃いで嬉しい~



 今日もキィはお留守番。王妃様の個人的な小さいものなので人数も少なくとのことらしいです。

 一緒に行けないことに不機嫌なキィでしたが、迎えに来たお父様と何かお話した後は普通に戻ってました。

 


 何はともあれ、行ってきます!



~~~~~~

 


 お父様の転移で魔術院の館に飛んでから王宮に向かいます。直接飛ぶのは色々と問題があるのでダメなんだそうです。

 お茶会をする王妃様の庭園に向かう途中にお父様に先程の気になったことを聞いてみました。


「お父様、さっきキィとどんなお話したのですか?」

「ん? ああ、今日はディンブラくんは来れないんだって」

「あらあら、ジャスミン姉様のお話では楽しみにしていたみたいですが」

「あ~、なんか昨日の剣術の授業で無茶したらしいんだわ」


 無茶なこと→怪我→入院!? あわわ、もしかして、大変なことが!?

 私が慌ててお父様に聞くと苦笑いを返してくれました。


「ディン様お怪我ですか!?」

「怪我はしてないよ、それは大丈夫。ただ…」

「ただ?」

「疲労困憊全身筋肉痛」


 思わず動きが止まるお母様と私。

 ………ディン様。いったい何があったのですかー


「まあ、実は魔術ですぐに治るんだけど、こういう時にこれからの事を考えて放置。すぐ治るって分かると無茶をやらかすのが多いんだ。特に若いと尚更。それに」

「私たち回復できる術者への負担軽減ですわね」

「ご名答!ディー達にはあまり表立って欲しくないからね」

「ふふ、ありがとう。リシー」

「いえいえ、奥さん」


 お父様、お母様。ラブラブなのは娘として嬉しいです。 ただ、ここは王宮の通路で皆さん見てまけど!!

 ちょっと居たたまれないので慌てて両親の服を引っ張ります。

 

「お父様!お母様!早く!」

「あらあら、そんなに楽しみなの?」

「ルゥ、急ぐと転ぶぞ」


 違います!恥ずかしいんですー







あれ、王子様まで行けなかった…すみません

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