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どうやら、異世界人というのは、黒目黒髪のへもくちゃぴーのデブが選ばれやすいようです。百年ぶりに選ばれしデブスのこのわたし。ほほほほ、嬉しくて涙がでるね…。にしても、わたしが見ている夢はずいぶんと長いなあ、いつもこんな長い夢を見るかしら、と黒いもやもやを振り払ってランさんの説明を聞く。
この世界にやってきた異世界人は、純度がとても高く、殆ど混じり気の少ない魔力を大量に保有しつつ、平然と暮らすことができる存在。人が耐えうることができる濃度を遥かに超えており、自然界で蓄積された魔結晶の魔力と並べるくらい、異世界人の魔力が込められた魔石は価値が高いと言われているみたい。そこでそんな珍獣扱いの異世界人を使って、過去に、金儲けだけでなく、戦争にも発展しそうになったことがあるみたい。
そんなことがあったから、各国では、やってきた異世界人を保護するとともに、自由権を与える共通ルールを作ったんだって。だから、わたしは保護してもらえて、望めば違う国に行くこともできるし、餓えることなく暮らすことができるんだって。でも、わたしの生活費は国税からでるってことを考えてしまうと、セレブニート生活を送るなんて怖くてできない…いや、でもこれはわたしの夢だし、現実を見たらダメだ。
とまあ、保護した国になんもメリットないじゃん、て思うけれど、そこは、よければ魔石に魔力とかこめてみませんか~?的なお誘いして、その魔石をちょこっと分けてもらうってことはしてるみたい。でも無理矢理に魔石製造機にはしないって取り決めがあるんだって。みんなそんなの守るのかしら…。
「異世界人を縛り付け、強制的に魔石を生み出せた国は、全て、例外なく、滅びております。そして、国であった所に残ったのは、悲劇に見舞われてしまった異世界人、唯一人のみ」
こわっ
もうそれホラーだよ。
その恐怖によって、異世界人はちゃんと保護されるっていう認識ができたみたいで、こうしてわたしも保護されている。こんな設定まで考えていて、こんなにファンタジーすきだったのかと感心してしまった。
「ですから、マイコ様は、行動や意思などに制限されることなく、過ごすことが許されているのです」
にこ、と金色と黒が混じった瞳を細めて、柔らかく微笑むランさんに思わず、どこまでお触りオッケーですか…と聞きそうになったのは、置いておいて。随分と優遇されている立場にあの元凶ともいえる、葉書の言葉を頭に浮かべる。
< 地球を捨てて、異世界に引っ越しませんか。
そうすれば、あなたの夢が叶うでしょう。 >
わたしの夢。
つまり、そういうこと?
デブスの処女がちやほやされて、働かなくてもよい生活。
これがわたしが望んだ夢の世界。
(いや、夢だったら最高でしょ)
夢は、夢である時が一番幸せだということ。
そのことを、この後にとても痛感することなど露知らず、わたしは、ランさんのゆったりとした清楚な白服の中身を想像していた。
(褐色の肌の人の乳首って何色してるんだろう)